憑依未満の夏葬

「ごめん。だって悔しい」

文句も言えない自分が恥ずかしかった。

『俺のために泣いてるの、可愛いな』

唇を喰むだけの、慰めるような優しいキスを繰り返す。
俺の汗と涙で、ヒューゴへ触れられる場所はあっという間に広がった。

抱き合ったまま、ふたりでベッドに吸い込まれるようにその身を横たえた。

「しよう? ねえ、して欲しい」

昨夜したばかりだというのに、もう一度ヒューゴが欲しくて堪らなかった。
ヒューゴはいいよと言う代わりにキスを深める。そして人を惑わせるような妖艶な笑みを見せた。

『先に少しちょーだい』

それが何を指すのかもう知っていた。
恥ずかしさなどどうでもいいほどヒューゴのことしか考えられなかった。

ズボンを脱ぐと膝を立て、その間にヒューゴの頭を受け入れる。

『あーもうこんなんにして……』

恍惚とした吐息がふーっとかけられ、立ち上がっていた自身がビクビクと震えた。
すぐにぬるりとした口内に吸い込まれ、甘美な刺激に首をのけ反らせた。

先端を舌先で転がされ、ヒューゴがひと口取り入れると変化が起き、身体を重ねられる状態になった。

『凪……』

硬かった声に安堵の色が滲む。その声だけで、泣けてくるほど切なさでいっぱいになった。

「ヒューゴが大切なんだ。どこにも行かないで」

葬儀屋の息子が葬送せずに霊魂を止まらせようとするなんて、聞いたことがない。
自分のしていることは間違っているかもと気が付いていても、気づき始めてしまった思いを無視することなんてできなかった。

『それって、どういう意味?』
わかっているくせに。

期待を含んだ目は、早く白状しろと言わんばかりだ。

触れるたびに、ヒューゴへの想いが強くなっていく。
それは長く一緒にいたから湧いた情だと思っていたが、消えてしまった時の喪失感はそんなものでは表せられないほどの痛みだった。

突然俺の前から消えるなんて許さない、そんな狂気じみた怒りさえ湧くほどに。
その感情はじわじわと大きくなって、次第に無視できなくなった。

「――好き」

その言葉を口にしてしまえば、もう二度と離れられなくなる気がした。
俺の為に成仏しないでほしい。なんて自分勝手なんだろう。

でも、もうこの気持ちを知らなかったころには戻れない。
ヒューゴがいない世界は耐えられない。

「好きだよヒューゴ。ずっと俺だけのヒューゴでいて」

本音を吐き出したらぼろぼろと大粒の涙が溢れる。ヒューゴ相手だとどうしてこんなに泣けてくるんだ。

『泣いてる凪も可愛い』
「ひゃ……」

尻を撫でられ、昨夜ヒューゴが埋まっていた箇所を刺激されビクンと腰を跳ねさせた。

「あっ……そこっ、や……」

入口付近を何度も何度も摩られ、頼りない声がでてしまう。

『俺もだ……凪より大切なものなんてない』

ヒューゴは吐息交じりにうっとりと俺を見た。
昨夜も散々弄られたからだろうか、そうほぐさなくとも柔らかく痛みはなかった。ヒューゴが張りつめたものをあてがい、眉根を寄せながら腰を進める。

『――凪、……凪、俺の凪だ』

最奥まで一気に貫かれ、内部から押し広げられる感覚に「うぁっ」と声が漏れた。
緩やかな腰の動きとともに繰り返される言葉に、どんどん溺れていく。

涙も、汗も唾液もヒューゴに取り込まれ、俺は思考がぐちゃぐちゃになった。
互いの荒い呼吸と、ベッドの軋む音だけが響く。

壊れたように何度も達して、そのたびにヒューゴがうまそうに啜った。恍惚に味わう姿は怖くも見える。

『っ……もう、い、く』

激しい揺さぶりと同時に、ヒューゴの主張が増した。

「あ……ああっ……」

理性を失った抽送に、俺はまた熱が上がってくる。

達しようとするその時、俺の物を取り込みすぎて瞳までも青く光らせたヒューゴは、蠱惑的な顔で俺を見下ろした。

『触れた瞬間から、正気なんて失くしていたんだ俺は』

体内で熱い迸りを感じた瞬間、急に頭の中にゴウゴウと強い風が吹いたような感覚があった。
瞼が痙攣し、ぐるんと目がまわる。

貧血の時のような急激な吐き気が込み上げ、視界が真っ暗になり、そのまま意識が遠のいた。