七月の最終日、三十一日まではあと二十日前後あった。
陽向はスマホのカレンダーアプリにカウントダウンを打ち込んだ。毎日日付が変わる度に数字が一つ減っていくのを見るのは、むしろ正気を保つための儀式のようなものだ。残り日数を適当に過ごすより、一日一日はっきりと見えた方が覚悟ができて良い。少なくとも、そういう風に思っていたかった。
翌日の放課後。早速、辰巳と二人で地元の神社に向かった。最寄りの駅から徒歩七、八分前後の場所にある、小さな社だ。
幼い頃に何回か初詣で訪れた記憶があるが、境内の広場はこんなに狭かっただろうか。
「すみません、ご祈祷をお願いしたいのですが」
陽向が社務所の窓口で切り出すと、受付を担当しているらしい巫女さんが答える。
「祈祷内容はどちらをご希望ですか?」
「ええと、厄除けでお願いします」
「こちら、当日受付は行っておりませんので、事前予約となります。今からの申し込みですと、最短で来月の上旬になりますが」
「……すみません、出直してきます」
せっかく来たのだからということで本殿にお参りはしたが、どこか沈んだ気持ちで鳥居の外に出た。
「明日、別のところに行こう」
きっぱりと言い切って歩き出す辰巳の背中を、陽向は少し遅れて付いていった。
それからおよそ二週間。週末も使って合計六ヶ所を訪ねたが、どういうわけだかどこも上手くいかなかった。
高校からほど近い寺院、少し遠出したところの一の宮神宮、果ては街で噂の霊能者。行ける範囲のところは一通り回った。しかしどこも予約が取れなかったり、担当者が長期で不在だったり、今は個人の依頼は受けていないと言われて断られたり、結果は散々なものである。
最後は藁にも縋る思いで隣の市の大通り近くにある新興宗教系の施設に行ってみたのだが、丁寧に話を聞いてくれたうえで遠回しに何かしらの病院を受診する事を勧められた。
気が付けば一学期の終業式も終わり、夏休みが始まってしまっている。要するに、七月三十一日が確実に近付いてきているという意味だ。かつてこんなに憂鬱な夏休みがあっただろうか。
「やっぱさ、力技で迎え撃つしかないと思う」
「力技って?」
「その日は何がなんでも外に出ないようにして、物理的に車と接触しないようにする。お前の家は二階だから、いくら何でも外から車が突っ込んでくるって事もないだろ」
七月最終週の初め。陽向の家のリビングで論理表現Ⅱの課題をやりながら、辰巳がそんな提案をしてきた。
「確か最初の最初にも言ってたね。とにかく家から出ないようにしようって」
「お祓いで何とかできるんならそれが一番だったんだろうけどな。もうここまで来たら仕方ない」
腹を括った表情で言う辰巳に、陽向もなけなしの気力を奮い立たせた。


