憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

 寄り道もせず、ながらスマホもせず、俺の体は一人で帰る。
 物凄く辺鄙なわけではないけど物凄く都会ってわけでもない通学路は、静かになる場所もある。
 ――いたいよぅ
 ――こわいよぅ
 ――いやだよぅ
 ここ一週間、厳密に言えば中の人が俺に入ってから、一人で静かになると子供の声が聞こえる。
 痛い、怖い、嫌だ。
 その3つを繰り返して泣いている声。
 俺にはどこから聞こえてくるのかはわからない。中の人は分かっているのか、時折少しだけ目線を下にして立ち止まる。そしてその場所を避けて歩き出す。場所は一定じゃないし、歩いても、家の中にいても、声は聞こえてくる。
 ――いたい、いたい、いたい……
 俺の部屋で断続的にその声がする中、俺の体は声を出した。
「冬角燈李、生きているなら返事をしてくれ」
 これも一週間のお馴染みだ。
 独り言で自分に語り掛けても怪しく思われない状況、つまり自室に一人になると中の人は俺に呼びかける。
 ――いたいよ
 ――いやだよ
「冬角燈李」
 そっちの子供の声は気にならないのか?
「聞こえているなら応じてくれ」
 俺の体はノートに『見えているなら反応しろ』と書く。これもいつものこと。
「君は僕をこの体に閉じ込めているのか? それとも僕が取り憑いて君は死んでしまったのか? 生きているなら、意識があるなら、体を取り返そうとしたらどうなんだ」
 語気が強くなっていく。
「生きているなら、返事をしてくれ」
 お前のほうが頭もいいし、人を助けられるのに?
 俺は自動操縦でラクだし、体を取り返す熱意みたいなのはないんだよなぁ。
 俺の体は溜息をつき、スケジュール帳を開く。律儀に予定を遂行してくれている。予定を遂行すれば俺の意識が目覚めると思っているのかもしれない。生憎と俺は意識も失っていなければ、死んでもいない。
 今日の予定は……夜中に学校の踊り場の鏡を見に行く。スケジュールにも書いてある。