「…はぁ、時間は待ってくれない、か まじで明日なんか来なきゃいいのに」
三月、肌寒い風が吹く放課後の図書室
俺は窓際の席で明日行う『卒業式』の答辞が書かれた巻紙を眺めながら心の中で特大の溜息をついていた
完璧な王子様・御子柴周としての学園生活もいよいよ明日で終わりを迎える
これからは大学という新しいステージに進むわけだが今の俺の胸を占めているのは輝かしい未来への希望なんかでは一ミリもなかった
(明日で卒業 …ってことは明日からあいつと毎日学校で会えなくなるんだぞ? は? 耐えられるわけねぇだろ あの前髪もっさり天然タラシの補給が途絶えたら俺の精神構造が3日で更地になるわチクショウ!)
心の中でいつも通り大暴走の毒を吐き散らしながらも胸の奥は寂しさでギュウッと締め付けられていた
俺は3年、碧は2年
あと一年、あいつは一人でこの学校に残ることになる
あのイケメン化した碧に俺のいない隙を狙って変な不細工どもが群がったらどうしよう__そんな焦燥感がずっと胸に渦巻いていたのだ
パサと静かに本のページがめくられる音がした
正面の席を見るとお馴染みの黒ぶち眼鏡をかけ、前髪をもっさりと下ろした碧が静かに本を読んでいた
いつもの、俺だけの地味なモブの姿だ。
「…碧」
「はい? 先輩、どうしたんですか?」
碧は本から顔を上げ、メガネをクイッと直してふにゃりと優しく笑いかけてきた
その無防備な笑顔を見るだけで俺の心臓はやっぱりトクンと甘く跳ね上がる
「お前さ…明日で俺、卒業だけど 寂しくねぇの?」
俺は真っ赤になった顔を答辞の巻紙で半分隠しながら少し意地悪なトーンで(だけど本気で不安そうに)問いかけた
すると碧は驚いたように目を丸くし、それから少し寂しそうに視線を落とした
長い前髪の隙間から見える彼のまつ毛がかすかに震えている
「寂しいに決まってますよ …明日からお昼休みに一緒にご飯食べられないし、図書室の片付けも一人だし、先輩のあの綺麗な顔を見られないなんて…僕、明日が来るのがすごく怖いです」
碧はきゅっとジャージの胸元を握りしめた
「でも…僕、先輩に心配かけたくないから 先輩は学園の王子様だから明日の答辞も誰よりも格好良く読んでほしいんです」
真っ直ぐに健気な想いを伝えてくる碧
その瞳には一ミリの邪念もない
ただひたすらに俺の未来を応援しようとしてくれている
(…あーあ、ほんとにどこまで俺を狂わせれば気が済むんだよ、お前は)
俺の心の中の毒舌マシーンはあいつの健気さの前で完全に心地よく溶かされていた
俺はテーブルの下でそっと碧の大きな、少し骨張った手を掴み、指を絡ませる『恋人繋ぎ』で強く握りしめた
「…バカ、心配なんかしてねぇよ」
「先輩…?」
「お前がこの学校にいる限り、俺は毎日でもここに迎えに来るからな 大学の授業が終わったらソッコーでこの図書室に突撃してやるよ だから他の不細工(※周基準)にその笑顔見せたり、他の奴を一本背負いしたりすんなよ 分かった?」
俺が真っ赤な顔のまま、いつもの傲慢な独占欲(猛毒)を吐き出すと碧は一瞬目を丸くし、それから涙を浮かべながら本当に幸せそうに微笑んだ
「はい! 毎日待ってます、僕の王子様」
低くて心地いい、世界で一番大好きな声
窓の外では春の訪れを告げる桜の蕾が明日のお祝いを待つように静かに膨らんでいた
三月、肌寒い風が吹く放課後の図書室
俺は窓際の席で明日行う『卒業式』の答辞が書かれた巻紙を眺めながら心の中で特大の溜息をついていた
完璧な王子様・御子柴周としての学園生活もいよいよ明日で終わりを迎える
これからは大学という新しいステージに進むわけだが今の俺の胸を占めているのは輝かしい未来への希望なんかでは一ミリもなかった
(明日で卒業 …ってことは明日からあいつと毎日学校で会えなくなるんだぞ? は? 耐えられるわけねぇだろ あの前髪もっさり天然タラシの補給が途絶えたら俺の精神構造が3日で更地になるわチクショウ!)
心の中でいつも通り大暴走の毒を吐き散らしながらも胸の奥は寂しさでギュウッと締め付けられていた
俺は3年、碧は2年
あと一年、あいつは一人でこの学校に残ることになる
あのイケメン化した碧に俺のいない隙を狙って変な不細工どもが群がったらどうしよう__そんな焦燥感がずっと胸に渦巻いていたのだ
パサと静かに本のページがめくられる音がした
正面の席を見るとお馴染みの黒ぶち眼鏡をかけ、前髪をもっさりと下ろした碧が静かに本を読んでいた
いつもの、俺だけの地味なモブの姿だ。
「…碧」
「はい? 先輩、どうしたんですか?」
碧は本から顔を上げ、メガネをクイッと直してふにゃりと優しく笑いかけてきた
その無防備な笑顔を見るだけで俺の心臓はやっぱりトクンと甘く跳ね上がる
「お前さ…明日で俺、卒業だけど 寂しくねぇの?」
俺は真っ赤になった顔を答辞の巻紙で半分隠しながら少し意地悪なトーンで(だけど本気で不安そうに)問いかけた
すると碧は驚いたように目を丸くし、それから少し寂しそうに視線を落とした
長い前髪の隙間から見える彼のまつ毛がかすかに震えている
「寂しいに決まってますよ …明日からお昼休みに一緒にご飯食べられないし、図書室の片付けも一人だし、先輩のあの綺麗な顔を見られないなんて…僕、明日が来るのがすごく怖いです」
碧はきゅっとジャージの胸元を握りしめた
「でも…僕、先輩に心配かけたくないから 先輩は学園の王子様だから明日の答辞も誰よりも格好良く読んでほしいんです」
真っ直ぐに健気な想いを伝えてくる碧
その瞳には一ミリの邪念もない
ただひたすらに俺の未来を応援しようとしてくれている
(…あーあ、ほんとにどこまで俺を狂わせれば気が済むんだよ、お前は)
俺の心の中の毒舌マシーンはあいつの健気さの前で完全に心地よく溶かされていた
俺はテーブルの下でそっと碧の大きな、少し骨張った手を掴み、指を絡ませる『恋人繋ぎ』で強く握りしめた
「…バカ、心配なんかしてねぇよ」
「先輩…?」
「お前がこの学校にいる限り、俺は毎日でもここに迎えに来るからな 大学の授業が終わったらソッコーでこの図書室に突撃してやるよ だから他の不細工(※周基準)にその笑顔見せたり、他の奴を一本背負いしたりすんなよ 分かった?」
俺が真っ赤な顔のまま、いつもの傲慢な独占欲(猛毒)を吐き出すと碧は一瞬目を丸くし、それから涙を浮かべながら本当に幸せそうに微笑んだ
「はい! 毎日待ってます、僕の王子様」
低くて心地いい、世界で一番大好きな声
窓の外では春の訪れを告げる桜の蕾が明日のお祝いを待つように静かに膨らんでいた



