憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

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 祝日が訪れた。
 デートである。
 冗談でしか使ったことのない単語だ。『母親とデート(買い物の荷物持ち)』とか『友達とデート(二人で遊ぶ)』とか。それらと今日のこれのどこが違うんだ? と思い、『デートとは』でインターネット検索をする始末。
 ふむ。なるほど。
 ソワソワしてきた。
 デートである。
 ヤミポンに何度も声を掛けたが返事はなく、また令和のファッションとあの口調をやる気にはなれず、これ以上騙すのはいたたまれないのと流石に長時間の演技は無理なのもあり、平成ファッションの俺で挑んでいる。
 ヤミポンからの応答はない。
 子供の霊の声は時折微かに聞こえた。啜り泣くような声と、何かに怯えて息を飲むような音。それらは音とも気のせいともつかないような、空耳かもしれないくらいのものだった。
 そこからは、静かになる。近くに居るのだとは思う。でも隠れてしまったのか、元々霊感のない俺は音がしなければ存在を感じられなかった。
「こんにちは」
 待ち合わせ時間5分前、少し緊張した面持ちで航琉くんが現れた。
 私服、カジュアルだ……!
 普段は制服をきちんと着ているから真面目で大人びて見えていたけど、そういやこの前まで中学生だったんだよな……。
 なんだか、航琉くんを見ると安心する。
 デカいし、存在感がある。消えたりしなさそうだ。俺が嫌がることはしない。前にそう誓うと言ってから、それを守ってくれている。
 消えないでほしい。
 そう伝えたら、航琉くんは辛いだろうか。
「ええと、やっぱり、ヘンでしょうか……雑誌を読んで参考にしたのですが……」
「え! いやいや、そんなことない! むしろメッチャいい!」
 うっかりまじまじと見つめてしまった。結構好みのファッションだ。かたや俺は、いつもと同じ雰囲気の平成チャラ男スタイル。俺自身はチャラくはない。平成チャラ男という概念のコスプレみたいなものだ。
「あんまり謝られても嫌かもしんないんだけど、やっぱり謝っておく。ごめんな。俺が来ちゃって」
「え? あぁ、いえ、貴方と会えるのが、嬉しいです」
 航琉くんは一瞬意図がつかめないといった顔をしたが、すぐに俺の言葉の意味……二重人格の令和ファッションのほうじゃなくて平成の俺が来たことについての謝罪……を理解したようだ。"貴方"で人格を一括りにされたような、それは考えすぎかもしれないような。
「あちらの方に劇場があって、ヒーローショーをやるそうです。午後の公演のチケットを取りました」
「おお……? ありがとう」
 現行ヒーローについて詳しくはないけど、せっかく取ってくれてるなら見ないとな。
「今日は、楽しみましょう」
 航琉くんはなかなか見慣れない表情をした。白い歯を見せた王子様スマイル……とでも言えば良いんだろうか。なんか、らしくないな? もしかして……
「もしかして、練習した? その顔」
「う」
 航琉くんがダメージを受けたかのように身動きを止めた。俯いて前髪の隙間からこちらを見て、
「バレましたか……?」
 と、残念そうにしている。
「ぷっ……あははははっ!」
「……ムゥ」
 思わず吹き出して笑うと、航琉くんは拗ねたみたいな声を出して頬を膨らませた。
 本当に、色々な顔を見せてくれるようになった。航琉くんのクラスの子達も彼の色々な顔を見ているのだろうか。
 ……俺だけに見せてくれたらいいのに。なんて、思ってはいけないんだ。一番、駄目なことだ。