「お帰りなさいませ、お嬢様 本日はどのようなお茶をお淹れいたしましょうか?」
文化祭当日、3年A組の教室はアンティーク調のクロスや仕切りで飾られ、見事な『執事カフェ』へと変貌を遂げていた
俺はオーダーメイドの黒いタキシードに身を包み、髪も完璧にセットして本日も100点満点のロイヤルスマイルで接客をこなしている
「きゃあぁぁ! 御子柴先輩の執事姿、やばすぎる…っ!」
「写真撮ってもいいですか!? お願いします!」
(はいはい、お帰りなさいませ不細工ども(※周基準) 今日のお前らの顔面、ちょっと気合い入れすぎてチーク濃すぎだろ おてもやんかよ まぁ、俺のこのスマートかつ高貴な執事姿に見惚れるのは当然だけどな フハハ!)
心の中でいつも通り全開の猛毒を吐き散らしながらも俺の視線は無意識に教室の入り口のドアへと向かっていた
(…あいつ、まだ来ねぇな 2年の出し物は午前中で一段落するって言ってたのに クソ、他クラスの奴らに捕まってんじゃねぇだろうな 今のあいつは無駄にイケメンなんだから変な虫がついたら俺の毒舌マシーンがリアルで火を吹くぞ)
そんな焦燥感を抱えながら次のお客様を案内しようとした、その時だった
ガラガラ…
「あの…一人なんですけど空いてますか?」
入り口のドアから少し緊張したような、だけど低くて心地いいあの声が響いた
バッと振り返るとそこに立っていたのは白いワイシャツの襟を少し開け、前髪をすっきりと上げた碧だった
コンタクトレンズの奥の綺麗な二重の瞳が少し気恥ずかしそうに教室内を探している
その瞬間、教室内のお嬢様(女子生徒)たちから「嘘、2年の蓮野くんじゃん…!」「執事カフェに来たの!? やばい、私があの席の担当になりたい…っ!」と俺の時とはまた違う黄色い悲鳴が上がり始めた
(おい、そこの女子 何よだれ垂らしそうな顔して蓮野を見てんだよ あいつの席は__)
「__僕がご案内いたします、お嬢様 …あ、失礼、旦那様」
俺は他の執事(クラスメイト)を華麗な身のこなしで押しのけると最優先で碧の前に立ち、優雅に一礼した
顔には今日一番の、そして一ミリの嘘偽りもない本物の笑顔を浮かべて
「…遅いんだよ、バカ 待ちくたびれただろ」
すれ違いざま、周囲に聞こえないような低い素の声で耳元に囁く
「あ… すいません、先輩 すごく混んでて…」
碧はすぐに耳の裏まで真っ赤にして嬉しそうに目を細めた
俺は碧を教室の最奥、パーテーションで区切られた二人きりになれる半個室の席へと案内した
椅子をスマートに引き、碧が座るのを見届ける
テーブルを挟んでタキシード姿の俺とお洒落な私服(風の制服)の碧
「ご注文は何にいたしますか、旦那様? 当店自慢の紅茶と…俺の特別なおもてなし、なんていかがでしょう?」
メニューを差し出しながらあえて執事らしくキザにのぞき込む
すると碧は照れて視線を泳がせながらもまっすぐに俺の目を見つめ返してきた
「じゃあ…御子柴先輩の一番のオススメで」
「…ふん 分かったよ」
俺はバックヤードへ戻り、最高級の茶葉で淹れたアールグレイをトレイに乗せて再び悠馬の席へと戻った
カップを静かに置き、碧の正面の席に誰も見ていないのを確認して堂々と腰掛ける
「おい、サボるなよ御子柴ー!」と遠くからクラスメイトの声が聞こえたが「ちょっとVIPの接客中だから(心の中:うるせぇ不細工引っ込んでろ)」とスルーだ
碧は嬉しそうに紅茶を一口飲むと「美味しいです」とふにゃりと笑った
「先輩、その服…すごく格好いいです 本当にお城の王子様みたい」
「…お城の王子様は執事の服着ねぇよ …っていうかお前こそ何なんだよ 来る途中で色んな奴に話しかけられただろ お前、自分が今どれだけ目立ってるか分かってんのか?」
俺は少し不機嫌そうに(嫉妬混じりで)腕を組んだ
学校中が碧の美貌に狂わされている
それがどうしても面白くない
すると碧は紅茶のカップを置き、テーブル越しにそっと手を伸ばしてきた
その大きな、少し骨張った手のひらが俺のタキシードの袖をきゅっと優しく掴む
「たくさん話しかけられましたけど…全部断って先輩のところに来ました …僕にとっての王子様は世界で御子柴先輩だけですから」
遮るもののないその澄んだ瞳がまっすぐに、ダイレクトに俺の胸の奥を撃ち抜く
ドッゴォォォォン!!!
(おい…! 執事カフェの罠にハマってんのは完全に俺の方じゃねぇかぁぁぁーーー!!!)
顔が熱い
タキシードの襟元が苦しくなるくらい心臓が爆音で脈打ち始める
この男、本当に無自覚でとんでもないセリフを吐く
「…っ、お前、そういうの、反則…」
俺は真っ赤になった顔を片手で覆いながらぶっきらぼうに呟くのが精一杯だった
文化祭の喧騒のなか、半個室の小さな世界で真っ赤になって微笑み合う執事と旦那様
そしてこの楽しい時間の後、文化祭のフィナーレである「後夜祭」の伝説が二人をさらに劇的な結末へと導いていくことになる__
文化祭当日、3年A組の教室はアンティーク調のクロスや仕切りで飾られ、見事な『執事カフェ』へと変貌を遂げていた
俺はオーダーメイドの黒いタキシードに身を包み、髪も完璧にセットして本日も100点満点のロイヤルスマイルで接客をこなしている
「きゃあぁぁ! 御子柴先輩の執事姿、やばすぎる…っ!」
「写真撮ってもいいですか!? お願いします!」
(はいはい、お帰りなさいませ不細工ども(※周基準) 今日のお前らの顔面、ちょっと気合い入れすぎてチーク濃すぎだろ おてもやんかよ まぁ、俺のこのスマートかつ高貴な執事姿に見惚れるのは当然だけどな フハハ!)
心の中でいつも通り全開の猛毒を吐き散らしながらも俺の視線は無意識に教室の入り口のドアへと向かっていた
(…あいつ、まだ来ねぇな 2年の出し物は午前中で一段落するって言ってたのに クソ、他クラスの奴らに捕まってんじゃねぇだろうな 今のあいつは無駄にイケメンなんだから変な虫がついたら俺の毒舌マシーンがリアルで火を吹くぞ)
そんな焦燥感を抱えながら次のお客様を案内しようとした、その時だった
ガラガラ…
「あの…一人なんですけど空いてますか?」
入り口のドアから少し緊張したような、だけど低くて心地いいあの声が響いた
バッと振り返るとそこに立っていたのは白いワイシャツの襟を少し開け、前髪をすっきりと上げた碧だった
コンタクトレンズの奥の綺麗な二重の瞳が少し気恥ずかしそうに教室内を探している
その瞬間、教室内のお嬢様(女子生徒)たちから「嘘、2年の蓮野くんじゃん…!」「執事カフェに来たの!? やばい、私があの席の担当になりたい…っ!」と俺の時とはまた違う黄色い悲鳴が上がり始めた
(おい、そこの女子 何よだれ垂らしそうな顔して蓮野を見てんだよ あいつの席は__)
「__僕がご案内いたします、お嬢様 …あ、失礼、旦那様」
俺は他の執事(クラスメイト)を華麗な身のこなしで押しのけると最優先で碧の前に立ち、優雅に一礼した
顔には今日一番の、そして一ミリの嘘偽りもない本物の笑顔を浮かべて
「…遅いんだよ、バカ 待ちくたびれただろ」
すれ違いざま、周囲に聞こえないような低い素の声で耳元に囁く
「あ… すいません、先輩 すごく混んでて…」
碧はすぐに耳の裏まで真っ赤にして嬉しそうに目を細めた
俺は碧を教室の最奥、パーテーションで区切られた二人きりになれる半個室の席へと案内した
椅子をスマートに引き、碧が座るのを見届ける
テーブルを挟んでタキシード姿の俺とお洒落な私服(風の制服)の碧
「ご注文は何にいたしますか、旦那様? 当店自慢の紅茶と…俺の特別なおもてなし、なんていかがでしょう?」
メニューを差し出しながらあえて執事らしくキザにのぞき込む
すると碧は照れて視線を泳がせながらもまっすぐに俺の目を見つめ返してきた
「じゃあ…御子柴先輩の一番のオススメで」
「…ふん 分かったよ」
俺はバックヤードへ戻り、最高級の茶葉で淹れたアールグレイをトレイに乗せて再び悠馬の席へと戻った
カップを静かに置き、碧の正面の席に誰も見ていないのを確認して堂々と腰掛ける
「おい、サボるなよ御子柴ー!」と遠くからクラスメイトの声が聞こえたが「ちょっとVIPの接客中だから(心の中:うるせぇ不細工引っ込んでろ)」とスルーだ
碧は嬉しそうに紅茶を一口飲むと「美味しいです」とふにゃりと笑った
「先輩、その服…すごく格好いいです 本当にお城の王子様みたい」
「…お城の王子様は執事の服着ねぇよ …っていうかお前こそ何なんだよ 来る途中で色んな奴に話しかけられただろ お前、自分が今どれだけ目立ってるか分かってんのか?」
俺は少し不機嫌そうに(嫉妬混じりで)腕を組んだ
学校中が碧の美貌に狂わされている
それがどうしても面白くない
すると碧は紅茶のカップを置き、テーブル越しにそっと手を伸ばしてきた
その大きな、少し骨張った手のひらが俺のタキシードの袖をきゅっと優しく掴む
「たくさん話しかけられましたけど…全部断って先輩のところに来ました …僕にとっての王子様は世界で御子柴先輩だけですから」
遮るもののないその澄んだ瞳がまっすぐに、ダイレクトに俺の胸の奥を撃ち抜く
ドッゴォォォォン!!!
(おい…! 執事カフェの罠にハマってんのは完全に俺の方じゃねぇかぁぁぁーーー!!!)
顔が熱い
タキシードの襟元が苦しくなるくらい心臓が爆音で脈打ち始める
この男、本当に無自覚でとんでもないセリフを吐く
「…っ、お前、そういうの、反則…」
俺は真っ赤になった顔を片手で覆いながらぶっきらぼうに呟くのが精一杯だった
文化祭の喧騒のなか、半個室の小さな世界で真っ赤になって微笑み合う執事と旦那様
そしてこの楽しい時間の後、文化祭のフィナーレである「後夜祭」の伝説が二人をさらに劇的な結末へと導いていくことになる__



