文化祭の後夜祭で付き合い始めてから数週間が経った放課後
俺__御子柴周は誰もいない夕暮れの渡り廊下で隣を歩く蓮野碧の手をぎゅっと握りしめていた
(…おい待て、俺たち付き合って結構経つよな? なのに未だに手を繋ぐだけでお互い茹でダコみたいに真っ赤になってんの初心すぎんだろ これじゃ進展が遅すぎて碧に飽きられるっ?!)
心の中で過去最高密度の毒を吐き散らしながらも胸の奥は甘酸っぱい緊張感で破裂しそうだった
今日こそは恋人らしい「次のステップ」に進むと決めていたのだ
渡り廊下の突き当たり、あのすべての始まりである校舎の曲がり角へと差し掛かる
オレンジ色の西光が碧のもっさりした前髪と黒ぶち眼鏡を優しく照らしていた
「…なぁ、碧」
「はい? どうしたんですか、先輩」
悠馬は足を止め、メガネをクイッと直してふにゃりと無自覚な極上スマイルを向けてきた
その無防備な顔を見た瞬間、俺の覚悟が決まった
俺は繋いでいた手をグッと引っ張り、碧の身体を壁際へと引き寄せた
ドン、と小さな音が響く
あの日失敗した壁ドンとは違う、本当の恋人としての距離
わずか数センチの至近距離でお互いの吐息が触れ合う
「せ、先輩…っ?」
遮るもののない碧の瞳が驚きと熱を帯びて激しく揺れた
彼の白い耳の裏がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのが丸見えだ
(クソ、緊張で心臓がうるせぇ…っ でもここで引いたら王子の名が廃る!)
「…うるさい、黙ってろ」
俺は真っ赤になった顔を隠すように少し怒ったような低い声を絞り出した
「…お前が可愛すぎるのが悪いんだからな …目、閉じろ」
「あ…」
碧は一瞬目を丸くし、それから観念したように長いまつ毛を震わせながらそっと目を閉じた
眼鏡の奥、無防備に晒された彼の少し薄い唇
俺は意を決してゆっくりと顔を近づけ__
ちゅ
触れるだけの静かで短いキスをした
世界が一瞬で静まり返ったような気がした
触れ合った唇からお互いの狂いそうなほどの体温がダイレクトに脳へと突き抜けていく
「…っ」
俺はバッと顔を引き離すとあまりの気恥ずかしさに口元を片手で覆い、その場にしゃがみ込みそうになった
顔が耳の裏が、全身の皮膚が沸騰して10000度くらいになっている確信がある
「な、何なんだよお前…!なんでそんなに素直に目ぇ閉じてんだよ!照れるだろ大馬鹿野郎ーーー!!!」
心の中の毒舌を通り越してただのパニックになった本音が叫びとなって飛び出した
すると唇を押さえて真っ赤になっていた碧が前髪の隙間から、本当に幸せそうに目を細めて笑ったのだ
「…だって、僕も先輩とキスしたかったんだもん …ふふ、先輩とのちゅー、イチゴの味がします」
「う、うるせぇぇぇーーー!!! 保湿対策だよバカ!!!」
完璧な王子様だったはずの御子柴周は付き合って初めてのキスでまたしても最強のモブ男子に完敗を喫していた
だけどもう一度だけ触れたいと思ってしまうくらい、その味は夕暮れの曲がり角のなかでどうしようもなく甘かった
俺__御子柴周は誰もいない夕暮れの渡り廊下で隣を歩く蓮野碧の手をぎゅっと握りしめていた
(…おい待て、俺たち付き合って結構経つよな? なのに未だに手を繋ぐだけでお互い茹でダコみたいに真っ赤になってんの初心すぎんだろ これじゃ進展が遅すぎて碧に飽きられるっ?!)
心の中で過去最高密度の毒を吐き散らしながらも胸の奥は甘酸っぱい緊張感で破裂しそうだった
今日こそは恋人らしい「次のステップ」に進むと決めていたのだ
渡り廊下の突き当たり、あのすべての始まりである校舎の曲がり角へと差し掛かる
オレンジ色の西光が碧のもっさりした前髪と黒ぶち眼鏡を優しく照らしていた
「…なぁ、碧」
「はい? どうしたんですか、先輩」
悠馬は足を止め、メガネをクイッと直してふにゃりと無自覚な極上スマイルを向けてきた
その無防備な顔を見た瞬間、俺の覚悟が決まった
俺は繋いでいた手をグッと引っ張り、碧の身体を壁際へと引き寄せた
ドン、と小さな音が響く
あの日失敗した壁ドンとは違う、本当の恋人としての距離
わずか数センチの至近距離でお互いの吐息が触れ合う
「せ、先輩…っ?」
遮るもののない碧の瞳が驚きと熱を帯びて激しく揺れた
彼の白い耳の裏がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのが丸見えだ
(クソ、緊張で心臓がうるせぇ…っ でもここで引いたら王子の名が廃る!)
「…うるさい、黙ってろ」
俺は真っ赤になった顔を隠すように少し怒ったような低い声を絞り出した
「…お前が可愛すぎるのが悪いんだからな …目、閉じろ」
「あ…」
碧は一瞬目を丸くし、それから観念したように長いまつ毛を震わせながらそっと目を閉じた
眼鏡の奥、無防備に晒された彼の少し薄い唇
俺は意を決してゆっくりと顔を近づけ__
ちゅ
触れるだけの静かで短いキスをした
世界が一瞬で静まり返ったような気がした
触れ合った唇からお互いの狂いそうなほどの体温がダイレクトに脳へと突き抜けていく
「…っ」
俺はバッと顔を引き離すとあまりの気恥ずかしさに口元を片手で覆い、その場にしゃがみ込みそうになった
顔が耳の裏が、全身の皮膚が沸騰して10000度くらいになっている確信がある
「な、何なんだよお前…!なんでそんなに素直に目ぇ閉じてんだよ!照れるだろ大馬鹿野郎ーーー!!!」
心の中の毒舌を通り越してただのパニックになった本音が叫びとなって飛び出した
すると唇を押さえて真っ赤になっていた碧が前髪の隙間から、本当に幸せそうに目を細めて笑ったのだ
「…だって、僕も先輩とキスしたかったんだもん …ふふ、先輩とのちゅー、イチゴの味がします」
「う、うるせぇぇぇーーー!!! 保湿対策だよバカ!!!」
完璧な王子様だったはずの御子柴周は付き合って初めてのキスでまたしても最強のモブ男子に完敗を喫していた
だけどもう一度だけ触れたいと思ってしまうくらい、その味は夕暮れの曲がり角のなかでどうしようもなく甘かった



