憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

「プール、美術室、図書室、家庭科準備室……ですか」
 勉強の休憩中、俺のスケジュール帳を開きながら七不思議巡りの行き先について話した。
 テーブルの上には大きなジュースのボトルと、それを注いだグラスが二つ。
 中の人と子供の気配もあるからもう二つ置きたいけど流石に航琉くんも変に思うだろうし、あっても中の人も子供も飲まないから、寂しいような気もするけど仕方ない。前にお供え物みたいに食べ物をあげようとしたら、中の人から〈不要だ〉と言われてしまった。
「他にも色々噂はあるんだけど、今のところはこの六つが有力かな。知ってる人も多いし、その場所で具合が悪くなったって話も聞く。ベタだよな」
「ベタ?」
「よくある話ってやつ。オバケがいると呪いで体調を崩す、とかそういうやつじゃない?」
「なるほど……この六つはそれぞれどういった不思議があるんでしょう?」
 俺は各場所の七不思議の話を聞かせた。プールが閉鎖されている時期に泳いでいる幽霊がいる、美術室の石膏像の目が動く、図書室に子供の霊が出る、家庭科準備室にある手縫いの人形が動く……。
 航琉くんはいくつか疑問が湧いたらしく、首をかしげていた。
「図書室にどうして子供の霊が?」
「さぁ……? 噂によると、絵本を読んでたり、気に入ったものは職員室にまで行ってコピーを取ったりしてる、らしい……ちょっと尾鰭つきすぎな話だ」
「あ、でも最近廊下や職員室で具合が悪くなった人がいるとも聞きます」
「まじ? 行動範囲広い幽霊だなぁ……」
「コピー……」
 航琉くんは俺のことを見つめている。そろそろ慣れて、航琉くんは俺を見つめる生態の、そういう生き物だと思うようになった。でも今回は長いな。何か言いたげってわけでもないし、見ながら考え事してその考えに思考が持っていかれている感じだ。
「コピーがどうかした?」
「いえ、燈李さんが増殖して、沢山居たらと想像しました」
「だいぶそれは……うーん……」
 この前もそんなこと言ってたっけ。航琉くんはその想像に嬉しそうな顔をしてるけど、俺としては俺が沢山居るのは勘弁願いたい。
「美術室の石膏像の目が動くというのは……?」
「目、ないよな。真っ白で。黒目の視線が動くんじゃなくて、まばたきするとかなのかな」
 今度は俺が航琉くんを見つめた。
「まぁ……航琉くんも石膏像みたいなもんだし……?」
 石膏像にまばたきされたくらいじゃ、もうそんなに驚かないかも……。
「何を言ってるんですか?」
 心の底から疑問だという顔をされてしまった。
「戸籍も血も涙も遺伝子もありますし、肌荒れもあります。変な人だと言われることは、時々ありますが僕は人間の範疇です」
「え、肌荒れ? どこ?」
「ここです」
 ほんとだ。人間なんだなぁ……。なんか、頬もちょっと赤い?
 航琉くんの肌を見るために顔を近付けていたら丁度気を利かせた光莉がおやつを運んできてくれていて、再び「ぎゃーーー」と言わせてしまった。
 香水のこともだけど、後から気付く。その場では俺も航琉くんも「?」だが、それなりな恋愛ムードに展開する流れにも見られることをした、らしい。
 そういや香水はあの翌日分けたものを貰ったのだが、良い香りではあるものの俺がつけるとなんか違う感じだった。付け方も教わったけど、航琉くんがつけてるほうが良い香りがする気がする。体温とか体質でも香りは変わるらしい。残念だけど俺がつけるのはよしとこうと思いつけなくなったら、航琉くんには物凄く残念そうにされた。理由を説明すると嬉しいんだか残念なんだか複雑な顔をしていた。