その日の夜、もっちーからメッセージが届いた。
『熱出たー。明日いけないから二人で楽しんでくれ。俺も映画行きたかったー』
もっちーからそんなメッセージが来たのは二十時だった。
(おぉ、まじか。合宿疲れかなぁ)
『もっちーお疲れ。しっかり休めよ。ちゃんとネタバレしてやるからな』と、
すぐに三人のトークグループにメッセージを送ったが、朝になっても二人からの返事はない。
もっちーは仕方ないとして、隼人からも返事がないのは少し気になっていた。既読もついていない。
「七時十四分……まだ寝てるか……」
約束は十三時に駅前の赤いモニュメントの前。
俺はもう一度布団にもぐりこんで、そっと目を閉じた。
「まる!母さんが朝飯食わんのかってキレてんぞ!」
勢いよくあいた扉の音と兄貴の声で目が覚めた。
眼鏡を探すもすぐに見つけられなくて、仕方なく目を細めてスマホを見た。
(十時四十分……、え、十時??)
少し寝るはずだったのに三時間以上も寝こけていたことに驚いた。
「朝飯はテーブルの上。昼は食べるなら自分でどうにかしろ。
母さんは友達とランチ。俺はゼミのやつらと出かけるから。ちゃんと勉強しろよ。
でないと、高二で数学ついていけんくなるぞ。
お前は器用なタイプじゃないんだからな。わかったな?」
早口で簡潔に要件と嫌味を伝えると、
兄貴はまた勢いよくバタンと扉を閉めて出ていった。
(お兄様の言うとおりですよ、っとにさ……)
静けさが舞い戻った部屋でボーっとしていると、スマホのアプリにメッセージが届いた。
俺はもう一度眼鏡を探し、指紋がついたレンズ越しに白いもやがかかった画面を見る。
『もっちー、お疲れ!熱大丈夫か?雪丸と同じく、
盛大にネタバレしてやるからしっかり休めよ』
心配と笑いが混ざった隼人らしいメッセージに思わず笑みが零れた。
すぐにもっちーからも『配信始まったら一緒に見て!それまで耐えて!』と返事が来ていた。
そろそろ起きて準備を始めようと、両手足をグーと伸ばして体の血液を循環させた。
不思議と目も冴えてくる。ベッドから降りようとした瞬間、またメッセージが届いた。
(え、個別……?)
通知画面の名前を見て、心臓がピクッと跳ねた。すぐさまアプリを開く。
『雪丸、おはよ。もっちー残念だったね。
俺と二人でデートになるけど大丈夫?OKなら約束通り、モニュメントの前で待ってるね』
個別に届いた隼人からのメッセージに、俺は思わずうずくまった。
(え、デートって……てか、なんか……もう……もう!)
隼人って、こういうことをさらっと言う。
そういうところが、一軍男子すぎる。
そもそも、もっちーだって隠れ一軍だったし、
そのせいで二年になってから、俺はずっとドキドキしっぱなしだ。



