ジリリリリリリリ!!!
「何!!??」
安眠を妨げる爆音に叩き起こされ、俺はベッドから転げ落ちた。
〈ポルターガイストだ。スマホくらい操作出来る〉
「7時じゃん!!!」
〈遅かったか?〉
「いや、大変適切な時間。でも……あと、5分……寝かせてくれてもよかったのに……」
〈5分怠けるなら5分余裕を持って行動しろよ〉
「ド正論!!!」
仕方がないので顔を洗いに洗面所に向かう。光莉も丁度起きたようで、廊下で顔を合わせた。
「お、お兄ちゃん……?」
どうやら早起きの兄、つまり俺らしくない行動をとっている俺のことが心配らしい。普段はアラームを止めてまた寝るものだから。
「大丈夫、俺だ。まだ髪も服もどうにもなってないけど。先どうぞ」
光莉は明らかにホッとした顔で、洗面所に行った。すぐに終わるだろうから、俺はドアの近くで待っていることにする。
〈……悪かった。二重人格なんて……その、変なことをご家族や友人に言ってしまって〉
光莉の様子を見ていたのだろう、スマホから中の人のポルターガイストが引き起こす合成音声が聞こえた。
〈幽霊に取り憑かれていて今まさにその幽霊の僕が体を動かしている……なんて言うよりは良いと考えて……〉
「俺も同意見、それに一票だよ。議員二人満場一致で可決だ。次からもよろしく頼む」
〈は? 次?〉
洗面所のドアが開き、化粧水を顔に叩き込みながら光莉が出てきた。
「お兄ちゃん、誰かと通話? あっ! カレからモーニングコール!?」
「あらゆる意味で違う、かな……」
通話でもないしカレでもないし、想定される彼(おそらく航琉くん)はカレ(恋人)ではないし、モーニングコール……なのか? これは。
光莉は「ひゅーっ! フゥー!」とテンション高くリビングに向かった。入れ替わりで俺も顔を洗う。
〈妹さん、なんだか凄いな。キミの家族は全員あんな感じなのか? 僕がキミの体を使っていたときはこういった感じはなかったように思うが〉
「そりゃいつもの俺と違って真面目っぽい相手にふざけられないだろ。あんな感じだよ、母さんも」
〈父親は?〉
「死んだ」
〈! 悪い、よく考えもせず立ち入ったことを聞いた〉
「いいよ、随分前のことだから。それに今後のことも考えて、俺の諸々は知っといてもらったほうがいいし。うちんち遺影も仏壇もなくてわかりにくいよなー。友達来たときに気まずいから置かなくなったんだ」
〈そう、か……。うん? 今後って何のことだ〉
「俺の体使うとき面倒がないように」
〈どういう……〉
「お兄ちゃーん!」
スマホと会話をしながら、我が妹光莉を真似て顔に色々と塗りたくって叩き込んでいるとリビングから声が掛かった。
「パン焼くー?」
「焼くー! 今行く!」
余裕のある朝、焼いたパンが食べられるのも悪くない。
