憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

-13-
 中間テストが無事終わり、音楽の授業中。大介が倒れた。
「なんかすっげぇ眠いっつーか、だるいっつーか、クラクラしちゃってさぁ。今はなんともないよ!」
 授業終わりに保健室に行くと、ぐっすり眠って顔色が良くなった大介が笑顔で迎えてくれた。以降の授業は問題なく受けている。
 その後も音楽室では何人もの生徒が体調不良を訴え、階段の鏡のある踊り場でも同様のことが起こった。
 いずれの生徒の話も『ひどい眠気が襲ってきたかのようなだるさと目眩』だ。少し前の俺の状態と似ている。でも踊り場はよくわからない不思議現象だからともかくとして、音楽室の霊が悪さをするとは思えない。
「やっぱり、集団パニックってやつなのかな」
 その日の夜、俺は音楽室に忍び込んだ。もしかしてピアノの霊がまだ居て悲しんでいるんじゃないかと思ったからだ。ヤミポンは航琉くんを同行させるべきだと言ったけど、俺の体調は良いし航琉くんと二人きりは気まずいし、何かあればヤミポンがスマホで至る所に電話をするという条件で俺一人で動くことに了承してもらった。
 ピアノの音はしない。
「うーん、ヤミポン側からはどう? オバケとかなんか見えてる?」
〈いや、何も。そのガキが見えるだけだ〉
 子供の霊は俺の側についてきている。最近はそれ程泣かなくなったけど時々は泣いて、周りに人が居なければ俺は『おはなし』……つまり語り聞かせをしてみている。子供はそれが好きなようで、俺がおはなしをすると眠っている様子になる。ヤミポンは〈そんなことをする必要はない〉と言っているけれど、おはなしをしているときヤミポンも心地良さげに眠たそうにしている……気がする。ので、やめる気はない。
「そのガキって……そんなに嫌いなの? ヤミポンにしてはあんまり上品な言葉じゃないよな」
〈……そちらのお子様が。これで満足か?〉
 お子様、の部分をかなり嫌そうに強調された。もう少し優しく出来ないもんかな。
「集団パニックだとしても、そこまで大きな噂になってるとは思えないんだけどな。ピアノの霊のこと航琉くんは知らなかったし、大介も知らないと思う」
 俺の体調不良も集団パニックよりも呪いのほうが信憑性は高い。集団パニック……俺は集団じゃないけど、幽霊に会ったと感じて精神的な恐怖を抱き体調にきたすなら、今それが起きてないのがおかしい。今まさに幽霊のヤミポンと会話し、七不思議はバッチリ信じていて今後も挑む心持ちなのだから。
 ――オマエ、か?
「ん? なんか言った?」
〈いや、なんでもない〉
 透明な輪郭しかわからないけど、ヤミポンが子供の霊のほうをじっと眺めているように見える。こういうときは必ず……
 ――うわああん……
「泣かすなよ……」
〈泣かせてない。勝手に泣くんだ〉
「いや、睨んでる雰囲気くらいは感じるぞ……」
 ――うわああん……!
「よしよし、大丈夫大丈夫。何もないみたいだし、もう帰ろう」
 ――う、う、う
「『おはなし』しながら帰ろう。な?」
 ――……うん
 ――……ハァ
「なんか今、溜息が聞こえた気がすんだけど?」
〈……気のせいだろ〉
 素直じゃないな、と思う。おはなしを聞くのはヤミポンも好きなくせに聞いてないようなフリをした輪郭が見えた。
 今の溜息だって、この子が嫌いなことだってそうだ。いつもはぐらかされている。
「ちょっとはヤミポンのこと知りたいよ俺は。ダチじゃん、もう」
 こんだけ一緒に居て喋ってて楽しければ友達だ。俺はそう思ってる。
〈……は?〉
 嫌な言葉だったか。俺に言われたとしても。
 ――うわああん……!
「ごめん、踏み込んだ。撤回する。帰ろう」
 おはなしをしながら帰ったけど、子供はなかなか泣き止んではくれなかった。