荊棘―おどろ―

 飲んだばかりのウーロン茶は、二人を追っている間に汗となり、あっというまに流れ出ていった。

 ガッツが足を止めたのは、商店街からも駅からも外れた暗く見通しの悪い道路に面している小さなコンビニの駐車場だった。

周囲にはトウモロコシ畑が広がり、人通りも車通りもほとんどない。ぬるい風だけが、汗まみれの僕らを嘲笑うように吹き抜けていく。

 駐車場の車止めに百合子を座らせたガッツの横で、僕は拾ってきたヒールを彼女の足元に置いた。

 暴力はよくないだろ。

 息を整えながら言うと、ガッツは気まずそうに顔を歪めた。

「あ……ああ、ごもっともだ。わりぃ。あとでみんなにも謝っとく」

 それ以上、追及するつもりはなかった。

 今、気にすべきは。

「う、あああッ、ああ、アアアアアアッ、う、ひぅ、あああああッ──」

 百合子はまだ泣いていた。
 いや、泣いているというより、嵐のように壊れていた。

 尋常じゃない震え方で、言葉にもならない悲鳴を吐き続けている。

「……お前、たまに気が利くやつだな」

 コンビニで買ったミネラルウォーターを彼女に差し出すと、ガッツがぽつりと言った。

 たまには余計だ。
 それに、黙って見ているわけにもいかない。

 カウンターの中にいる店員のおっさんが、さっきから僕らを凝視している。女の子一人を男二人で泣かせているように見えていたとしても、おかしくはない。

「ほら、百合子。水飲め。落ち着けって……」
「う、あ、アア……な、み……なみッ、かなみいいぃい──!」

 頭を掻き乱す百合子の腕を掴み、ガッツは困り果てた顔で彼女を宥める。

 けれど悲痛な声は静かな道路に響き渡り、それがまた彼女自身の感情を掻き立てていくようだった。

「百合子ッ‼︎」
「かなみッ! かなみいいィイイ‼︎ あたしっ、あたしがっ、あたしのせいでぇええ!」

 止めどなく流れていく涙が薄化粧を剥がし、目の下から濃い隈を浮かび上がらせる。

 錯乱した彼女を、僕もガッツもどうすることもできなかった。
 コンビニ店員の視線を感じながら、蒸し暑い駐車場で、ただ見守るしかない。

「……五年前からこうだよ。火がつくと手に負えなくてな」