憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

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 中間テスト前期間だ。七不思議巡りは休止、航琉くんとはお互いの家で勉強をするようになっている。
 あの並木道で俺が立ち尽くしてしまっていると、航琉くんは「来週一緒にテスト勉強をしませんか」と持ち掛けてきた。「放課後を一緒に過ごしたいです」と。
 再び捨てられた子犬みたいな顔をされ、首を横には振れなかった。絆されてしまう。このままじゃいけない、と思う。
 テスト勉強には集中しなきゃいけないから、テストが終わったら……なんて、自分に言い訳をして、航琉くんの気持ちを利用しているのは俺自身だ。一緒に居ると心地が良くて、嬉しくなってしまうから。このままじゃいけない。でも、せめて、今だけは。

 初めてうちに来た日には妹の光莉がいて、航琉くんの見た目の造形美に「ぎゃーーー」と倒れそうになっていた。
 光莉はすぐに正気を取り戻し、許可を得て航琉くんの写真を何枚も撮って母さんに送り、母さんも『ぎゃーーー』とだけ返事を送ってきた。
 気持ちはわからんでもない。
「賑やかですね」
 などと楽しげに笑顔を向けられてしまい、俺も
「ぎゃーーー」
 の気持ちである。声には出さない。踏ん張った。
 表情は豊かなまま、きちんと嫌なことは断るようにしているそうだ。この前廊下ですれ違ったときも取り巻きは居なくなっていたしリラックスして過ごせている様子だった。良かった、と思う。
 航琉くんは頭が悪いわけでも、これといってズバ抜けて勉強が出来るわけでもなく、俺は言わずもがな……勉強は苦手だ。中の人に頼りたいが、二人でいるときはやっぱり出てきてくれない。コミュニケーション、取らせたいんだけどな……。
 勉強中にスマホの通知があったが、母さんからだった。
 光莉の撮った航琉くんの笑顔の写真を貼り、『「このカオ……俺以外に見せんな」って言ったほうがいい』とのことだ。
 母さんには刺激が強すぎたか。血圧をそろそろ気にする年齢なのかも……でも人の顔をそんな災害みたいに扱わなくたって。どう考えても皆で見て皆で慣れるほうがいい。

「プール、美術室、図書室、家庭科準備室……ですか」
 勉強の休憩中、俺のスケジュール帳を開きながら七不思議巡りの行き先について話した。
 テーブルの上には大きなジュースのボトルと、それを注いだグラスが2つ。
 中の人と子供の気配もあるからもう2つ置きたいけど流石に航琉くんも変に思うだろうし、あっても中の人も子供も飲まないから、寂しいような気もするけど仕方ない。前にお供え物みたいに食べ物をあげようとしたら、中の人から〈不要だ〉と言われてしまった。
「他にも色々噂はあるんだけど、今のところはこの六つが有力かな。知ってる人も多いし、その場所で具合が悪くなったって話も聞く。ベタだよな」
「ベタ?」
「よくある話ってやつ。オバケがいると呪いで体調を崩す、とかそういうやつじゃない?」
「なるほど……この六つはそれぞれどういった不思議があるんでしょう?」
 俺は各場所の七不思議の話を聞かせた。プールが閉鎖されている時期に泳いでいる幽霊がいる、美術室の石膏像の目が動く、図書室に子供の霊が出る、家庭科準備室にある手縫いの人形が動く……。
 航琉くんはいくつか疑問が湧いたらしく、首をかしげていた。
「図書室にどうして子供の霊が?」
「さぁ……? 噂によると、絵本を読んでたり、気に入ったものは職員室にまで行ってコピーを取ったりしてる、らしい……ちょっと尾鰭つきすぎな話だ」
「あ、でも最近廊下や職員室で具合が悪くなった人がいるとも聞きます」
「まじ? 行動範囲広い幽霊だなぁ……」
「コピー……」
 航琉くんは俺のことを見つめている。そろそろ慣れて、航琉くんは俺を見つめる生態の、そういう生き物だと思うようになった。でも今回は長いな。何か言いたげってわけでもないし、見ながら考え事してその考えに思考が持っていかれている感じだ。
「コピーがどうかした?」
「いえ、燈李さんが増殖して、沢山居たらと想像しました」
「だいぶそれは……うーん……」
 この前もそんなこと言ってたっけ。航琉くんはその想像に嬉しそうな顔をしてるけど、俺としては俺が沢山居るのは勘弁願いたい。
「美術室の石膏像の目が動くというのは……?」
「目、ないよな。真っ白で。黒目の視線が動くんじゃなくて、まばたきするとかなのかな」
 今度は俺が航琉くんを見つめた。
「まぁ……航琉くんも石膏像みたいなもんだし……?」
 石膏像にまばたきされたくらいじゃ、もうそんなに驚かないかも……。
「何を言ってるんですか?」
 心の底から疑問だという顔をされてしまった。
「戸籍も血も涙も遺伝子もありますし、肌荒れもあります。変な人だと言われることは、時々ありますが僕は人間の範疇です」
「え、肌荒れ? どこ?」
「ここです」
 ほんとだ。人間なんだなぁ……。なんか、頬もちょっと赤い?
 航琉くんの肌を見るために顔を近付けていたら丁度気を利かせた光莉がおやつを運んできてくれていて、再び「ぎゃーーー」と言わせてしまった。
 香水のこともだけど、後から気付く。その場では俺も航琉くんも「?」だが、それなりな恋愛ムードに展開する流れにも見られることをした、らしい。
 そういや香水はあの翌日分けたものを貰ったのだが、良い香りではあるものの俺がつけるとなんか違う感じだった。付け方も教わったけど、航琉くんがつけてるほうが良い香りがする気がする。体温とか体質でも香りは変わるらしい。残念だけど俺がつけるのはよしとこうと思いつけなくなったら、航琉くんには物凄く残念そうにされた。理由を説明すると嬉しいんだか残念なんだか複雑な顔をしていた。