青信号は変わらない

 連日の朝のイライラを回避するために、今日はなんと、一時間も早く学校に向かう事にした。猛はめんどくさそうに、していたので、朝の挨拶を込めて、背中を軽く「ドン」あれ、猛、フェンスに激突 これで起きたかしら?
 雲一つない青空、朝日が気持ち良い、散歩しているおじいちゃん、おばあちゃん、ネコを散歩している人がいる。ネコって散歩するのかしら、一時間早いだけで、世界が変わって見える。振り返って、笑顔で
「行ってきまーす」
「猛、遅い! 一メートル離れなさい」
「へ――い、へ――い」
 ドスン! 藍のカバンが猛の胸を直撃……。
 駅までの信号待ちもスイスイと進み、車通りも少ない、サラリーマンは時計を見ながら、走って行った。改札をくぐり、エスカレーターも空いていてホームもガラガラ。私は席に座ったのだけれど、猛は私の前に立ちっぱなしであった。席空いているのに……。

 最寄り駅について、歩いて行くことにした。予定時刻のバスを待つのは、時間の無駄。バス停には誰も居ない。コンビニエンスストアもガラガラで、外から見てもサラリーマンを数えられるほどであった。信号待ちもすんなりと、通り過ぎ、学校が近づいてきた。新緑のトンネルをくぐりながら、正門に到着した。
「流石に、早く登校した分、誰もいないわね」
 ゆっくりと丁寧に、左手を添えて、右手でゆっくりと下駄箱を開け、上履きに履き替えた。猛も準備が出来たようなので、階段をあがり、教室の扉を静かに開け、そのまま窓際に行き、気持ちの良い空気を入れた。カーテンが少しだけ揺れている。空をみあげると、青空、今日はとても気持ちが良い。ゆっくりと右手で席を引いて、座った。
 どれくらいたったのだろう、外を眺めている間に、次々に、生徒が入ってくる。教室に入ってきたとたん、何故か皆さん、無言になっていた。静かな朝は、高校生になったのだと感じさせてくれた、はずだった、そう、はずだった……。

 後から来た男子生徒が、何かの小さな紙袋を、『ほれー!』とゴミ箱に投げ込むが、入らない。そのまま着席。ゴミは明らかに、床に一つ取り残されている。教室は静まり返っており、強めの風でカーテンが靡いてる、窓の外は、雲一つ無い、青空であった。景色は、変わりが無かったのだが……一秒……五秒……三十秒、一分……二分。誰もが、静まり返って席についていた。

――私は、ゆっくりと椅子を力を入れて、後ろに、あえて音が床を引きずるように、引いて、左足、右足を開きながら、視線には黒板、姿勢を正して、両手を肩の位置から、机を目指して、『バシン』と振り下ろした。シャーペンのノックの音すら私の放った音でかき消され教室から、響き続ける音。首を右に傾けながら、後ろを向いて、全校生徒に聞こえるかのように
「コラぁ――――! 男子! ゴミを、今すぐ、片づけなさい!」
 椅子からころげ落ちる音が、いくつか聞こえ、教室は、一瞬で時計の秒針が止まったのである。
 男子生徒は、小声で、
「こえー」
 二人が、めんどくさそうに立ち上がり、私を見て、目が合うと、視線を逸らした。拾い上げゴミ箱に捨てる男子、それを見ていた、女子生徒の『クスっ』と笑い声が続いている。男子生徒は、反省している様子はまるっきり、無く。めんどくさそうに、席に着いた。捨てたのだから良いのだろう、めんどくせーなーと、肘をついて、不機嫌そうな顔で、視線で私を見ていた。私は間違っていない、正しい事をおこなっている、ただそれだけなのだから……。

――キンコンカンコーン チャイムの音
 休み時間も終わり、授業が開始だ、先生が教室に入って来た。一方の大声で笑いながら、男子生徒達は後ろ側の席で、振り向きながら、くっちゃべっている。
「はーい、チャイムなったわよ、静かに、ねー、静かにしましょうねー」
 先生の言う事を聞かない、男子生徒はお構いなしで、大笑いしながら、『まじ? それ? やばくねぇ?』話に花が咲いている状態。

――私は、再び、椅子を右手で、後ろに下げて、視線をあげ、視界には黒板と先生、先生と目があった。ゆっくりと、右回りで、後ろを振り返り、大声で
「いい加減にしなさい、チャイムなったでしょう!」
「先生の言う事が、聞こえないのかしら?」
「え?」
 振り返り、正面の先生を見る男子生徒、女子生徒も――静まり返る。

 授業は静粛に始まった。私は一生懸命、ノートを取るフリを全力でしていた。先生から答えられる人と、促されたが、私は下を向きながら、ノートに文字を、適当に並べていると、先生は、では、端の十文字君を名指しした。
 猛はめんどくさそうに、立ち上がり、回答を日本語と、英語とフランス語でそれぞれ答えた。答えを聞いた先生も、動くことが出来ず、ポカーンとしてしまい、我に返ったのか
「すごいですね、十文字君、素晴らしい、先生にも教えて欲しいな」
 と照れ笑い。猛はめんどくさそうに、ゆっくりと椅子に座っていた。私はそれを見て、ドイツ語とロシア語、韓国語、中国語が足らないと、心の中でつぶやきながら、口元がにニヤリとしてしまった。

 次の休み時間、流石に静かであった。チャイムがなり、新人の女性先生が教室に入って来た。大学を卒業したばかりのような、仕立ての新しいスーツを着た若い先生。男子生徒は、あれ俺達と変わらないじゃないか等の声が聞こえて来て、
 先生の話を聞こうとはせずに、先ほどの話の続きなのか、後ろを振り返って、くっちゃべっている男子

 カーテンは動かず、窓は締めきったままである、めんどくさくなったので、両足のふくらはぎに力をこめて、勢い良く椅子を後ろに下げたら、後ろの席の机に『バチン』とあたり、両手をバン! と机を叩いて、立ち上がり両腕を腰に当てて、振り返り
「先生が話しているのだから、静かにしていただけませんか?」

 教室は、時計の秒針が明らかに、「カチ、カチ」と聞こえるように、静まり返っていた。

 新任の女先生も私の態度に、びっくりしてしまった様子で、オロオロしている様子であった。
「あの、先生もそれほど、気にはしていないですから……」
 私はその一言に、顔を左に傾けて、眉をひそめて、
「気にしてください、先生、わかりましたか?」
「ぐすん、はい、わかりました、黒岩さん……」
 時計の秒針の音だけが聞こえるなか、男子生徒からは、どっちが先生だよと、陰口が聞こえていた。