私の父は、警視庁サイバーテロ課の偉い人、正義感の塊で、尊敬しているお父さんが大好き。母は、若いころは局アナを務めていて、今は局の偉い人。二人ともめったに家には帰ってこない……美人譲りは、母からなのだろう。
お隣の、十文字さんとは、私と猛が、産まれたころからの幼馴染で、猛とは赤ちゃんの時も、幼稚園、小学校、中学校、そして……今の高校も一緒。
猛のお父さんは、市役所勤めで、お母さんが、私を実の娘のように、猛と一緒にを育ててくれた。猛のお父さんもとても、やさしい。実の娘のように接してくれる。猛の部屋は二階で、私の家の部屋と梯子をかければ、歩いてでも侵入できる。
朝、夜、土日、ご飯等は、猛のお母さん、私はおばさんと呼んでいるが、おばさんと呼ぶには失礼なほど、綺麗な方に、お世話になっている。時折、母の若いころの話を聞く、売れっ子のニュースキャスターであり、とある事件がきっかけで、両親は出会ったらしい。中学校の卒業式も、猛の両親が来てくれた。
お父さんは今とても、忙しく、帰るに帰れないとの事。正義の味方は大変だ。私の家と猛の家は、一メートルも離れている。玄関を一つにくっつけても良いのではと思うくらい。玄関が一つなら、両方の鍵をかける必要などないのだから。家族旅行の記憶は無く、写真も残っていないが、十文字家族との旅行は幾度かあり、写真に残っている、もちろん覚えている。中学校からは旅行はないのだけれどね……。
私は、超が付くほどの容姿端麗であるが、それは母譲りであるから、当たり前といえば、当たり前、曲がった事は大嫌い、尊敬しているのは英雄に映る警視庁の父。
とてもやさしく、理解のある父が大好き。いっぽうの猛はというと、勉強も出来て、とにかく強い、幼いころから私の父の勧めで、極真空手に入り、中学校では三連覇。学校では、ダラダラしているのだが……。
猛は、中学校から、私の後ろを必ず歩くようになった、私から命じたわけではないのに、今となっては、何故だろうか、私が命令するように……あれ? どうしてだろうか? ……ま、良いか、ムフフ。
「ただいまー」
大きな声で、いつものように、靴を片足ずつ、上下左右に振って、『ドタン』靴箱にぶち当たる、靴。もう片方も……。
「おかえりなさい、藍、猛、ご飯も、お風呂も準備できているわよ」
リビングの奥から、おばさんの元気な声が聞こえる。家に帰ってきたと実感する瞬間。
「ありがとう! おばさん! おじゃましまーす」
「靴位揃えろよ、藍! ったく、学校と家だとまるっきり、違うのだから」
しゃがみ込みながら、下駄箱の下に入ってしまった、私の靴に手を伸ばして、玄関に這い蹲って靴を取り上げていた。もちろん、私は見て、見ぬふりを決め込み
「なんか言ったの?」
「……別に?」
猛が、何かしてくれているのは、ごぞごぞしている音でわかったのだが、猛を置いて、私は一直線に、扉の開いてある、大きなリビングの入り口に右手を添えて、頭だけ中を覗きこみ
「おばさん、先に猛の部屋に行ってきます」
まずは、必ず、元気な顔をおばさんに見せる、これは日課だ。そして少しだけ、背伸びをして、台所を覗き込んで、晩御飯は何かな? と胸を膨らませる。
「はーい、時間になったら、降りて来てね」
猛がやっと、玄関からリビングに来たが、リビングには入れずに
「わかりました ほら、猛! 行くよ」
「……誰の家なのだ?」
右側の手すりをつかまりながら、猛の部屋を目指す、段飛ばして、駆け上がって行った。一番奥の部屋まで我先に、走ってすすみ、右から左に、ドーンと扉を開く。左右を見渡して相変わらず、整理整頓が行き届いている、ゴミなどもない、猛の部屋。男の部屋はこんなに綺麗なものなのかしら? ちょこんと、テレビの前のソファーに腰を掛けて
「これよね、シリーズ物の事件簿、これ観たら、ご飯にしよう って猛どこよ、なんで机に座って、教科書開いているの? こっち、こっち?」
猛の目を見ることもなく、右手だけを後ろに持って行き、上下に振る。
「藍、勉強しないのか?」
猛が、ソファーに腰かけてきた。
「良いじゃない、後で猛が答えを教えてくれれば……猛、部活やらないの?」
「だって、高校に空手部ねーんだもの」
(そうだった、私達の高校には空手部は無かった。だって、それはね)
「私に合わせて、進路変更したのだものね、猛は、一流進学校に行けたのに……私と登校できるのだから、感謝しなさいよ」
猛の目を見て、微笑みながら、ちょっとだけ、猛の鼻先を摘まみたくなって、手を伸ばすと
「……しょうがないだろうな、藍、一人だと何やらかすか、わからないし、オイ、聞いているのか?」
私は秒速を超えて、耳に手を当てて、何か言ったのかしら的なポーズをとり、唇をニヤリとさせながら
「……それより、これ見よう!」
リモコンを操作し、事件ものを二人で見る。これが日課! 猛と見ると楽しいのだけれど、どうしてだろうか? 不思議なのよね?
「――この人、怪しいわね、絶対、この人よ」
「違うな、それは、フリ、当て、その隣の女性だよ 罪を犯した者は、一度現場に戻る、それも人目に付くほどに、そして確認してから、静かに姿を消す、細い路地を逃げて消えていく」
「嘘でしょ?」
「――――本当だった、猛凄い! じゃーご飯にしようね?」
扉を開くと、なんとも私を元気にさせる、いい匂い、左手で手すりにつかまりながら、下に降りて行った。何か猛が言っているが、聞こえません。
「片付けろ、藍! ったくぅ」
「遅い、遅い、猛、見て見て!」
私は、早く食べたいので、フォークとナイフを『パチン、パチン』と重ね合わせて音を立てていた。
「いただきまーす、わーい! ステーキだ!」
鉄板がゆらゆらと湯気が立ち上ると同時に、大きく鼻で匂いを吸い込む、にんにく醤油ダレに視線を落とすと、私のお腹は、早く、早くとせがんでいた。
「猛のは、相変わらず、レアなのね?」
「藍のがっちり焼いたも、悪くはないが、肉のうまみは、やはりレア! これ一点」
猛のお肉を覗き込むと、明らかに、赤い、いや真っ赤、じゅわーと何かがでてきていた。
「お腹こわさないの?」
「キチンと火を通してあれば、大丈夫、表面温度だけで、滅菌できる」
スマートフォンを私に差し出し、なるほど、七十五度から八十五度で一,二分、って難しいわね。どうして、猛は知っているかしら、私が何を聞いても、知らない事が無いのよね、不思議ね。ずっと一緒なのに……。
「へー、そうなのね、今度、おばさん、私も、猛と同じでお願いします。ポテトがおいしい、コーンがこれまた、タマラナイ! おばさん、ご飯、おかわり! 猛、ポテトよこしなさいよ! ほうれん草も忘れずに!」
「はい、はい、藍、わかりました、まっていてね、本当に仲良くしていて、写真撮ろうね、猛、スマートフォンも、藍も、はい、撮るわよ」
私は椅子を猛の隣にくっつけて、私のスマートフォンを渡した。
「ごちそうさまでした、おばさん、おいしかったです」
猛と二人で、洗い物。手際が良いのは、猛、油を綺麗に素早く落としていく、私は布巾で拭く専門。これで、おしまいと……お茶を持って行かなくては
「――猛、一緒にお風呂入ろうか?」
ブゥーと、お茶を吹き出す、もう、汚いな、かわいい、猛ったら。ムフフ……。
「馬鹿な事言ってないで、先に入ってこい」
脱衣所の扉から、頭だけを、ちょこっとだけ出して、廊下から部屋に戻ろうとしている猛の背中に向かってゆっくりと声を投げた
「えーつまんないの? ……」
わざと、少しだけ、脱衣所の扉を開けたまま、お風呂に入った。鼻歌を歌いながらも、少しだけ、開いた扉から覗いてみたが、猛は来ない……。
「……こいつ、馬鹿なのか?」
猛の小声が聞こえてきた、ま、良いか、鼻歌を続けていた。
「――遅くなっちゃった、猛送って行って?」
猛は、ゆっくりと首を右に傾けてから
「はぁ? 玄関あけたら、一メートルで、藍の家だろうが」
「一メートルもあるのよ、ついてきなさい」
やったー! 猛に送ってもらう、これも日課、ムフフ
「へ――い、へ――ーい」
「返事は1回、はい! でしょう」
夜の空気は少し冷たいけれど、隣を歩く猛の気配がそれを打ち消す。
「おばさん、帰ります。いつも、ありがとうございます、お邪魔しました」
一分の経過していない、私の家。
「はい、ご苦労様、猛、おやすみ! 明日も起こしに来てよね? 聞いているの、わかったかしら?」
「……おやすみなさい」
猛は私が家に入るまで、いつも玄関にいる。部屋の明かりがつくと、家に戻るのだ。
たった一メートルの距離。けれど、私の胸の奥では、今日一番の「デレ」が静かに弾けていた。
お隣の、十文字さんとは、私と猛が、産まれたころからの幼馴染で、猛とは赤ちゃんの時も、幼稚園、小学校、中学校、そして……今の高校も一緒。
猛のお父さんは、市役所勤めで、お母さんが、私を実の娘のように、猛と一緒にを育ててくれた。猛のお父さんもとても、やさしい。実の娘のように接してくれる。猛の部屋は二階で、私の家の部屋と梯子をかければ、歩いてでも侵入できる。
朝、夜、土日、ご飯等は、猛のお母さん、私はおばさんと呼んでいるが、おばさんと呼ぶには失礼なほど、綺麗な方に、お世話になっている。時折、母の若いころの話を聞く、売れっ子のニュースキャスターであり、とある事件がきっかけで、両親は出会ったらしい。中学校の卒業式も、猛の両親が来てくれた。
お父さんは今とても、忙しく、帰るに帰れないとの事。正義の味方は大変だ。私の家と猛の家は、一メートルも離れている。玄関を一つにくっつけても良いのではと思うくらい。玄関が一つなら、両方の鍵をかける必要などないのだから。家族旅行の記憶は無く、写真も残っていないが、十文字家族との旅行は幾度かあり、写真に残っている、もちろん覚えている。中学校からは旅行はないのだけれどね……。
私は、超が付くほどの容姿端麗であるが、それは母譲りであるから、当たり前といえば、当たり前、曲がった事は大嫌い、尊敬しているのは英雄に映る警視庁の父。
とてもやさしく、理解のある父が大好き。いっぽうの猛はというと、勉強も出来て、とにかく強い、幼いころから私の父の勧めで、極真空手に入り、中学校では三連覇。学校では、ダラダラしているのだが……。
猛は、中学校から、私の後ろを必ず歩くようになった、私から命じたわけではないのに、今となっては、何故だろうか、私が命令するように……あれ? どうしてだろうか? ……ま、良いか、ムフフ。
「ただいまー」
大きな声で、いつものように、靴を片足ずつ、上下左右に振って、『ドタン』靴箱にぶち当たる、靴。もう片方も……。
「おかえりなさい、藍、猛、ご飯も、お風呂も準備できているわよ」
リビングの奥から、おばさんの元気な声が聞こえる。家に帰ってきたと実感する瞬間。
「ありがとう! おばさん! おじゃましまーす」
「靴位揃えろよ、藍! ったく、学校と家だとまるっきり、違うのだから」
しゃがみ込みながら、下駄箱の下に入ってしまった、私の靴に手を伸ばして、玄関に這い蹲って靴を取り上げていた。もちろん、私は見て、見ぬふりを決め込み
「なんか言ったの?」
「……別に?」
猛が、何かしてくれているのは、ごぞごぞしている音でわかったのだが、猛を置いて、私は一直線に、扉の開いてある、大きなリビングの入り口に右手を添えて、頭だけ中を覗きこみ
「おばさん、先に猛の部屋に行ってきます」
まずは、必ず、元気な顔をおばさんに見せる、これは日課だ。そして少しだけ、背伸びをして、台所を覗き込んで、晩御飯は何かな? と胸を膨らませる。
「はーい、時間になったら、降りて来てね」
猛がやっと、玄関からリビングに来たが、リビングには入れずに
「わかりました ほら、猛! 行くよ」
「……誰の家なのだ?」
右側の手すりをつかまりながら、猛の部屋を目指す、段飛ばして、駆け上がって行った。一番奥の部屋まで我先に、走ってすすみ、右から左に、ドーンと扉を開く。左右を見渡して相変わらず、整理整頓が行き届いている、ゴミなどもない、猛の部屋。男の部屋はこんなに綺麗なものなのかしら? ちょこんと、テレビの前のソファーに腰を掛けて
「これよね、シリーズ物の事件簿、これ観たら、ご飯にしよう って猛どこよ、なんで机に座って、教科書開いているの? こっち、こっち?」
猛の目を見ることもなく、右手だけを後ろに持って行き、上下に振る。
「藍、勉強しないのか?」
猛が、ソファーに腰かけてきた。
「良いじゃない、後で猛が答えを教えてくれれば……猛、部活やらないの?」
「だって、高校に空手部ねーんだもの」
(そうだった、私達の高校には空手部は無かった。だって、それはね)
「私に合わせて、進路変更したのだものね、猛は、一流進学校に行けたのに……私と登校できるのだから、感謝しなさいよ」
猛の目を見て、微笑みながら、ちょっとだけ、猛の鼻先を摘まみたくなって、手を伸ばすと
「……しょうがないだろうな、藍、一人だと何やらかすか、わからないし、オイ、聞いているのか?」
私は秒速を超えて、耳に手を当てて、何か言ったのかしら的なポーズをとり、唇をニヤリとさせながら
「……それより、これ見よう!」
リモコンを操作し、事件ものを二人で見る。これが日課! 猛と見ると楽しいのだけれど、どうしてだろうか? 不思議なのよね?
「――この人、怪しいわね、絶対、この人よ」
「違うな、それは、フリ、当て、その隣の女性だよ 罪を犯した者は、一度現場に戻る、それも人目に付くほどに、そして確認してから、静かに姿を消す、細い路地を逃げて消えていく」
「嘘でしょ?」
「――――本当だった、猛凄い! じゃーご飯にしようね?」
扉を開くと、なんとも私を元気にさせる、いい匂い、左手で手すりにつかまりながら、下に降りて行った。何か猛が言っているが、聞こえません。
「片付けろ、藍! ったくぅ」
「遅い、遅い、猛、見て見て!」
私は、早く食べたいので、フォークとナイフを『パチン、パチン』と重ね合わせて音を立てていた。
「いただきまーす、わーい! ステーキだ!」
鉄板がゆらゆらと湯気が立ち上ると同時に、大きく鼻で匂いを吸い込む、にんにく醤油ダレに視線を落とすと、私のお腹は、早く、早くとせがんでいた。
「猛のは、相変わらず、レアなのね?」
「藍のがっちり焼いたも、悪くはないが、肉のうまみは、やはりレア! これ一点」
猛のお肉を覗き込むと、明らかに、赤い、いや真っ赤、じゅわーと何かがでてきていた。
「お腹こわさないの?」
「キチンと火を通してあれば、大丈夫、表面温度だけで、滅菌できる」
スマートフォンを私に差し出し、なるほど、七十五度から八十五度で一,二分、って難しいわね。どうして、猛は知っているかしら、私が何を聞いても、知らない事が無いのよね、不思議ね。ずっと一緒なのに……。
「へー、そうなのね、今度、おばさん、私も、猛と同じでお願いします。ポテトがおいしい、コーンがこれまた、タマラナイ! おばさん、ご飯、おかわり! 猛、ポテトよこしなさいよ! ほうれん草も忘れずに!」
「はい、はい、藍、わかりました、まっていてね、本当に仲良くしていて、写真撮ろうね、猛、スマートフォンも、藍も、はい、撮るわよ」
私は椅子を猛の隣にくっつけて、私のスマートフォンを渡した。
「ごちそうさまでした、おばさん、おいしかったです」
猛と二人で、洗い物。手際が良いのは、猛、油を綺麗に素早く落としていく、私は布巾で拭く専門。これで、おしまいと……お茶を持って行かなくては
「――猛、一緒にお風呂入ろうか?」
ブゥーと、お茶を吹き出す、もう、汚いな、かわいい、猛ったら。ムフフ……。
「馬鹿な事言ってないで、先に入ってこい」
脱衣所の扉から、頭だけを、ちょこっとだけ出して、廊下から部屋に戻ろうとしている猛の背中に向かってゆっくりと声を投げた
「えーつまんないの? ……」
わざと、少しだけ、脱衣所の扉を開けたまま、お風呂に入った。鼻歌を歌いながらも、少しだけ、開いた扉から覗いてみたが、猛は来ない……。
「……こいつ、馬鹿なのか?」
猛の小声が聞こえてきた、ま、良いか、鼻歌を続けていた。
「――遅くなっちゃった、猛送って行って?」
猛は、ゆっくりと首を右に傾けてから
「はぁ? 玄関あけたら、一メートルで、藍の家だろうが」
「一メートルもあるのよ、ついてきなさい」
やったー! 猛に送ってもらう、これも日課、ムフフ
「へ――い、へ――ーい」
「返事は1回、はい! でしょう」
夜の空気は少し冷たいけれど、隣を歩く猛の気配がそれを打ち消す。
「おばさん、帰ります。いつも、ありがとうございます、お邪魔しました」
一分の経過していない、私の家。
「はい、ご苦労様、猛、おやすみ! 明日も起こしに来てよね? 聞いているの、わかったかしら?」
「……おやすみなさい」
猛は私が家に入るまで、いつも玄関にいる。部屋の明かりがつくと、家に戻るのだ。
たった一メートルの距離。けれど、私の胸の奥では、今日一番の「デレ」が静かに弾けていた。



