荊棘―おどろ―

 コンビニ店員のおっさんが、カウンターの向こうで思わず身を乗り出したのが見えた。

「そんなことして、かなみが喜ぶと思うか! 今のお前をかなみが見たら、なんて思うか想像したことあんのか!」

 ガッツは百合子の両肩を掴み、揺さぶる。

「かなみ……っ」

 止まったかに見えた百合子の目から、また大粒の涙が滲んだ。

「かなみ……かなみい……ッ」

 そのまま、彼女は泣き崩れるようにしゃがみ込んだ。

「だったら、会わせてよおぉ! かなみに会わせて! かなみ! かなみ! かなみに会いたい、会いたいよぉ……!」

「ばかやろお!」

 ガッツの声が震える。

 こんな言葉、自分だって吐きたくないのだろう。
 それでも彼は、もう何度もそうしてきたように、目元を潤ませながら残酷な事実を告げた。

「かなみは──もういないんだよ!」

 かなみは。

「どこにもいないんだよ!」

 容赦なく真実を吐き出す。

「死んだんだよ、かなみはァ!」

 僕は下を向き、コンクリートの地面に転がった蝉の死骸を見つめる。

 そう。
 かなみは死んだ。

 五年前に。
 五年前の、この季節に。

 みんなは言う。
 事故で死んだから、仕方ないと。

 だけど、違う。
 そうじゃない。

 それは大人たちが、愚かな加害者たちを守るためにでっちあげた都合のいい嘘だ。
 彼女が死んだ理由は、事故なんかじゃない。

 その理由を、僕たちは知っている。

 何故知っているのか。
 見たからだ。

 彼女が死ぬ、その瞬間を。

 映画部の全員が。

 それがたとえ事故であったとしても、僕たちはそれを事故と呼んではいけない。
 事故と呼べるほど、僕らは被害者ではない。

 僕らは、加害者だ。