ソウルズ


 
 
………バンッ!!
 
 
思い切り…玄関のドアを開くと、いつもいつだって顔を会わせる度に、昔みたいに素直になれずに憎まれ口を交わしている。
 
 
本当は、そんな事なんて思ってすらいないのに……… 
 
バカのくせに、バカだからか不器用で
馴れ合いなんて真面目に、
嫌っているから……………………


悪い噂ばかり立てられている不良みたいなヤツ………
 


 
けれど……………
 
 
 
…………………
 
 

…………………………………そんなんだから…



………………………………………私…



一瞬で止めどない想いが脳裏を駆け巡る。


 
………けれど、彼女にとってみればかけがえのない特別な存在でもある…幼馴染みの影人の屋敷が赤く赤く鮮血の如き色をして燃えているのであった。
 
 
光透波は思わず屋敷の方向へ向けて思いっきり叫んでいたのである!
 
 
「影人のバカ~~~ぁッ!! 
私よりも先に死ぬ気かよぉ~ッ!!
 
ひとりにしたら許さないんだから~~~~…………」 

 
すう~っと脱力し…その場にへなへなと、へたり込みのだった。
 
 
しばらくの間…呆然としたまま、息を吹き返したように彼女は涙を浮かべながら屋敷の方向へ力無くふらふらと走りだした。
 

 
 
一方、一足早く屋敷に到着していた楓は…影蔵じいちゃん自慢の盆栽がパチパチと燃え盛る廃屋と化した屋敷の中に駆け足で転がり込むように入っていくのだった。
 
 
…すると、横目に見えたのは…
 
 
悪鬼の如く変わり果てた姿と化した影人と筋骨隆々な怪しい大男。
 
 
あちこちに倒れている奇妙な黒装束の男達もいた。
 
 
目まぐるしい光景に視線を奪われつつも、必死にガゥが教える場所を目指して駆け足で歩みを進める。
 

 
裏庭の辺りに、血だらけで倒れている影蔵じいちゃんと松竹梅のトリオが人工呼吸や蘇生法を必死で行なっていたのだった。
 
 
「………え、楓ちゃん!
 
な…な、なんで、こんな時に、ここへ来るのよぉ~!! 

早く逃げなさいッ…あなたまで巻き込まれちゃうじゃないの…
 
死んじゃうかも知れないのよぉ~ッ!!」
 
 
突然…現れた楓の存在に驚く松っつんが弱々しく、しかし、今はそれどころじゃないと言う風に話すのであった。
 

 
「楓さん………それは!
 
その輝き…もしや影人お坊っちゃまや会長と同じ能力ですね…」
 
 
三人の中で…竹りんだけは霊感が人一倍強いらしく、ガゥの姿と楓のオーラがみえているらしいのだった。 
 

「はい、そうです…
 
とにかく…ここは私に任せて下さい!
 
私の能力の説明なら後で、ゆっくりしますから……… 

それじゃ~…いっくよぉ~ッ、ガゥ!!」
 
 
楓はガゥに能力の発動を促すのであった。
 

 
「OK~!
 
ヘヘ~ン…オレっちに任せておきな…」
 
 
その期待に精一杯、答えようとするガゥである。
 
 
楓は両手を胸の辺りで組み合わせてクルリと大きく回転しながら…こう叫んだ。 
 
そのポーズにつられて…ガゥも一緒に回転している。 
 
楓の胸が…たぷんと悩ましげに揺れた!!
 
 
彼女の不安気な心を表現するかのようにである。
 

 
「アロマポット!!!…癒しの薫風!!」
 

 
楓の身体を取り巻くように虹色の光がキラキラと輝くのだった。
 
 
その輝きで…涼しげな風が巻き起こる。
 
 
まるで…どこかの花畑にでも訪れたかのような香りの渦。
 
 
生命力に溢れ、力強く鮮烈ではあるが…決して、不快感は無い。
 
 
むせ返るような多種多様な花の香りが、周囲の緊迫した空気を変えさせ、三人の鼻孔を優しく撫でていく…

そのうちに体力の回復を促し、穏やかな気持ちを冷静さを取り戻させた。
 

 
「ヒーリングクラウド!! 
 (癒しを呼ぶ雨雲)
     &
ペリドットケアシャワー!! 
(奇跡的な回復をもたらす恵みの雨)」
 
 
今度は輝きを放つ風を影蔵の真上に投げると…同時に新たな掛け声で何か始めだしたのだった。
 

 
それは…小さな虹色の雨雲となり神秘的な透き通った緑色の雨を降らせるのだった。
 
 
ポツリ…ポツポツとペリドットみたいに輝く雨粒が影蔵の身体を優しく濡らす度に、青白かった顔色に…さぁーっと赤みが差してきた。
 
 
ぴくん…ぴくんと硬直しかかっていた身体が動き始めると…突如として、ガバッと状態を起こしたのだった!!
 
 
「………ッぶふぁ!!
 
ゲ…ゲホ…ゲホッ!
 
………ッふ~ぅ、危ない、危ない、もうちっとで死ぬとこじゃったなぁ~
 
へへ…お花畑が見えちゃったよ…」
 
 
影蔵じいちゃんは息を吹き返し…再び、ドクン、ドクンと脈動する心臓と軽口を叩く余裕まである程に回復していたのであった。
 

 
あれほど…ズタズタに斬り裂かれた傷口も…みるみると塞がっていくのである。 
 

「ふむふむ~。
 
おぬし…なかなかにやりおるのぅ。」
 
 
ガゥに目配せしながら…影蔵が言った。
 
 
ガゥは誇らしげに尻尾をフリフリ…照れ臭そうに喜んでいるのであった。
 



 
「よしよし、お前さんにも危ない目に遇わせたなぁ~ッ………」
 
 
影蔵の傍には…再び出現した蝶ちゃんの頭を優しく撫でながら、話し掛けるのだった。
 
 
『ぷ~~~ッ!
 
んもぅ~~~ッ、ほ~んと笑い事じゃないんだからぁ~ッ!』
 
 
リンゴみたいに真っ赤に上気させた、ほっぺたを冬眠間近の餌を貯えたリスみたいに…ぷ~っと、ぷっくりふくらませながら蝶ちゃんは可愛いらしくぷりぷりと怒るのであった。
 


…………………………………

 
 
「ん、後は…影人か………」 

 
やれやれ…ようやく、一段落ついたのかと呟く。
 
 
次に訪れる波乱を察知しながら呟いた影蔵であった。
 
 
影蔵が呟く一瞬に…皆が視線を再び影人へと向けると彼は月光を背にして上空高く、虚空に佇んでいたのだった。
 

 
 
ギュオオオオオ………………………ッッ!!!!!! 

 
 
虚空を斬り裂くように急降下していく影人の姿が見えたのだった。
 
 
そんな時…そこへ茫然自失な表情で姉の姿を探す、光透波が屋敷に到着していたのである。