「大地くんから聞いたんだけど、お兄ちゃんさー」
「んー?」
「イケメンに付きまとわれてるってほんと?」
「はっ? ゲホッ!」
「はい水」
「ゲホッ、さんきゅ」
夕飯を食べながら、三つ下の妹である光莉が何気なく言った内容に俺は咽せてしまった。大地くん……大介の弟で、光莉の同級生のことだ。
大介……お家で喋ったんだろうなぁ……そりゃあ俺が逆の立場でも喋るよ、毎日あんなんだったら。大介が喋らなくても遅かれ早かれクラスの誰かは誰かに話しているだろう。
「いいなぁ。私もイケメンに告られたい!」
「光莉あのさ、どういう内容で伝わってんの?」
「イケメンで怖い感じの男の子から愛されすぎて困っちゃうけど今のところ無害!」
長いタイトルみたいだ……。
「愛されすぎてはいないと思うよ。付きまとわれてもないと思う」
「告られたん?」
「まぁ、一応」
「どうすんの!?」
すげぇ楽しそうに聞くじゃん。
「一応来月のデートが決まった」
「きゃーーっ! やばい! すごい! いいなああああ」
母さんが今日夜勤で良かった。この場にいたら絶対に騒がしさが二倍になって近所迷惑だ。
ジャンケンに負け、母さんの居ない本日の皿洗いと風呂掃除の担当になり、その作業中も「どんな人!?」「写真ある!?」「お兄ちゃんのどこらへんが好きなのかな!?」とそれこそ付きまとわれたが、光莉が誰かに告白されたと聞いたら俺も同じ反応をしそうだ。
適当にあしらっていれば、すぐに就寝時間になった。
「だってお兄ちゃん、久しぶりの感じなんだもん」
光莉は恋愛話以外にも積もり積もった雑談をしたがっていたが母さんが居ない日のお兄ちゃんは保護者だから、普段はふざけていても今日は夜更かしを許しちゃいけない。
「明日も話せるよ。な?」
「んーー……」
「寝かしつけでもしようか?」
「むーー……」
子供扱いしないで! と普段は怒る中学生の光莉も、寂しいときは寂しいのだ。高校生の俺だってそうだ。言わないけど。中学生なら尚更寂しいのに言えないのは経験済みだ。
寝室は男女別だけど、侵入禁止ってわけじゃない。光莉をベッドに寝かせ、その近くの椅子に座る。
ウチに絵本はもうないから、記憶を頼りに昔話を語り聞かせてやる。絵本を開くわけじゃないから、暗くても大丈夫。
「昔々、あるところに……」
寝息が聞こえ始めても、お話しをやめるとすぐに起きてしまうから最後まで続けること。
小さい頃俺のほうが眠気に負けて、途中で読むのをやめてよくぐずって泣かれてしまった。今はそんなことで泣かれはしないだろうけど、俺だって眠気に負けたりしない。
「……めでたし、めでたし。おしまい」
毛布を掛け直し、小さく「おやすみ」と声を掛けて俺は部屋を出た。
眠気はある。だけどここからが夜本番だ。
「んー?」
「イケメンに付きまとわれてるってほんと?」
「はっ? ゲホッ!」
「はい水」
「ゲホッ、さんきゅ」
夕飯を食べながら、三つ下の妹である光莉が何気なく言った内容に俺は咽せてしまった。大地くん……大介の弟で、光莉の同級生のことだ。
大介……お家で喋ったんだろうなぁ……そりゃあ俺が逆の立場でも喋るよ、毎日あんなんだったら。大介が喋らなくても遅かれ早かれクラスの誰かは誰かに話しているだろう。
「いいなぁ。私もイケメンに告られたい!」
「光莉あのさ、どういう内容で伝わってんの?」
「イケメンで怖い感じの男の子から愛されすぎて困っちゃうけど今のところ無害!」
長いタイトルみたいだ……。
「愛されすぎてはいないと思うよ。付きまとわれてもないと思う」
「告られたん?」
「まぁ、一応」
「どうすんの!?」
すげぇ楽しそうに聞くじゃん。
「一応来月のデートが決まった」
「きゃーーっ! やばい! すごい! いいなああああ」
母さんが今日夜勤で良かった。この場にいたら絶対に騒がしさが二倍になって近所迷惑だ。
ジャンケンに負け、母さんの居ない本日の皿洗いと風呂掃除の担当になり、その作業中も「どんな人!?」「写真ある!?」「お兄ちゃんのどこらへんが好きなのかな!?」とそれこそ付きまとわれたが、光莉が誰かに告白されたと聞いたら俺も同じ反応をしそうだ。
適当にあしらっていれば、すぐに就寝時間になった。
「だってお兄ちゃん、久しぶりの感じなんだもん」
光莉は恋愛話以外にも積もり積もった雑談をしたがっていたが母さんが居ない日のお兄ちゃんは保護者だから、普段はふざけていても今日は夜更かしを許しちゃいけない。
「明日も話せるよ。な?」
「んーー……」
「寝かしつけでもしようか?」
「むーー……」
子供扱いしないで! と普段は怒る中学生の光莉も、寂しいときは寂しいのだ。高校生の俺だってそうだ。言わないけど。中学生なら尚更寂しいのに言えないのは経験済みだ。
寝室は男女別だけど、侵入禁止ってわけじゃない。光莉をベッドに寝かせ、その近くの椅子に座る。
ウチに絵本はもうないから、記憶を頼りに昔話を語り聞かせてやる。絵本を開くわけじゃないから、暗くても大丈夫。
「昔々、あるところに……」
寝息が聞こえ始めても、お話しをやめるとすぐに起きてしまうから最後まで続けること。
小さい頃俺のほうが眠気に負けて、途中で読むのをやめてよくぐずって泣かれてしまった。今はそんなことで泣かれはしないだろうけど、俺だって眠気に負けたりしない。
「……めでたし、めでたし。おしまい」
毛布を掛け直し、小さく「おやすみ」と声を掛けて俺は部屋を出た。
眠気はある。だけどここからが夜本番だ。
