荊棘―おどろ―

「──お、映画部ぅ、集まってるな」

 グラスを持った誰かが、ふらふらと近づいてきた。

「ひさびさだもんなぁ。そりゃ感傷にも浸りたくなるのもわかるけどさぁ、あんま暗くすんなよ。せっかくの飲みの席なんだから、ぱぁーっとやんなきゃさァ」

 明らかに出来上がった顔でケタケタ笑うそいつに、ガッツは露骨に顔をしかめた。

「お前、もう向こう行けよ」
「いやガッツ、なに怒ってんの。オレただテンション上げに来ただけだしィ」
「余計なお世話だっつの」

 酒が入ると絡みが面倒くさいタイプなのか、いくら追い払おうとしても、そいつは立ち去ろうとしなかった。

 なんだかまずい空気だ。
 そう思った時、ろくにろれつの回らない口で、そいつはぽそりと呟いた。

「ほんと、南野もここにいればよかったのになぁ」

 時間が、数瞬止まったようだった。

 ガッツの目の色が変わる。
 そして、膝の上で拳を握りしめていた百合子の顔から、すっと血の気が引いた。

「ま、事故だったんだもんな。仕方ねえよな、いくら考えて──」

 言い終わるより先に、ガッツがそいつを正面から殴り飛ばした。

 同時に、百合子が凄惨な悲鳴を上げた。

 痛みとか、驚きとか、そういうものではない。
 彼女の中で、かろうじて形を保っていた何かが、完全に壊れてしまったように、髪を掻き乱し、がたがた震えながら叫び続けている。

 座敷の中心で騒いでいた連中も、呆れ顔で宴会の終わりを待っていた店主も、瓶を片付けに来た若いスタッフも、みんな一斉に彼女に視線を集中させる。