荊棘―おどろ―

 そんな彼がこの時間に駅前にいるのも、不機嫌そうなのも、原因は全部僕にあった。

 行くと返事をしたあと、久々に連絡を取ったガッツは、遠路はるばる加美木まで戻ってくる僕を気遣って、駅まで迎えに来てくれることになっていた。

 なのに僕はバスを一本逃し、スマホのバッテリーも切らし、さらには彼が駅で待っていてくれると言っていたことまで忘れていた。

 そりゃ怒る。
 ごめん、僕が悪かった。

「まーいいよ。どーせいつもみたいにぼーっとしてたんだろ? お前、ほんっとそのまんま成長した感じだなァ! 相変わらずモノトーンな奴。ま、わかりやすくてよかったけどよ」

 黒いボタン付きシャツに黒のインナー、黒のズボンに黒のハイカットスニーカー。
 僕の黒尽くめを笑い、ガッツは五年前と変わらぬノリで肩を叩いた。

 丸坊主だった野球少年の豹変ぶりに一瞬ひやっとしたが、見た目が変わっても、彼はあの頃のままらしい。
 それに少し安堵する。

「どうだよ、久々の加美木は」

 うん、まあ。
 色々思うことはあるけど、それより君の変化の方に驚いた。

「そりゃまー、ちっとはしゃぎすぎちまってる感あるけどよ。若いからいいんだよ。お前は元気か?」

 聞かれて頷く。

「そうか、そりゃ良かった。まあ……俺もそこそこだよ。今日は百合子も来てるからな、話していけよ。しばらくは俺んとこ泊まるんだろ?」

 ああ、厄介になる。

「にしてもなんだよ、お前のその荷物。これからキャンプにでも行くつもりか?」

 暇つぶしの道具がいっぱい入っているからね。
 そう答えて、笑われた鞄を背負い直す。

「まーなんでもいいや。言っとくけど俺んちは狭いから、あんま文句言うなよ」

 それより、部屋が汚いか心配だと言ったら、軽く頭を叩かれた。