完全に当て馬ポジションの俺。何故か同室の後輩にキスされた上、どうやらここは現実じゃないらしい

 目の前にはオレの好きな女の子と、泣き笑う彼女を慰めるように抱きしめるオレの親友。

 まさしく二人の想いが通じ合った瞬間だった。

 むせ返るほど甘い香りに包み込まれ、琥珀色に輝く金木犀が彼らを祝福している。

 だけどオレは、それをただ物陰から見ていることしかできなかった。

 噛み締めた唇も、
 握りしめたこぶしも、
 頬を伝うしょっぱさにも、

 誰にも気づかれることなく。


 ――ああ。

 オレの気持ちなんて、所詮こんなもんだよな。

 叶わない。

 どれだけ恋い焦がれていようが、どれだけ君を想っていようが、叶わない。あいつには、絶対に。

 重りでも飲み込んだみたいだ。胸が苦しくて、息がうまく吸えない。
 こんな人生に生きる意味なんてあんのかな?
 オレにはもう、生きがいすら失ったように辛くて辛くて、しょうがねえのに――。

 絶望が頭の中を埋め尽くす。噛んだ唇から鉄の味が滲む。甲高い耳鳴りに支配されて、オレが蹲りそうになったその時。

「――――!」
 
 誰かに体を引き寄せられて、何かを捲し立てられた。必死の形相に息を呑む。

 こいつは誰だ?
 いやたしか、オレと同室の……。

 でも、なんて言ってんのか全く聞こえない。
 口は動いてるのに、内容が分からない。

 そのまま抗議する間も無く顔が近づく。
 唇に柔らかいものが当たる感覚。

 その瞬間、パッと、目の前の男の顔が視認された。

「あれ……お前、そんな綺麗な顔してたのか……?」

「――っはは……、やっと、届いた……」

 さらりと揺れる黒髪に、青みがかった瞳を潤ませた男が、安心したように呟く。


 だけどオレが何か返す前に、視界は徐々に暗くなっていき、
 
 そして――

 意識は強制的に、途切れるようにシャットダウンされた。