よっす、と白いベッドに横たわった辰巳はいつもの調子で挨拶した。
「見てこれ。満身創痍に見えるけど、めちゃくちゃ回復が早いんだって。何で助かったのか分からないって医者も言ってた」
「たっちゃん……たっちゃん!」
ぺらぺらと喋り倒そうとする辰巳に向かって、陽向は嬉しさを隠そうともせずに駆け寄る。
「いつの間にか十日ぐらい経ってんだって? びっくりしたわマジで。ちなみにその間に何かあった?」
陽向はつい先ほど経験した内容を説明する。あぐりを呼び出し、一緒に地蔵がある場所まで行った事。途中で買った道具で綺麗に掃除した事。あぐりに触れられ、彼が見て、聞いてしまった一部の記憶を垣間見た事。
話し終わると、辰巳は横になったまま黙り込んでしまった。気になる内容でもあったのだろうか。陽向が声を掛けようとするよりも先に、彼が口を開いた。
「お前さ、強くなったよな」
ぽつりと溢されたその言葉は、いたって平板な響きだ。
「いや、強くなったというか、最初から強かったんだ。昔からそうだった。芯がしっかりしてて、思いやりがあって……」
「たっちゃん?」
「俺なんかが守るなんて、おこがましい話だった」
辰巳はまだ不自由であろう片腕で涙を隠すように顔を覆う。
「ごめん、陽向。俺、思い上がってた。俺の方が強いから、お前を守らなきゃって。それが俺の使命なんだって、ずっと思ってた。でも違った。俺の勝手な思い込みだった」
「……」
「本当にごめん。でも、好きなんだ。どうしようもないんだ。俺はもう、お前がいないと生きていけないんだよ」
陽向の前で初めて涙を流しながら、辰巳は告白した。彼の涙とその言葉に陽向の心は少なからずかき乱されているが、自分がどうしたいかはもう決まっている。
「たっちゃん。僕、たっちゃんがいたから今生きてるんだよ。たっちゃんがいないと駄目なのは、僕の方なんだ」
「陽向……」
「僕、たっちゃんが好きだよ」
陽向の返事に、辰巳は今度こそ声を上げて泣いた。
様子を見に来た看護師が訝しげにこちらを見る。何があったんですかと聞かれ、慌てて誤魔化している内に陽向の瞳からも溢れそうになっていた涙は完全に引っ込んでしまった。


