久しぶりに、一週間は両親が家にいる事になった。悠心の様子を見た二人は少々面食らったみたいだが、酒を飲まなくなっている点に関してはむしろ安心したようだ。
父と母に、彼の世話は自分たちがするから陽向はまずしっかり休みなさい、アルバイトも休んで、ともっともな事を言われたが、だからといってぐっすり眠ったりゆっくり過ごしたりができるわけもない。辰巳の安否について連絡がないか、毎日のようにそわそわする日々。
辰巳の意識が戻ったという連絡を聞かないまま七日が過ぎる。ひとまず、父は赴任先に戻る事になった。母はもうしばらくこっちに残ると言う。
辰巳が入院して、何の音沙汰もなく十日が経った頃。陽向はついに居ても立ってもいられなくなった。
キッチンにいる母に少し出掛けると伝え、部屋に戻って財布と携帯だけを入れたボディバッグを手に取った。家を出る前に兄の部屋に向かい、ノックをしてから扉を開ける。
兄は横になって安らかな寝息を立てていた。不審な気配は特に感じられない。しかし陽向には確信があった。
「あぐり君」
眠ったままの兄の体がピクリと動く。
「少しだけでいいから、僕と一緒に来てほしい」
しばしの無音。だが数分もしない内に、小さな黒い影が兄の体から抜けていった。
悪寒と吐き気のような感覚が一瞬襲ってきて、陽向の背中に鳥肌が立つ。どうやら陽向の言葉を聞いてくれたようだ。
そのまま家を出て、十五分ほど歩く。青い看板のホームセンターに辿り着き、目当ての物を探す。石を磨くためのクロスに小さめのバケツ、タオル。そして併設している生花店で、仏様に供えるための花束をこしらえてもらった。
住宅街を抜け、英梨が通っている大学の近くを通り過ぎる。南に続く道を歩いている途中で公園に立ち寄り、水道からバケツに水を汲んだ。
大通りを逸れ、少し細い道に入る。目的の物は、数分もしない内に見つかった。


