荊棘―おどろ―

 ほとんどの同級生たちが反対側のテーブルへ移動し、中心で悪ふざけを始める中、彼女だけが食い荒らされた皿と空のコップが並ぶテーブルにぽつんと残っていた。

 真夏だというのにラベンダー色のカーディガンを羽織り、スキニーパンツに薄手のブラウス。茶色いショートボブに、控えめな化粧。

 ──誰だ。

 顔に出さないようにそう思っていたら、彼女は少し困ったように笑った。

「はは、やっぱり、わかんないか」

 その笑みに、少しだけ見覚えがあった。
 誰かの顔と重なりかけたところで、ガッツが先に答えを出した。

「百合子、お前食ってるか」

「うん、食べてるよ」
「あほ、嘘つくな。割り箸すら割ってないだろ。食えよな、割り勘だから損するぞ」

 こくんと頷いて、彼女は静かに手つかずの割り箸を割った。
 揚げ物が盛られていたであろう大皿から、敷かれていたサラダ菜をつまみ、草食動物みたいにしょりしょり食べ出す。

「お前なあ」
「いいでしょ……あたし、これが好きなのよ」

 呆れるガッツに、百合子は澄まし顔で答え、箸を置いた。

 面影がないわけではない。
 けれど、僕の記憶に残っている右京(うきょう)百合子と、今の彼女はだいぶ違っていた。

 中学時代の彼女は、眼鏡にセミロングの黒髪で、映画部の部長として僕らを引っ張っていた。活発で、勝気で、やかましくて、その性格のせいでガッツとは数え切れないほど衝突していた。

 それが今では、すっかり物静かな女性になっている。
 眼鏡を外し、髪も短くなり、口調まで柔らかい。

 ガッツとのやり取りも、見ていてまったくはらはらしない。

 どうやら中学卒業後、ガッツと百合子はこの近辺の高校に進み、今の大学も同じ場所の同じ学科らしい。

 え、なにそれ、付き合ってるの? と問いただしてみたが、そうではないらしい。
 残念だ。