「昨日のあれは何かのバグだ、完全にノーカウント…ノーカン!」
翌朝
俺は登校するなり、鏡の前で念入りに前髪をセットしながら自分に言い聞かせていた
鏡の中の御子柴周は今日も一ミリの隙もない完璧な美男子だ
あんな前髪もっさりの地味系モブ男子にこの国宝級の俺がときめくはずがない
昨日はただ少女漫画ばりの急な衝突と夕方の西日の逆光、それに低音ボイスのトリプルコンボで脳が一時的にバグを起こしただけだ
「よし、そうと決まればさっさと昨日のリベンジを果たして俺の完璧なヒエラルキーを取り戻すぞ」
フッと爽やかな笑みを鏡に浮かべ、俺は自分の教室を飛び出した
事前に生徒名簿で調べておいた、あいつの生息地__2年B組へと向かう
目的は一つ、あいつに俺の「本物の王子様の輝き」をこれでもかと見せつけ、顔を真っ赤にさせてドギマギさせる
それで昨日の貸しはチャラだ
(待ってろよ、モブめ… 俺の美貌でお前のちっぽけな世界観を粉々に砕いてやるからな)
心の中で邪悪な笑みを浮かべながら2年B組の前に到着した
ガラッと教室のドアを開けると教室内が一瞬で静まり返る
「きゃっ、嘘、御子柴先輩…!?」「なんでB組に…? まじで顔ちっさ、かっこよすぎ……!よしよし、いいリアクションだ これが普通なんだよ)
俺は群がる女子たちに「やあ、おはよう ちょっと人に用事があってね」とマイナスイオンを撒き散らすような極上の笑顔を振りまいた
視線で教室内を這うように探す
…いた、教室の最果て、窓際の一番後ろの席
あいつ__蓮野碧はクラスの喧騒などどこ吹く風で机に突っ伏して寝ていた
相変わらず長い前髪で顔が見えない
完全に教室の背景と同化している
(フン、緊張感のない奴め 今からお前を俺のシンデレラ(仮)にしてやるよ)
優雅な足取りで蓮野の席へと近づく
近くの席の女子たちが「えっ、御子柴先輩、蓮野に用事…?」とざわざわし始めたが無視だ
蓮野の机の前に立ち、コンコン、と軽く指先でノックする
「蓮野くん おはよう、ちょっといいかな?」
声をかけると蓮野の身体がピクリと跳ねた
ゆっくりと身体を起こし、気だるげに頭をかく
「……ん… あ、おはよ、う……」
まだ寝ぼけているのか、声が低くて少しハスキーだ
その声に一瞬だけ心臓が「トクン」と不穏な動きをしたが俺は必死でそれを抑え込んだ
ここまでは想定内だ
さあ、俺の顔を間近で見て腰を抜かすがいい!
そう思って身構えたその時だった
「あ… メガネ、ずれてる……」
蓮野がそう呟き、顔に手を伸ばした
そしてかけていた黒ぶち眼鏡を無造作に外した
ついでに邪魔そうに目を覆っていた長い前髪を指先でふいっと横に掻き分けた
その瞬間、俺の思考は完全に停止した
「…え」
メガネの奥から現れたのは少し眠そうに細められた、驚くほど綺麗な二重の切れ目の瞳
前髪に隠されていた額はすっきりと高く、鼻筋は驚くほどまっすぐに通っている
少し冷たそうで、だけどどこか憂いを帯びた、暴力的なまでに整った「素顔」がそこにあった
(…は?????)
心の中の毒舌マシーンがあまりの衝撃にフリーズする
待て、何だこれ
モブ? 背景? じゃがいも?冗談言え、何だその骨格、パーツの配置、黄金比率かよ
額縁に入れてルーブル美術館に飾るレベルだろ
(いやいやいやおかしい!! お前、昨日とキャラ違くない!? メガネ外したら美形になるタイプの隠れチートキャラだったの!?)
心の中で大絶賛の嵐を巻き起こしながら俺は一歩、後ずさる
あいつはメガネを外したまま、少し目を細めてじっと俺の顔を見つめてきた
昨日と同じ、あの澄んだ瞳がまっすぐに俺を射抜く
「あの… ごめん、僕、裸眼だと何も見えなくて… 君、誰…だっけ…?」
蓮野はそう言って少し首を傾げた
ドッゴォォォォン!!!
俺の胸の中で昨日よりもさらに巨大な、なんなら隕石レベルの弾丸が爆発した
「くっ…!?」
顔が熱い、耳の裏まで真っ赤になるのがわかる
ダメだ、ここにいたら死ぬ
俺のプライドも心臓も全部こいつに粉砕される!
「……なんでもないっ!!!」
俺は昨日と全く同じセリフを叫ぶとまたしても脱兎のごとく、2年B組の教室から逃げ出したのだった
背後から「え、御子柴先輩!?」という女子たちの悲鳴が聞こえたがもう知るか!
◇
「…誰だっけ、だと…!?」
放課後、屋上のフェンスにすがりつきながら俺はハンカチをキリキリと噛み締めていた
昨日のあれだけ劇的な出会いをしておいてお前、誰だっけ!?
しかもメガネ外したらあの顔は反則だろ!! 詐欺だ! 景品表示法違反で訴えてやる!
「認めない… あんな、あんな奴にこの俺が二日連続で狂わされるなんて…!」
しかし脳裏に焼き付いた、メガネを外した蓮野のあの儚げで端正な顔立ちがどうしても消えてくれない
思い出すだけで胸がギュッと締め付けられるように痛む
「…待てよ 裸眼だと何も見えないって言ったな…?」
俺はふとあいつの言葉を思い出した
王子様・御子柴周のプライドはすでにボロボロの崖っぷちに立たされていたのだった
翌朝
俺は登校するなり、鏡の前で念入りに前髪をセットしながら自分に言い聞かせていた
鏡の中の御子柴周は今日も一ミリの隙もない完璧な美男子だ
あんな前髪もっさりの地味系モブ男子にこの国宝級の俺がときめくはずがない
昨日はただ少女漫画ばりの急な衝突と夕方の西日の逆光、それに低音ボイスのトリプルコンボで脳が一時的にバグを起こしただけだ
「よし、そうと決まればさっさと昨日のリベンジを果たして俺の完璧なヒエラルキーを取り戻すぞ」
フッと爽やかな笑みを鏡に浮かべ、俺は自分の教室を飛び出した
事前に生徒名簿で調べておいた、あいつの生息地__2年B組へと向かう
目的は一つ、あいつに俺の「本物の王子様の輝き」をこれでもかと見せつけ、顔を真っ赤にさせてドギマギさせる
それで昨日の貸しはチャラだ
(待ってろよ、モブめ… 俺の美貌でお前のちっぽけな世界観を粉々に砕いてやるからな)
心の中で邪悪な笑みを浮かべながら2年B組の前に到着した
ガラッと教室のドアを開けると教室内が一瞬で静まり返る
「きゃっ、嘘、御子柴先輩…!?」「なんでB組に…? まじで顔ちっさ、かっこよすぎ……!よしよし、いいリアクションだ これが普通なんだよ)
俺は群がる女子たちに「やあ、おはよう ちょっと人に用事があってね」とマイナスイオンを撒き散らすような極上の笑顔を振りまいた
視線で教室内を這うように探す
…いた、教室の最果て、窓際の一番後ろの席
あいつ__蓮野碧はクラスの喧騒などどこ吹く風で机に突っ伏して寝ていた
相変わらず長い前髪で顔が見えない
完全に教室の背景と同化している
(フン、緊張感のない奴め 今からお前を俺のシンデレラ(仮)にしてやるよ)
優雅な足取りで蓮野の席へと近づく
近くの席の女子たちが「えっ、御子柴先輩、蓮野に用事…?」とざわざわし始めたが無視だ
蓮野の机の前に立ち、コンコン、と軽く指先でノックする
「蓮野くん おはよう、ちょっといいかな?」
声をかけると蓮野の身体がピクリと跳ねた
ゆっくりと身体を起こし、気だるげに頭をかく
「……ん… あ、おはよ、う……」
まだ寝ぼけているのか、声が低くて少しハスキーだ
その声に一瞬だけ心臓が「トクン」と不穏な動きをしたが俺は必死でそれを抑え込んだ
ここまでは想定内だ
さあ、俺の顔を間近で見て腰を抜かすがいい!
そう思って身構えたその時だった
「あ… メガネ、ずれてる……」
蓮野がそう呟き、顔に手を伸ばした
そしてかけていた黒ぶち眼鏡を無造作に外した
ついでに邪魔そうに目を覆っていた長い前髪を指先でふいっと横に掻き分けた
その瞬間、俺の思考は完全に停止した
「…え」
メガネの奥から現れたのは少し眠そうに細められた、驚くほど綺麗な二重の切れ目の瞳
前髪に隠されていた額はすっきりと高く、鼻筋は驚くほどまっすぐに通っている
少し冷たそうで、だけどどこか憂いを帯びた、暴力的なまでに整った「素顔」がそこにあった
(…は?????)
心の中の毒舌マシーンがあまりの衝撃にフリーズする
待て、何だこれ
モブ? 背景? じゃがいも?冗談言え、何だその骨格、パーツの配置、黄金比率かよ
額縁に入れてルーブル美術館に飾るレベルだろ
(いやいやいやおかしい!! お前、昨日とキャラ違くない!? メガネ外したら美形になるタイプの隠れチートキャラだったの!?)
心の中で大絶賛の嵐を巻き起こしながら俺は一歩、後ずさる
あいつはメガネを外したまま、少し目を細めてじっと俺の顔を見つめてきた
昨日と同じ、あの澄んだ瞳がまっすぐに俺を射抜く
「あの… ごめん、僕、裸眼だと何も見えなくて… 君、誰…だっけ…?」
蓮野はそう言って少し首を傾げた
ドッゴォォォォン!!!
俺の胸の中で昨日よりもさらに巨大な、なんなら隕石レベルの弾丸が爆発した
「くっ…!?」
顔が熱い、耳の裏まで真っ赤になるのがわかる
ダメだ、ここにいたら死ぬ
俺のプライドも心臓も全部こいつに粉砕される!
「……なんでもないっ!!!」
俺は昨日と全く同じセリフを叫ぶとまたしても脱兎のごとく、2年B組の教室から逃げ出したのだった
背後から「え、御子柴先輩!?」という女子たちの悲鳴が聞こえたがもう知るか!
◇
「…誰だっけ、だと…!?」
放課後、屋上のフェンスにすがりつきながら俺はハンカチをキリキリと噛み締めていた
昨日のあれだけ劇的な出会いをしておいてお前、誰だっけ!?
しかもメガネ外したらあの顔は反則だろ!! 詐欺だ! 景品表示法違反で訴えてやる!
「認めない… あんな、あんな奴にこの俺が二日連続で狂わされるなんて…!」
しかし脳裏に焼き付いた、メガネを外した蓮野のあの儚げで端正な顔立ちがどうしても消えてくれない
思い出すだけで胸がギュッと締め付けられるように痛む
「…待てよ 裸眼だと何も見えないって言ったな…?」
俺はふとあいつの言葉を思い出した
王子様・御子柴周のプライドはすでにボロボロの崖っぷちに立たされていたのだった



