「──百合子先輩……!」
あれから数時間。夜も更け、コンビニ周辺を包む闇が一層深くなった頃。
自転車で車道の真ん中を走ってきた小柄なポニーテールの少女は、蹲る百合子を見つけるなり、自転車をコンビニの隅へ放り出すようにして駆け寄ってきた。
「悪いな垂瓦、こんな時間に」
少し前、ガッツが最終手段だと言って電話をかけた相手は、どうやら彼女だったらしい。
面影はあるが、少し大人びた顔立ち。
中学一年生の頃も百合子を慕い、かなみからも妹のように可愛がられていた後輩。
垂瓦凛。
今は、百合子のルームメイトでもある。
まさかこんな形で再会するとは。
やあ、久しぶり。そう小さく投げかけた言葉は、彼女の怒声にかき消された。
「西川先輩、またですか! また百合子先輩にあの話をしたんですか! どうして⁉︎」
五年前では考えられない強い口調と、険しい表情だった。
どちらかと言えば、少しおっとりしたタイプだった気がする。けれど彼女も、この数年で色々と変わったようだ。
自分より何倍も大柄なガッツを睨みつけ、百合子を庇うように前へ立つ。
その必死な姿は、チワワがドーベルマンに噛みつこうとしているようにも見えた。
「最近、安定してたんですよ! なんでそんな余計なことするんですか!」
「違う、誤解だ垂瓦。落ち着け」
「落ち着けって……百合子先輩をこんなにしておいて、よく言えますね!」
「だから、俺じゃねえよ。お前がそうやってると、また百合子が騒ぎだすだろ」
「西川先輩じゃないなら、誰が……!」
怒り心頭だった彼女は、そこでようやく僕の存在に気づいたらしい。
刺すような疑いの眼差しがこちらへ向く。
最初は、誰だこいつ、という顔をしていた。
けれどすぐに、彼女は両手で口元を覆った。
「まさか、東先輩」
あれから数時間。夜も更け、コンビニ周辺を包む闇が一層深くなった頃。
自転車で車道の真ん中を走ってきた小柄なポニーテールの少女は、蹲る百合子を見つけるなり、自転車をコンビニの隅へ放り出すようにして駆け寄ってきた。
「悪いな垂瓦、こんな時間に」
少し前、ガッツが最終手段だと言って電話をかけた相手は、どうやら彼女だったらしい。
面影はあるが、少し大人びた顔立ち。
中学一年生の頃も百合子を慕い、かなみからも妹のように可愛がられていた後輩。
垂瓦凛。
今は、百合子のルームメイトでもある。
まさかこんな形で再会するとは。
やあ、久しぶり。そう小さく投げかけた言葉は、彼女の怒声にかき消された。
「西川先輩、またですか! また百合子先輩にあの話をしたんですか! どうして⁉︎」
五年前では考えられない強い口調と、険しい表情だった。
どちらかと言えば、少しおっとりしたタイプだった気がする。けれど彼女も、この数年で色々と変わったようだ。
自分より何倍も大柄なガッツを睨みつけ、百合子を庇うように前へ立つ。
その必死な姿は、チワワがドーベルマンに噛みつこうとしているようにも見えた。
「最近、安定してたんですよ! なんでそんな余計なことするんですか!」
「違う、誤解だ垂瓦。落ち着け」
「落ち着けって……百合子先輩をこんなにしておいて、よく言えますね!」
「だから、俺じゃねえよ。お前がそうやってると、また百合子が騒ぎだすだろ」
「西川先輩じゃないなら、誰が……!」
怒り心頭だった彼女は、そこでようやく僕の存在に気づいたらしい。
刺すような疑いの眼差しがこちらへ向く。
最初は、誰だこいつ、という顔をしていた。
けれどすぐに、彼女は両手で口元を覆った。
「まさか、東先輩」

