夜明けを知らないきみへ

それなのに…。



「…違う」



小さな呟き声がこぼれ落ちた。


何が違うのか自分でもうまくわからない。


街はたしかに普通だった。


普通のはずなのに、胸の奥が騒つく。


例えば、車の音がしない。


例えば、どのビルの看板も少し文字が欠けている。


例えば、空には月しかない。


例えば、こんなに明るい街なのに、人の気配だけが薄い。


まるで、“誰かの記憶”だけを集めて作った街みたいだった。