憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

-9-
 ――いたい
 ――いたい
 ――いたい……っ
 ――こわい……
 子供が、泣いている。
 どこが痛い? 何が怖いんだろう。痛みの原因を、取り除けるだろうか。それとも他に望んでいることがあるだろうか。
 俺はこの子に、何が出来るんだろう。

 数日が経ち、ふと航琉くんの良いところが分かれば中の人も出てきて仲良くしたくなるんじゃないか? と思い、俺は航琉くんを改めて観察することにした。俺と居ないときはどんな感じなんだろう?
 よし! 待ち伏せと尾行をしてみよう。
 七不思議の帰りに送り届けたので自宅は分かっている。早起きは苦手だけど、気合いを入れればなんとかなるものだ。母さんには気分転換と伝えて、朝早くに家を出た。
 大介にも口裏を合わせてもらって、今日の昼は生徒会に呼ばれていて一緒に食べられないと航琉くんにはメッセージを入れた。これで昼休みの観察も可能だ。
 放課後はそのまま帰ることが多いと言っていたから授業の終了時間によっては会えなさそうだけど、見つけられれば放課後も観察してみよう。

「ちゃんと見ておいてよ。航琉くんのことがわかればお前だって興味を持つはずだ」
〈……僕が? 今のところ全く興味は湧かない。キミのほうじゃないのか、興味があるのは〉
 中の人は、二人だけのときなら呼べば返事をしてくれる。今は近くに人はいないけど一応は公の場だ。返事の音量はかなり小さく、周囲を気にしている様子だ。
〈……一体それは、何をしているんだ……?〉
 朝。俺は唐草模様の風呂敷を頭に巻き、両手に葉のついた木の枝を持ち、物陰に隠れて航琉くんの家を見ている。
〈不審者のコスプレか?〉
「尾行スタイルっつったらコレだろ」
〈全くわからない〉
「だから……あっ! 出てきた」
 航琉くんは普段通りの整った姿で家から出てきた。俺と一緒にいるときよりも少し速歩きで学校へ向かっている。
 バレないように一定の距離をとって尾行を……している奴が結構いるような……?
 女性達……主に女子生徒が一定の距離で航琉くんを見つめながら後ろをついていっている。しかも複数人。バラけた場所から。
 信号待ちのとき、そのうちの一人が「花芽木くんっ! 学校、一緒に行こっ!」と声を掛け、航琉くんが困ったように何も言わずにいると他の数人も「私も!」「一緒に行こ!」と声を掛けに行った。
 信号が青になり、航琉くんは困ったまま歩き出す。女の子達は返事がないことを了承と捉えたのか、航琉くんを囲んで楽しそうに一緒に歩いている。
 尾行の人数は減ったが、それでもまだ数人はいる。この数人は話しかけるつもりがないようだ。距離を保ったまま写真を撮ったり双眼鏡で覗いたりしている。
 通行人にも何度か話しかけられていた。道を聞かれたり、時間を聞かれたり、ラブレターらしきものを渡されたり……かなり遠くの他校の制服の生徒もいた。
 なんか、すごく……
「大変そうだな……」
〈あぁ……〉
 通学中、ずっとそんな感じだった。一人になる暇がない。モテには苦労しなさそうな見た目だけど、モテて苦労する見た目だ、航琉くんは。