憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!


 昼過ぎから約4時間ほどの、もう仮眠と呼ぶには値しない割とがっつりめの睡眠をとり、割と回復し、夕食を食べ、母さんも既に俺がイケメンから告白されたことを噂で知っていたらしく嬉しそうにされ、俺はさっきの航琉くんとのやりとりを思い出しながら若干気まずくなり、イケメンというより美形のほうが形容詞として近いよなぁなんて考えながら、本日の予定は夜の音楽室への侵入である。
〈大事をとるという考えはないのか? 授業を休んでおいて夜中に出歩くというのはどうなんだ〉
 母さんと光莉が寝た後、スケジュール帳を確認し動きやすい服に着替えているとスマホから声がした。
「寝てだいぶ良くなったよ。やっぱ寝不足だったのかな」
〈昨日の少しの夜更かしと今朝の少しの早起きくらいで?〉
「うーん……アレじゃない? お前、俺の体で柔軟体操とか筋トレとか走り込みとかはしてなかっただろ? きっと体力落ちてんだよ」
〈キミにそんな習慣があるとは知らなかった〉
「円滑な不法侵入のために鍛えてんの」
 スマホの合成音声は呆れたような声色だ。さっき『1789年フランス革命』なんて言ってた頃はもっとゆっくりで穏やかで優しかったのに。
〈不法侵入はさっさと捕まれ。……七不思議、だったか。六つの七不思議と出会い屋上に行くと願いが叶う……馬鹿馬鹿しい。そんなことで叶うわけがないだろう〉
「でもお前が居た」
 スマホから音声はしないけど、空中からぴくりと驚いたような雰囲気が伝わってきた。そこら辺に居るのかもしれない。全く見えないけど。
「それって不思議なことがある証拠にならない? それに、別に願いを叶えたくてやってるわけじゃない。単なる好奇心だよ」
 スマホは考え込むように黙っている。
「鏡のときも、きちんと不思議なことは起きた。七不思議の場所は五十個以上見て回ってるけど、ああいうのは滅多に……というか初めてだ。やっと六つのうちの一つ目。数打ちゃ当たるとしても、バイトの日とか母さんが夜勤の日とかは夜の学校へは行けない。行ける日に行くしかない」
〈単なる好奇心にしては執着が強いように見受けられる。あの鏡、キミは僕とは違うものを見たな? 僕が見えたものの中にはないことを口走っていた。何を見た?〉
 少しだけ、目眩が蘇ってきた。
「……う、ぇ」
〈だから言わんこっちゃない! 横になれ! 今すぐ寝るべきだ!〉
「大丈夫だから。こんくらい問題ないよ」
〈悪化したらどうするんだ! 大きな音出すぞ。ご家族に止められてしまえ〉
 それはマズイ。こんな時間の大音量は怒られる。外に出るのも止められてしまう。厚手の衣類でスマホを包み、俺は急いで出発した。どうにかなった。一安心だ。
〈……覚悟しておけよ〉
 と怒りの合成音声が聞こえた気がしたが、第一関門にして最大の難易度、自宅から出ることには成功したのだ。この先に難しいことなんて、そうそうあるわけがない。

「こんばんは」
「なんっ……!?」
 航琉くんがいた。校門の前に。
 なんでっ?