〈距離を取ったほうが良いと思う〉
帰宅後の自室にて、ヤミポンが唐突に言い出した。子供の霊はやっと眠ったところのようだった。
「距離? 何との?」
〈僕らの距離だ。物理的……物理法則を無視した存在だと自認しているが、便宜上この単語を使う。物理的な距離は不可能だが、交流を減らすことは出来る〉
「なんでっ!?」
なんでそうする必要があるのか全くわからない。どういう思考回路でそうなったんだ。
〈僕が離れる方法を探してもらう約束だったな。僕の方からも何か出来ることをすべきだ。体の主導権を握る気はない。そのままにされそうだからな。となると思いつくのはそのくらいだ〉
「交流を減らすのが? それこそヤミポンがよく言う無意味ってやつじゃないの? 意味のある行いとは思えないんだけど」
〈やってみないことにはわからないだろう。以降はなるだけ話しかけないでくれ。離れられたか離れられてないかの成果はしばらく過ごしてみてこちらから伝える。その際にまた方法は模索しよう。じゃあ、おやすみ〉
「え、ちょっと待って」
静止の言葉を掛けたけど、ヤミポンは輪郭を消した。俺の中に入ったみたいだ。見える場所に居れば俺が気軽に話しかけるからだろう。
めげずにスマホに話しかけたけど、ダメだった。応答がない。
……むなしい。静かだ。
自室が静かなのは久しぶりで、誰かに連絡を取りたくなるけど今は夜中だ。我慢して寝なきゃいけない。
動画サイトをラジオとしてつけたけど、落ち着かなくて結局はアプリを閉じた。
誰もいない。そんな感じだ。
目を閉じて、我慢しよう。俺は妹の面倒もみてきたしっかりとした兄だし、もうコドモじゃないし、大丈夫だ。
