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あの夜。百合子は震える声で言った。
ありえない思いつきを。
どこか高揚し、危ない橋を渡ろうとするような顔つきで。
「いや、……もとにしてって、右京先輩、どういう」
「そのまんまの意味」
「そのまんま……って、この、これをですか?」
問い質《ただ》した左門と斜丸は、驚ききった顔で百合子を見ていた。
それは二人だけじゃない。
ガッツも、かなみも、百合子の言うことには大抵従う垂瓦でさえ、ぽかんと口を開けている。
「今の、みんな見たでしょ。気持ち悪かったけど、凄いインパクトだったと思わない? あの出だし、普通じゃないわ。普通の感性してたら撮れない。あれこそ、あたしたちが求めていたインパクトそのものじゃないの? 心臓が止まりかける恐怖。あれを使えば勝てる。コンクールに十分通用する作品ができるはずよ」
息巻く百合子。けれど少しして、興奮なのか熱なのか、燃え上がっていたものが急に冷めたらしい。
「ごめん……いきなり何言ってんだ、って感じだよ、ね」
萎んだ声で、百合子はそう言った。
「確かに、いきなり何言ってんだって感じだよ」
ガッツが呆れ顔でその場に寝っ転がる。
「でも、インパクトあるってのは同意」
「……うん。私も、本物かと思うくらい心臓が止まりかけた。多分、あれが本当の恐怖っていうんだね」
続いて発言したのはかなみだった。
まだ顔を引きつらせながらも、考えるように視線を落としている。
それを後輩たちは、不安そうに見守っていた。
あの謎めいた不気味な映像をリメイクするなんて、馬鹿げている。そう思っていたのだろう。
けれど。
「リメイク、案外いいかもしれない」
「俺も、やってみる価値はなくはないと思う」
かなみとガッツの遅れた賛成に、三人の後輩たちはこれ以上ないほど口をあんぐりと開けた。

