荊棘―おどろ―


 *  *  *


 目が醒めると、バスは山道をゆっくり下っていた。

 随分懐かしい夢を見たものだ。
 かれこれ五年前の、中学三年生の時の夢か。

 僕は座席に深く身を預けたまま、薄目を開けて辺りを見回す。

 東京から新幹線に乗り、そこからバスをいくつも乗り継いで六時間。
 都会の街並みは消え、窓の外には田畑と野山に囲まれた寂しい田舎町が広がっていた。とっぷりと日も暮れて、遠くにぽつぽつと静かな灯りが浮かんでいる。

 広い車内に乗客は僕一人だった。

 暇を持て余し、アプリを落としては消し、音楽にも飽き、動画サイトは山道で酔った。持ってきた文庫本は新幹線の中で読み終えている。
 しょうがないからイヤフォンをつけ、適当にニュースを聞き流していたら、呆気なく寝こけてしまったらしい。

 スマホは、いつの間にか電池切れになっていた。

 世界情勢、アイドルグループメンバーの引退宣言、食レポ、お笑い芸人の結婚報道、児童暴行で逮捕された教師、地方山林の死体遺棄事件、数日前から東京の足立区で起こっている猟奇的連続殺人事件の報道。犯人はいまだ逃走中。怯える周辺住民。がんばれ日本の警察。今日も今日とて、日本は薄暗い。

 夕方のネットニュースの内容をぼんやり思い出しながら、僕は鞄から充電器を探し、スマホに繋いだ。

 ブン、と振動してから、ロック画面に午後八時十二分の文字が浮かぶ。

 すっかり遅刻である。

 鞄から、よれた同窓会のハガキを取り出す。

 最初に見つけた時は、迷わずゴミ箱に捨てた。僕は、自分から同窓会に顔を出すタイプの人間ではない。旧友たちの輪に自然な顔で混ざる自信もなかった。

 けれどその直後、卒業後一度も会っていなかったガッツから連絡が入った。

 来い。

 短い命令に逆らえず、僕は捨てたハガキをゴミ袋の中から掘り返す羽目になった。

 そうして僕は、東京から故郷の加美木町へ戻ってきたのである。