(ジンクスだか伝説だか知らねぇがそんな都合のいい迷信に頼るなんて不細工どもの脳みそはメルヘンかよ)
文化祭の全プログラムが終了した夕方
俺は喧騒に包まれるグラウンドの隅で心の中で悪態をつきながらブレザーのポケットに両手を突っ込んでいた
我が校の文化祭には昔から有名なジンクスがある
『後夜祭のキャンプファイヤーの炎が燃え尽きる瞬間、一緒にフォークダンスを踊っていたペアは一生結ばれる』
(下らねぇ そんなことで恋が実るなら世の中の恋愛相談所は全部倒産だっつの だいたい、俺の隣をキープしていいのは世界でただ一人だけなんだよ 他の不細工が一人でも近づいてきたら俺の毒舌覇気で消し飛ばして__)
「あ、御子柴先輩 ここにいた」
ドクン
聞き慣れたその低音ボイスに俺の心臓は一瞬で跳ね上がった
振り返ると人混みをかき分けてジャージ姿の碧が走ってくるところだった
前髪をすっきりと上げ、コンタクトを入れたその端正な顔が夕暮れのグラウンドの光に照らされて信じられないくらい綺麗に輝いている
「蓮野… お前、片付けはいいのかよ」
「はいっ 急いで終わらせて先輩を探しに来たんです …もうすぐフォークダンスが始まっちゃうから」
碧は少し息を切らせながら真っ直ぐに俺の目を見つめてきた
グラウンドの中央では巨大な薪に火が灯され、パチパチと火の粉を散らしながらキャンプファイヤーが燃え上がり始めている
スピーカーからはお馴染みのフォークダンスのイントロが流れ出していた
周囲の生徒たちが次々とペアを作って輪を作り始める
そのなかで学校中の注目を集める「新・王子様」である碧の姿を見つけて周りの女子たちが「あ、蓮野くん!」「一緒に踊らない!?」とざわざわし始めた
それを見た瞬間、俺の胸の奥でどす黒い独占欲が限界突破して弾けた
(おい、そこの不細工ども 誰に話しかけてんだ こいつのその国宝級の顔面も手首一本背負いのフィジカルも全部俺のものなんだよ 指一本触れんじゃねぇよボケが)
「__おい、行くぞ」
俺はいつもの作ったロイヤルスマイルなんて完全に忘れ、地声の少し怒ったようなトーンで言い放つと碧の大きな、少し骨張った手首をガシッと掴んだ
「わっ、先輩…っ?」
驚く碧を強引に引っ張り、俺は群がる生徒たちの視線を鋭い目つきで蹴散らしながらキャンプファイヤーの一番近く、炎の熱気が肌に伝わってくる場所へと突進した
男同士でフォークダンスの輪に入るなんて客観的に見れば絶対に異常だし、明日からの学園の噂の的になるのは確実だ
だけど今の俺にはそんな周囲の評価なんてどうでもよかった
「先輩…あの、男同士で踊るの恥ずかしくないですか?」
輪の端っこで碧が耳の裏まで真っ赤にしながらだけど嬉しそうに俺の顔をのぞき込んできた
「恥ずかしいに決まってんだろ大馬鹿野郎!!」
俺は真っ赤になった顔をそっぽへ向けながら掴んでいた碧の手を今度は指と指を絡ませる『恋人繋ぎ』で強く握り直した
「でもお前が他の不細工と踊るのを見てる方が1億倍胸糞悪いんだよ …ほら、手、出すぞ」
「…っ、はい!」
碧は前髪のないその綺麗な顔をこれ以上ないほど輝かせてふにゃりと優しく笑った
炎の光が二人の影を大きくグラウンドに映し出す
ステップを踏むたびに衣服が擦れ合い、お互いの体温と狂いそうなほどの速さの心音がダイレクトに響き合う
(迷信なんか信じねぇ… だけどこの手を離す気は一ミリもねぇよ)
パチパチと燃え盛るキャンプファイヤーの炎の下
完璧な王子様だったはずの御子柴周は最強のモブ男子の手を強く握りしめ、自分たちの運命を完全に決定づけようとしていた
そしてこのダンスの直後、いよいよ物語の最大のクライマックスである「王子の告白」へと二人の時間が動き出す__
文化祭の全プログラムが終了した夕方
俺は喧騒に包まれるグラウンドの隅で心の中で悪態をつきながらブレザーのポケットに両手を突っ込んでいた
我が校の文化祭には昔から有名なジンクスがある
『後夜祭のキャンプファイヤーの炎が燃え尽きる瞬間、一緒にフォークダンスを踊っていたペアは一生結ばれる』
(下らねぇ そんなことで恋が実るなら世の中の恋愛相談所は全部倒産だっつの だいたい、俺の隣をキープしていいのは世界でただ一人だけなんだよ 他の不細工が一人でも近づいてきたら俺の毒舌覇気で消し飛ばして__)
「あ、御子柴先輩 ここにいた」
ドクン
聞き慣れたその低音ボイスに俺の心臓は一瞬で跳ね上がった
振り返ると人混みをかき分けてジャージ姿の碧が走ってくるところだった
前髪をすっきりと上げ、コンタクトを入れたその端正な顔が夕暮れのグラウンドの光に照らされて信じられないくらい綺麗に輝いている
「蓮野… お前、片付けはいいのかよ」
「はいっ 急いで終わらせて先輩を探しに来たんです …もうすぐフォークダンスが始まっちゃうから」
碧は少し息を切らせながら真っ直ぐに俺の目を見つめてきた
グラウンドの中央では巨大な薪に火が灯され、パチパチと火の粉を散らしながらキャンプファイヤーが燃え上がり始めている
スピーカーからはお馴染みのフォークダンスのイントロが流れ出していた
周囲の生徒たちが次々とペアを作って輪を作り始める
そのなかで学校中の注目を集める「新・王子様」である碧の姿を見つけて周りの女子たちが「あ、蓮野くん!」「一緒に踊らない!?」とざわざわし始めた
それを見た瞬間、俺の胸の奥でどす黒い独占欲が限界突破して弾けた
(おい、そこの不細工ども 誰に話しかけてんだ こいつのその国宝級の顔面も手首一本背負いのフィジカルも全部俺のものなんだよ 指一本触れんじゃねぇよボケが)
「__おい、行くぞ」
俺はいつもの作ったロイヤルスマイルなんて完全に忘れ、地声の少し怒ったようなトーンで言い放つと碧の大きな、少し骨張った手首をガシッと掴んだ
「わっ、先輩…っ?」
驚く碧を強引に引っ張り、俺は群がる生徒たちの視線を鋭い目つきで蹴散らしながらキャンプファイヤーの一番近く、炎の熱気が肌に伝わってくる場所へと突進した
男同士でフォークダンスの輪に入るなんて客観的に見れば絶対に異常だし、明日からの学園の噂の的になるのは確実だ
だけど今の俺にはそんな周囲の評価なんてどうでもよかった
「先輩…あの、男同士で踊るの恥ずかしくないですか?」
輪の端っこで碧が耳の裏まで真っ赤にしながらだけど嬉しそうに俺の顔をのぞき込んできた
「恥ずかしいに決まってんだろ大馬鹿野郎!!」
俺は真っ赤になった顔をそっぽへ向けながら掴んでいた碧の手を今度は指と指を絡ませる『恋人繋ぎ』で強く握り直した
「でもお前が他の不細工と踊るのを見てる方が1億倍胸糞悪いんだよ …ほら、手、出すぞ」
「…っ、はい!」
碧は前髪のないその綺麗な顔をこれ以上ないほど輝かせてふにゃりと優しく笑った
炎の光が二人の影を大きくグラウンドに映し出す
ステップを踏むたびに衣服が擦れ合い、お互いの体温と狂いそうなほどの速さの心音がダイレクトに響き合う
(迷信なんか信じねぇ… だけどこの手を離す気は一ミリもねぇよ)
パチパチと燃え盛るキャンプファイヤーの炎の下
完璧な王子様だったはずの御子柴周は最強のモブ男子の手を強く握りしめ、自分たちの運命を完全に決定づけようとしていた
そしてこのダンスの直後、いよいよ物語の最大のクライマックスである「王子の告白」へと二人の時間が動き出す__



