悠心を病院に連れて行くと決めてから、すぐに最寄りの総合病院の予約を取った。土曜はどうしても予約が埋まりがちだというので、六月に入ってからの受診にはなってしまったが。
受診日の一週間前から「来週病院に行くよ」と兄に伝えてはいたが、彼は返事すらしない。虚ろな眼差しを壁に向けたまま、やはりぼんやりとしている。
金曜の夜。夕飯を持っていった際に念押しで「明日病院だからね」と伝えた時。部屋の外の廊下から物音がした。パタパタ、と微かではあるが、誰かが走っているような音が聞こえたのだ。
まるで、体重の軽い幼児が廊下を駆けているような。
陽向は一瞬ビクリと肩を震わせたが、恐る恐る部屋の外を覗いてみても何もない。
一体何なんだ。いい加減にしてくれ。
そう言いたい気持ちは存分にあったが、今はとにかく兄の状態について詳しく知る事が重要だ。


