あれから、学校に行くと、廊下がガラッと道が空いたりすることは無く、それどころか、みんなから声をかけてくれたり、挨拶してくれたりしてくれた。少しだけ困ったことは、トレンディドラマとか、はやりのSNSの話になると、ついていけず、すまして微笑むことしかできていなかった。〇〇事件の話とか、ミステリーとかなら、得意なのだけれど……わたし、変なのかな? そんな事はない、まったく気にしない。
男子生徒は相変わらず、私と視線を合わせることは無い。今朝は雲が多く、御日様は隠れていた。何事もなく、一日が終わりを告げようとしていた。
昇降口に、猛を連れて行くと、目の前に、同じクラスのあのスマートフォンの男子生徒と、女子生徒が仲良さそうに話し合っていて、男子生徒が傘を広げ、二人で帰って行った。目出度い、初めから素直に向き合えば良いのに、まったく、あらら? え? 雨? 私、傘無い! しまった。
後ろを振り返り、猛に向かって
「傘が無い……」
「ほれ、傘」
カバンの中から、二本の折り畳み傘を取り出し、一本を私に渡してくれた。(さすが、猛、ありがとう、声には出さないけどね)
「やるね! 猛にしては、良くできました! コンビニでアイス買おうよ?」
傘を差しながら、駅に向かうと、お婆ちゃんが傘をさしてゆっくり私達の前の視線に入った。すると、物凄いスピードで、バイクが、近づいてきて、猛は私をかばい、路地側に、私の視線はお婆ちゃんを捉えており、何かの袋を一瞬で奪いバイクはその場を去っていった。
私は、傘を投げ捨て、走ったけれど、追いつけることはありえなく、はぁはぁと息をきらしながら、お婆ちゃんの元に走って戻った。
「逃げられた! お婆ちゃん、お怪我は? お財布取られたのですか? 警察に電話」
お婆ちゃんは、お腹周りをごそごそと、触って、長方形を取り出して
「いえいえ、お財布はこちらに、ありますよ。大丈夫です」
「ん? 何を取られたのですか?」
お婆ちゃんは、少し恥ずかしそうに、お婆ちゃんの照れる顔というのは、どこか癒される気がした。
「今日は、おじいさんと結婚記念日でね、ステーキが食べたいというから、買ってきたの、スーパーで」
なんですって! 結婚記念日
「ステーキが、盗まれたという事ですか? 警察に電話しないと」
ステーキという言葉に、あの歯ごたえと、湯気の香り、肉汁が喉を通っていく事を思い出し、私は、追いかけたはずの、犯人像が、一つも思い出せないでいた。
猛が、スマートフォンを私に差し出して、写真、動画を撮っていたのだ。
「やるじゃん、猛!」
猛は、傘を拾いながら、私を見て、スマートフォンを指さし、警察に電話をと促した。
「あのバイク盗難車だろうな?」
「どうしてよ?」
「ナンバーが無いし、テールランプがガッツリ、割れているから、それとな、男の首元には、衣服の隙間から見え隠れするようにして、どす黒い『蛇のタトゥー』がくっきりと彫り込まれていたぞ」
ほんの一瞬の出来事なのに、どうして、猛は、覚えているのだろう、まったくもって不思議。私は、警察に電話をし、駅の隣の交番にスマートフォンを見せた。お婆ちゃんも一緒に。
お婆ちゃんは、ありがとう、と頭を下げたが、今日は結婚記念日よね、これはステーキを買わないと!
「お婆ちゃん、どこのお店で買ったステーキですか、連れて行ってもらえませんか?」
信号を渡ったすぐ先のスーパーであった、お婆ちゃんと一緒に、お店の中に入った。雨は小降りだったのが、店内に入るころには、降りやんでいた。
お婆ちゃんの案内で、お肉コーナーに到着。私はお肉ってこんなに、沢山種類がある事に、驚いていた。どれもおいしそうに見えて、一つ、一つ、お婆ちゃんに、説明を受けていた。
「お肉って、沢山、場所によって、名前が違うのですね、凄い! 知らなかった」
猛は、右手を額に当てながら、私の体を指さして
「ここは?」
「すね」
……ここは? ふともも ここは、ふくろはぎ
「体は?」
「体よ、あれ? は? お肉は……お肉、あ!」
と大笑い、お婆ちゃんもウフフと楽しそうに笑ってくれた。
私は目的のステーキコーナーで、体の動きが止まってしまった。ステーキの値段に……
「げ! 二三〇〇円、二五〇〇円 ステーキってこんなに高いの、わたしおばさんの家でいつも、頂いていて……」
「ファミレスで食べているのは、ハンバーグステーキだろ、サーロイン、スーパー国産なら……」
猛は、お肉のパッケージの値札を指さして、国産を強調していた。
「大丈夫ですよ、記念日は毎日、一緒に入れるだけで、私達は幸せなのですから……お爺さんに、何か別な物をつくらなくてはね」
お婆さんは、財布を取り出そうとしていたが、私は、
「猛! ほら」
猛は両目を大きく開けて、口をポカーンあけながら
「え? 俺」
「猛が支払います、お婆ちゃんは、おいしいステーキを作ってあげてくださいね」
背中が何故か、丸く見える猛――レジに一人で並んでいた。ビニール袋に詰めて、私に視線を合わせず、渡してくれた。
お婆ちゃんは、しわしわの顔を、がんばってなのか、少しだけ、目が潤んでいる様子で
「ありがとう」
私と猛は、お婆ちゃんを、家に送り届け
「素敵な結婚記念日を送ってくださいね」
右手を振って、見送った。どこか、私も満足していた気分になった。一方の猛は、財布の中身をじっと、覗いていた……。財布を逆さまにしても、何も、地面に落ちることは無かった。
「猛、アイス買いに戻ろう!」
「? へーい、へ――い」
「私、お金もってないけれどね」
猛は、その言葉で、姿勢を正して立ち止まり、ポケットからスマートフォンを取り出し右手で操作して……。
「へーい、へ――い」
「猛、近い、一メートル、離れて」
スーパーについて、大好きなアイスを二つ、しょうがないな、猛の買ってあげよう。これが良い! 勝手に、二つのアイスを決めて、猛にわたして、私はレジの外で待つ。レジに並ぶ猛は、アイスが嬉しそうには見えなかった、寒いのかな? 雨あがったのにね、アイス。おいしいのに。
私達は、二人でアイスを食べながら……。猛の家に向かった。帰りの途中、猛は、財布とスマートフォンの重さを計っているように思えた。
そのような事は、観て見ぬふりをするのが、私である! 声には出さない無いけれど……(今日は、猛、ありがとう)
男子生徒は相変わらず、私と視線を合わせることは無い。今朝は雲が多く、御日様は隠れていた。何事もなく、一日が終わりを告げようとしていた。
昇降口に、猛を連れて行くと、目の前に、同じクラスのあのスマートフォンの男子生徒と、女子生徒が仲良さそうに話し合っていて、男子生徒が傘を広げ、二人で帰って行った。目出度い、初めから素直に向き合えば良いのに、まったく、あらら? え? 雨? 私、傘無い! しまった。
後ろを振り返り、猛に向かって
「傘が無い……」
「ほれ、傘」
カバンの中から、二本の折り畳み傘を取り出し、一本を私に渡してくれた。(さすが、猛、ありがとう、声には出さないけどね)
「やるね! 猛にしては、良くできました! コンビニでアイス買おうよ?」
傘を差しながら、駅に向かうと、お婆ちゃんが傘をさしてゆっくり私達の前の視線に入った。すると、物凄いスピードで、バイクが、近づいてきて、猛は私をかばい、路地側に、私の視線はお婆ちゃんを捉えており、何かの袋を一瞬で奪いバイクはその場を去っていった。
私は、傘を投げ捨て、走ったけれど、追いつけることはありえなく、はぁはぁと息をきらしながら、お婆ちゃんの元に走って戻った。
「逃げられた! お婆ちゃん、お怪我は? お財布取られたのですか? 警察に電話」
お婆ちゃんは、お腹周りをごそごそと、触って、長方形を取り出して
「いえいえ、お財布はこちらに、ありますよ。大丈夫です」
「ん? 何を取られたのですか?」
お婆ちゃんは、少し恥ずかしそうに、お婆ちゃんの照れる顔というのは、どこか癒される気がした。
「今日は、おじいさんと結婚記念日でね、ステーキが食べたいというから、買ってきたの、スーパーで」
なんですって! 結婚記念日
「ステーキが、盗まれたという事ですか? 警察に電話しないと」
ステーキという言葉に、あの歯ごたえと、湯気の香り、肉汁が喉を通っていく事を思い出し、私は、追いかけたはずの、犯人像が、一つも思い出せないでいた。
猛が、スマートフォンを私に差し出して、写真、動画を撮っていたのだ。
「やるじゃん、猛!」
猛は、傘を拾いながら、私を見て、スマートフォンを指さし、警察に電話をと促した。
「あのバイク盗難車だろうな?」
「どうしてよ?」
「ナンバーが無いし、テールランプがガッツリ、割れているから、それとな、男の首元には、衣服の隙間から見え隠れするようにして、どす黒い『蛇のタトゥー』がくっきりと彫り込まれていたぞ」
ほんの一瞬の出来事なのに、どうして、猛は、覚えているのだろう、まったくもって不思議。私は、警察に電話をし、駅の隣の交番にスマートフォンを見せた。お婆ちゃんも一緒に。
お婆ちゃんは、ありがとう、と頭を下げたが、今日は結婚記念日よね、これはステーキを買わないと!
「お婆ちゃん、どこのお店で買ったステーキですか、連れて行ってもらえませんか?」
信号を渡ったすぐ先のスーパーであった、お婆ちゃんと一緒に、お店の中に入った。雨は小降りだったのが、店内に入るころには、降りやんでいた。
お婆ちゃんの案内で、お肉コーナーに到着。私はお肉ってこんなに、沢山種類がある事に、驚いていた。どれもおいしそうに見えて、一つ、一つ、お婆ちゃんに、説明を受けていた。
「お肉って、沢山、場所によって、名前が違うのですね、凄い! 知らなかった」
猛は、右手を額に当てながら、私の体を指さして
「ここは?」
「すね」
……ここは? ふともも ここは、ふくろはぎ
「体は?」
「体よ、あれ? は? お肉は……お肉、あ!」
と大笑い、お婆ちゃんもウフフと楽しそうに笑ってくれた。
私は目的のステーキコーナーで、体の動きが止まってしまった。ステーキの値段に……
「げ! 二三〇〇円、二五〇〇円 ステーキってこんなに高いの、わたしおばさんの家でいつも、頂いていて……」
「ファミレスで食べているのは、ハンバーグステーキだろ、サーロイン、スーパー国産なら……」
猛は、お肉のパッケージの値札を指さして、国産を強調していた。
「大丈夫ですよ、記念日は毎日、一緒に入れるだけで、私達は幸せなのですから……お爺さんに、何か別な物をつくらなくてはね」
お婆さんは、財布を取り出そうとしていたが、私は、
「猛! ほら」
猛は両目を大きく開けて、口をポカーンあけながら
「え? 俺」
「猛が支払います、お婆ちゃんは、おいしいステーキを作ってあげてくださいね」
背中が何故か、丸く見える猛――レジに一人で並んでいた。ビニール袋に詰めて、私に視線を合わせず、渡してくれた。
お婆ちゃんは、しわしわの顔を、がんばってなのか、少しだけ、目が潤んでいる様子で
「ありがとう」
私と猛は、お婆ちゃんを、家に送り届け
「素敵な結婚記念日を送ってくださいね」
右手を振って、見送った。どこか、私も満足していた気分になった。一方の猛は、財布の中身をじっと、覗いていた……。財布を逆さまにしても、何も、地面に落ちることは無かった。
「猛、アイス買いに戻ろう!」
「? へーい、へ――い」
「私、お金もってないけれどね」
猛は、その言葉で、姿勢を正して立ち止まり、ポケットからスマートフォンを取り出し右手で操作して……。
「へーい、へ――い」
「猛、近い、一メートル、離れて」
スーパーについて、大好きなアイスを二つ、しょうがないな、猛の買ってあげよう。これが良い! 勝手に、二つのアイスを決めて、猛にわたして、私はレジの外で待つ。レジに並ぶ猛は、アイスが嬉しそうには見えなかった、寒いのかな? 雨あがったのにね、アイス。おいしいのに。
私達は、二人でアイスを食べながら……。猛の家に向かった。帰りの途中、猛は、財布とスマートフォンの重さを計っているように思えた。
そのような事は、観て見ぬふりをするのが、私である! 声には出さない無いけれど……(今日は、猛、ありがとう)



