憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

 放課後。
「それで、何だったの? この前の燈李の……えーと、服装の違いとか」
 大介が気を遣ったのだろう、言葉を選びながら聞いてきた。
 俺はといえば答えを用意しておらず、「ちょっとした、二重人格……?」と誤魔化すしかない。
 オバケが憑依したなんて言ったらお祓いとかで大ごとになりそうだし、ガチの二重人格とか言っても大ごとになりそうだし、中の人もそう言うしかなかったんだろうな……。
「あ!!!」
「何!?」
 俺はこのシチュエーションで思い出したことがあり、思わず大声を出していた。大介がびっくりしている。
「大介!!! 俺は、友達! 要る!!! 必要!! だからな!!!」
 昨日中の人も謝ってはいたけど、誤解させてたら解きたいのだ。友達は要らなくないぞ。
「わーん!!! 燈李ーーー!!!」
 大介は俺の言葉に全身で喜びを表現してくれた。抱きついてきたのだ。勿論俺は慣れている。俺の身体は……ビクリ、とまではいかないけど、少し身構えた感覚はあった。大介には気付かれてないだろう。
 ぎゅぎゅっと抱きしめ返し、心配させて悪かったことと心配しなくていいこと、俺が滅茶苦茶元気なことを伝えると、心の底から安心した顔で大介は笑ってくれた。

 昇降口に向かう途中、今度は大介が昨日のことを思い出した。
「そういやこの、ストラップなんだけどさ」
 大介がポケットから出したスマホには、ストラップホルダーと、そこに夕焼けか朝焼けかの絵画のストラップが付いている。
「昨日の落とし物のやつ?」
「そうそう。捨てられちゃうのもなと思って俺が貰って、ストラップホルダー買ってつけたのは良いんだけど、せっかくストラップホルダーつけたならストラップは遥ちゃんとお揃い買いたくなっちゃってさ」
「なるほど」
「だから……昨日、あんま好きじゃないって言ってたのに悪いんだけど、燈李がもっててくれねぇ……? 生徒会に返しに行くは、ちょっと……」
「そりゃ気まずいよな、貰っておいてすぐ返しますってのは」
「ううう」
 しょぼしょぼと落ち込む大介の顔はリアクション芸みたいでちょっと面白いけど、本人は深刻だ。
「いいよ。昨日の俺はひねくれてたみたいだけど俺はその絵結構イイと思うし、俺が頂戴ってねだったことにしなよ」
 俺は9割くらいは大介の顔の面白さから、残り1割は優しさから、笑顔でそう応える。
「ありがとう!!! 飽きたら外していいから! 本当にありがとう!!! じゃあ、俺遥ちゃんと待ち合わせあるから~!」
 スマホを取り出すと大介はストラップホルダーとキーホルダーをつけてくれて、笑顔で颯爽と去って行った。
「恋はいいぞ〜〜!!!燈李もがんばれよーー!!!」
 などと言いながら。
 そりゃ人の恋は見ても聞いても楽しいけどさぁ! 言い返そうとしたときには大介は随分と遠くに行っていて、アレが恋の情熱なんだろうなぁ……と輝かしいものを見た有り難い気持ちになってしまうところが、俺にはやっぱり恋は向いてない証拠なのだ。
 ――「好きです」――
 あのときの真っ直ぐな目。
 俺じゃない人物に向けられた気持ち。
 騙しているような感覚の申し訳なさと、ひたむきな彼を見て応援したい気持ちが湧くけれど、俺じゃ応えられない。
 ――「あんまり弄ぶなよな、向こうは真剣っぽいんだから」――
 さっきの大介の言葉を思い出す。
 恋愛の意味で好きと言う奴に対して『友達付き合いをしてイメージと違うと思わせてフェードアウト狙い』は、確かに良くない作戦だ。変に期待させて落ち込ませちゃう可能性だってある。
 俺はきちんとお付き合いを断らなきゃならない。
 だけどその前に、確かめることがある。