ザァァァァ……と窓の外では激しい雨が世界を灰色に染めていた
放課後の図書室は雨宿り目的の生徒も帰ってしまい、不気味なほどの静寂に包まれている
「…クソ、俺は世界一のクズだ 生きてる価値がねぇ」
本棚の隙間で俺は自分の頭を何度も壁に打ち付けたい衝動に駆られていた
脳内は自分の吐いた最低なセリフのフラッシュバックで埋め尽くされ、毒舌マシーンは完全に自分自身を呪うために稼働している
(何が『他人にチヤホヤされるのが楽しいなら一生やってれば?』だ、アホか俺は! あいつが誰のために慣れないコンタクト入れて誰のために恥ずかしがりながら前髪上げたと思ってんだよ! 全部俺のためだろ! なのに何マウントとって冷たくしてんだよ、このプライドの塊のド不細工野郎ーー!!)
心の中で血を吐きながら大猛省し、俺は意を決して図書室の最奥、閉架書庫へと続く薄暗い通路へと向かった
あいつをこのまま帰らせるわけにはいかない
通路の突き当たり、古い資料が並ぶ棚の前に碧はぽつんと座っていた
その背中はあの裏庭で俺を守ってくれた時とは違ってひどく小さく、今にも消えてしまいそうに見えた
「…蓮野」
なるべく低く、作った王子様の声ではない「素の俺」の声で呼びかける
悠馬の身体がビクリと跳ねた
ゆっくりと振り返ったその顔を見た瞬間、俺の心臓は罪悪感でバラバラに砕け散りそうになった
前髪を上げたその綺麗な切れ長の瞳がうるうると涙で濡れていた
長いまつ毛の先が小刻みに震え、今にも大粒の涙がこぼれ落ちそうだ
「…御子柴、先輩…」
「蓮野、あのさ、さっきのは俺が完全に悪くて__」
謝ろうと一歩踏み出した俺を碧の悲痛な声が遮った
「…僕、御子柴先輩に嫌われるようなことしましたか…?」
「え…?」
「先輩の隣にいても恥ずかしくないようにって姉貴に頭下げて服選んでもらって痛いの我慢してコンタクト入れて… でもそしたら先輩、全然僕のこと見てくれなくなって声もすごく冷たくなって…」
悠馬の目からついに一筋の涙がポロリとこぼれ落ち、端正な頬を伝っていく
その涙は俺の胸の奥にどんな刃物よりも深く突き刺さった
「僕…他のみんなにどう思われたってそんなのどうでもいいんです ただ、先輩に『格好いい』って思ってもらいたくて先輩にだけ、見てほしかったのに… そんなに僕のこの格好、嫌でしたか…っ?」
きゅっと制服の胸元を握りしめ、ボロボロと涙を流す碧
学校中を熱狂させている「新・王子様」が俺の前でだけ、ただの傷ついた一人の男の子として泣いている
(違う…! 違うんだよ碧…!!)
俺はもう王子のプライドなんてどこかに投げ捨てていた
我慢できずに一歩踏み込み、泣いている悠馬の身体を強引に両腕で抱きしめた
「わっ…!? 先輩…っ?」
「嫌なわけねぇだろ大馬鹿野郎!!!」
胸の中で暴れる悠馬を逃がさないように強く、壊れそうなほど強く抱きしめる
「格好良すぎるんだよ! お前がその顔で学校歩くから女子も男子も全員お前のことばっかり見やがって…! 今までお前の良さに気づいてたのは俺だけだったのにみんなにお前を取られそうで俺、頭がおかしくなりそうだったんだよ!」
「え…」
腕の中の悠馬が驚きで固まるのが分かった
俺は悠馬の肩に顔を埋めたまま、耳まで真っ赤にしながら自分の最高に格好悪い本音をぶちまけ続けた
「お前が他の奴と楽しそうに話してるだけで嫉妬で死にそうになるんだよ! だから…お前を俺だけのモブにしておきたかったんだ… 冷たくして本当にごめん…っ」
静かな図書室に俺の必死な、情けない告白が響く
雨の音が二人の沈黙を優しく包み込んでいく
どれくらいそうしていただろうか
ふいに悠馬の長い腕が俺の背中にそっと回された
そして耳元であの心地いい低音ボイスが少し照れたようにだけど本当に嬉しそうに震えた
「…先輩、それって…僕を独り占めしたいってこと、ですか?」
「…あぁ、そうだよ 文句あるか」
俺が不機嫌そうに(照れ隠しで)答えると悠馬は胸元でふにゃりといつものあの無防備で優しい笑顔で笑ったのだった
初めての衝突を経て崩れ去ったすれ違い
しかしお互いの強すぎる想いをぶつけ合った二人はここから文化祭という物語の最終決戦へと向かっていく
周がずっと隠し続けてきた「本当の性格」をついに打ち明ける時が近づいていた
放課後の図書室は雨宿り目的の生徒も帰ってしまい、不気味なほどの静寂に包まれている
「…クソ、俺は世界一のクズだ 生きてる価値がねぇ」
本棚の隙間で俺は自分の頭を何度も壁に打ち付けたい衝動に駆られていた
脳内は自分の吐いた最低なセリフのフラッシュバックで埋め尽くされ、毒舌マシーンは完全に自分自身を呪うために稼働している
(何が『他人にチヤホヤされるのが楽しいなら一生やってれば?』だ、アホか俺は! あいつが誰のために慣れないコンタクト入れて誰のために恥ずかしがりながら前髪上げたと思ってんだよ! 全部俺のためだろ! なのに何マウントとって冷たくしてんだよ、このプライドの塊のド不細工野郎ーー!!)
心の中で血を吐きながら大猛省し、俺は意を決して図書室の最奥、閉架書庫へと続く薄暗い通路へと向かった
あいつをこのまま帰らせるわけにはいかない
通路の突き当たり、古い資料が並ぶ棚の前に碧はぽつんと座っていた
その背中はあの裏庭で俺を守ってくれた時とは違ってひどく小さく、今にも消えてしまいそうに見えた
「…蓮野」
なるべく低く、作った王子様の声ではない「素の俺」の声で呼びかける
悠馬の身体がビクリと跳ねた
ゆっくりと振り返ったその顔を見た瞬間、俺の心臓は罪悪感でバラバラに砕け散りそうになった
前髪を上げたその綺麗な切れ長の瞳がうるうると涙で濡れていた
長いまつ毛の先が小刻みに震え、今にも大粒の涙がこぼれ落ちそうだ
「…御子柴、先輩…」
「蓮野、あのさ、さっきのは俺が完全に悪くて__」
謝ろうと一歩踏み出した俺を碧の悲痛な声が遮った
「…僕、御子柴先輩に嫌われるようなことしましたか…?」
「え…?」
「先輩の隣にいても恥ずかしくないようにって姉貴に頭下げて服選んでもらって痛いの我慢してコンタクト入れて… でもそしたら先輩、全然僕のこと見てくれなくなって声もすごく冷たくなって…」
悠馬の目からついに一筋の涙がポロリとこぼれ落ち、端正な頬を伝っていく
その涙は俺の胸の奥にどんな刃物よりも深く突き刺さった
「僕…他のみんなにどう思われたってそんなのどうでもいいんです ただ、先輩に『格好いい』って思ってもらいたくて先輩にだけ、見てほしかったのに… そんなに僕のこの格好、嫌でしたか…っ?」
きゅっと制服の胸元を握りしめ、ボロボロと涙を流す碧
学校中を熱狂させている「新・王子様」が俺の前でだけ、ただの傷ついた一人の男の子として泣いている
(違う…! 違うんだよ碧…!!)
俺はもう王子のプライドなんてどこかに投げ捨てていた
我慢できずに一歩踏み込み、泣いている悠馬の身体を強引に両腕で抱きしめた
「わっ…!? 先輩…っ?」
「嫌なわけねぇだろ大馬鹿野郎!!!」
胸の中で暴れる悠馬を逃がさないように強く、壊れそうなほど強く抱きしめる
「格好良すぎるんだよ! お前がその顔で学校歩くから女子も男子も全員お前のことばっかり見やがって…! 今までお前の良さに気づいてたのは俺だけだったのにみんなにお前を取られそうで俺、頭がおかしくなりそうだったんだよ!」
「え…」
腕の中の悠馬が驚きで固まるのが分かった
俺は悠馬の肩に顔を埋めたまま、耳まで真っ赤にしながら自分の最高に格好悪い本音をぶちまけ続けた
「お前が他の奴と楽しそうに話してるだけで嫉妬で死にそうになるんだよ! だから…お前を俺だけのモブにしておきたかったんだ… 冷たくして本当にごめん…っ」
静かな図書室に俺の必死な、情けない告白が響く
雨の音が二人の沈黙を優しく包み込んでいく
どれくらいそうしていただろうか
ふいに悠馬の長い腕が俺の背中にそっと回された
そして耳元であの心地いい低音ボイスが少し照れたようにだけど本当に嬉しそうに震えた
「…先輩、それって…僕を独り占めしたいってこと、ですか?」
「…あぁ、そうだよ 文句あるか」
俺が不機嫌そうに(照れ隠しで)答えると悠馬は胸元でふにゃりといつものあの無防備で優しい笑顔で笑ったのだった
初めての衝突を経て崩れ去ったすれ違い
しかしお互いの強すぎる想いをぶつけ合った二人はここから文化祭という物語の最終決戦へと向かっていく
周がずっと隠し続けてきた「本当の性格」をついに打ち明ける時が近づいていた



