窓際の特等席、秘密のエール




視聴覚準備室の窓から見える空は、厚い雲に覆われていた。
トランペットを膝の上に置いたまま、窓の向こうで陸上部が練習をしているのを眺めていた。

明日から始まる地区予選を前に、リレーのバトン練習が始まっていた。
トラックのあちこちで選手たちが声を掛け合いながら走っている。
長い脚でトラックを駆け抜ける隼人の姿は、遠くから見てもすぐに分かる。

いつもなら隼人を見ると勝手に体がトランペットを吹く体制になるのに、
今日はなぜか指が動かない。ロングトーンだって全然音程が定まらない。
息がぶれて、音の芯が揺れる。

「カッコいい……」

 揺れる黒髪にひときわ目立つ黄色いスパイク。
バトンをもらって加速していくその姿に、胸がぎゅっと締め付けられる。

 ――試合、見に行きたいな……

 そんなこと、できるはずないのに願わずにはいられなかった。