青信号は変わらない

「おばさん、おはようございます」
 おばさんは、珍しく玄関に出てこなかった、具合でも悪いのかなと心配になって、リビングに行くと、ソファーに腰かけていて、テレビのニュースを見ていた。
「テレビのニュースで、最近この辺も物騒ね、連続強奪事件ですって、藍、気を付けるのよ」
「おいおい、息子は良いのかよ?」
「あなたは、車が突っ込んできても、飛び乗って交わしちゃう位だから、まったく……、心配なのは美人な藍、猛、しっかりしなさいね!」
「へ――い、へ――い」
 ――学校は何事もなく、一日が終わり、また、おばさんのお家に帰って来た。
 
「ただいま!」
 下駄箱に突撃する、左右の靴、不思議な事に、猛は見事にかわすのである。一度もぶつかった事が無い。しかし猛は呆れたように……。
「いい加減、靴位……学校と違いすぎるだろう」
 何か言っているらしいが、気にせず、おばさんのいるリビングに向かって行った。
「おかえりなさい、ご飯できているわよ、どうする藍?」
 すると、どこか疲れた様子でリビングに到着した、猛は
「俺に聞かないのかい?」
「藍が最優先、猛は、どうでもよいの、後、後」
「おばさん、わたし、ごはんたべたーい!」
「はーい、手を洗ってらっしゃい」

 洗面所の蛇口をひねって、勢いよく、私に跳ね返ってくる水に、両手を伸ばして、すぐに、タオルで拭いた……振り返ると
「石鹸を使って、洗いなさい、藍!」
「げぇ! 猛」
 もう一度、せっけんを手のひらに、あふれんばかりに、お山を作って、勢いに任せて、バシャバシャと何度も手を動かして、水は飛び散りながら、手を洗った。これなら、文句はないはず……振り返ると、猛は、右手を額にあてていた。(あれ? これで、良いのよね? 綺麗な手でしょう?)
 私は待てなかったので、先に、おばさんがいるリビングに向かった。振り返ると、びしょびしょに濡れた床を猛が、四つん這いになって、拭きとっているのが見えたが、私は気にしない……。
「おばさん、手を洗ってきましたー!」

 ――

「相変わらず二人とも良く食べるわね」
「おかわり! お味噌汁も――食べたーあ、美味しかった、幸せ」
「藍、先に、風呂入るか?」
「お風呂は帰ってからで、猛の部屋でがんばって、勉強しないと、だから、猛の部屋!」
「あら、そうなの、がんばってね藍」

 洗い物を終えた私は、猛より先に、二階にかけあがり、ソファーにダイビング! 着地! お見事、GAME機を取り出して、猛がくるのをじっと、待つ。階段を上がってくる音が、だんだんと近くなってきた。ソファを右手で、ポンポンと叩き、猛が隣座る。
「猛、遅い、ゲームやるわよ!」
 何度やっても、猛に勝てない
「猛、キャラ交換して、どうして、私が負けるのよ?」
「どうぞ、どうぞ、お好きなように」
「なんで、同じキャラ使っても、負けるの?」
 私は、天井を見上げて、両足をバタバタさせて、腹たつな、なんで勝てないのよ、もう一度、もう一度、もう一度、――勝てない。
「ところで、勉強するのでは、無かったのか?」
「良いの! これも、大事なお勉強」
「いったい、何の勉強なのだ?」
「なんで、勝てない! 猛ズルイ―!」
 コントローラーをポーイと投げだして、これ、壊れているのだわ、だから勝てないのね、猛が四つん這いになりコントローラーを回収。ソファーでジュースを飲み、リモコンを勝手にいじり、ソファーの隣を右手で、トントンと叩いた。
 猛は呆れたように、たちあがって、ちょこんと、私の隣に座った。

 ――ゲームをあきらめて、ラブコメアニメを一緒にみて、少し私はドキドキしてしまい、アニメみたいにと、猛の指に手をそっと伸ばしてみると、猛は、その手を振らりとあげて、おせんべいを摘まんだ。一瞬だけ、私は眉を潜めた。その後は、さらに、刑事もののドラマを観ていたのだが、ふと顔を右上にあげると、
「ところで、勉強は?」
 猛は立ち上がり、机の上でカバンから教科書を取り出そうとするが、
「え? 二十三時! 時計壊れているのでは? 猛、まだ二十時のはずが……いけない、帰ってお風呂入って、寝ないと」
「そりゃ、あれだけゲームやって、アニメ見て、ドラマ観ていれば……」
「う・る・さ・い、だ・ま・れ!!!!」

「送っててよ」
「は? だから、玄関あけたら、藍の家だぞ?」
「だから、送れこの、馬鹿! ものすごーく、遠いのだから! 一メートルもあるのよ、わかったかしら?」
「おばさん、帰ります、ごちそうさまでした」
「お風呂、入って行かなくて良いの?」
「はい、大丈夫です、お家で入ります。勉強頑張っちゃったので、時間を忘れていました」
「あら、あら、そうなの、猛ではお勉強にならないかもしれないのに」
 猛は何故か、玄関に頭をドスンとぶつけていた。
「いえ、猛は物凄く頭が良いので、ばっちりです、では、おやすみなさい」

「――はい、良くできました、おやすみなさい 明日は目覚ましが鳴る前に、起こしに来るのよ、何、その顔、わかったかしら?」
「へい、へーい」
「はい は 一回、何度言ったら……」
「……おやすみなさい」