「さっき……」
「ん?」
帰り道。航琉くんがふと思い出したように話し始めた。
「もう一人、声が聞こえた気がします。歌っているとき。終わりのほうで、一緒に歌ってくれていた……男性の声でした」
俺の気のせいではなかったらしい。
居ることが分かってもらえた気がして、ちょっと嬉しくなった。
「あれも多分ポルターガイストだと思う」
「なるほど……?」
お前の、好きな人の声だよ。
やっぱり、と思う。
やっぱり、あんまり俺に好きだって言わせちゃ、良くないよな。
「航琉くん、さっきさ、俺の嫌がることはしないって言ったじゃない?」
「はい、しません。分からずにやってしまうこともあるかもしれませんが、可能な限りは考えて行動します」
「ありがと。その、正確に伝えにくいんだけど、しばらく『好き』って言うのはよしてくれないかな」
「どうしてっ……!」
おおっと、凄く傷ついた様子になられてしまった。
「あ、いや、お前の気持ちを否定したいわけじゃなくて、むしろ否定したくないからというか、なんというか……」
俺自身が『好き』と言われるのが苦手ってのもあるけど、何よりも、その大切な気持ちは正しい相手に届けないといけないよ。
とはいえ相手が幽霊だと分かったらその瞬間に失恋みたいになる可能性もある。見えないし触れられないし、会話も出来ない。でも俺の体を使えば両想いは不可能じゃない。
「えーと、苦手なんだ。出来るだけ二重人格のほうに変わってもらえるよう、呼びかけてみるから」
「僕は貴方のことが」
「やめてくれ」
俺は彼の言葉を遮って止める。届ける相手を間違えさせたら可哀想だって気持ちも本心だし、こういうのが苦手なのも本心だ。
「そういう、唯一無二の想いみたいなの、俺は嫌なんだ。二重人格のほうなら大丈夫だと思うから」
「……わかり、ました」
あまり納得がいってなさそうだけど、気持ちを汲んでくれたらしい。
ごめんな。きっと宝物みたいに大切な想いだ。俺なんかに消費せず、きちんと届けられるようにしてやりたいけど……どうしたら中の人は……出てきてくれるんだろう。
