憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

 家に帰ってしばらくベッドに突っ伏してみて、起き上がって洗面所に行き顔を洗って……頭はここじゃ洗えないか。諦めてシャワーを浴びてドライヤーで乾かし、ワックスを手に取り髪を整える。
「これでよくフワッとセット出来たな、ヤミポン。結構パリッとガチッとするタイプのワックスなのに」
〈努力だ〉
 なるほど。
「ヤミポンさ、本当に……恋、とか、する気はないの」
 髪のセットをしつつ、俺はスマホに話しかける。
〈またその話題か……〉
「好みじゃなくても、一緒に居たら好きに……みたいなの聞くしさ」
〈恋愛対象と接したら全て恋愛に発展するのか? 馬鹿馬鹿しい。一般的に対象の数が多く話題になりやすい例を言おう。『男女の友情は成り立つか?』。僕の意見は『むしろどうやったら男女というだけで全てが恋愛になるんだ? 属性の一つが恋愛対象というだけで恋愛しか成り立たなくなるのは馬鹿のすることだろ』だ。キミが言っているのはコレと同じだ〉
「恋愛対象なの? 航琉くんのこと」
〈対象内の中央からは大きく外れるが、明確な対象外であるかは不明だ。だが意識しようとすら思う気になれないのは、対象外ということなのだろう〉
「じゃあ、俺のことがスキとか……? それで航琉くんになびかないとか。キャッ、照れる」
〈自分から話題を振っておいて茶化すならこれ以降真面目に応える気はないからな〉
「ごめん! ごめん……なんか……」
 俺は鏡の中の自分を見る。
 令和のファッションだ。見よう見まねで自分でやった。髪もどうにか努力した。
「なんか、うまくいかないのかな、って」
 多分、俺の今の格好は似合っているんだと思う。そりゃ現役の令和人間だ。イマドキが似合う年齢。
〈……〉
「全部、上手く行く方法なんてないんだ。ヤミポンは俺の二重人格じゃないし、航琉くんと過去に出会ってたなんてこともない」
 驚きの真実や過去の絆なんてものは現実にはなかなかなくて、手元にはただ今までと同じ事実があるだけだ。
 航琉くんはヤミポンが好きだし、テスト期間が終われば俺はヤミポンが離れる方法を探さないといけない。
「せめて誠実に、終わりにしようと思う。今から二重人格じゃなくて幽霊だって説明するとややこしくなって本題が伝わりにくくなりそうだから、嘘はついちゃうけど」
〈本当にいいのか〉
 話を茶化して誤魔化してまで自分の気持ちを見ないようにしてる俺が真っ直ぐな気持ちを向けてくる相手に出来ることなんて、このくらいしかないから。
「それはこっちの台詞だけど、本当にいいの?」
〈僕が彼と恋愛関係になることか? これに関しては本っ当に、どうやったら逆張り等の誤解を与えずに伝えられるのか悩むくらいに本当に関心がない。ちなみにキミに対しても恋愛感情はない〉
「それは俺も同じだけど……」
〈何よりだ〉
 ならもうやることは決まりだ。
 終わりに、しよう。
『今から会える?』
 俺は航琉くんに連絡を入れた。返事はいつもの通り、素早く返ってくる。
『会えます。どこで会いますか』