最初に念のためいいます
蓮野くんの下の名前の読みはあおではなくみどりです!!
はすのみどり です!!
「周先輩、今日もかっこいいです!」
「ありがとう みんなも風邪引かないように気をつけてね」
向けられた黄色い声援に俺__御子柴周は完璧な角度の微笑みを返した
悲鳴を上げて悶絶する女子たちを背に校舎の角を曲がった瞬間、俺の顔から一切の感情が消え失せる
(はぁーまじで疲れる どいつもこいつも俺の顔ばっかり見やがって… まぁ?この全人類をひれ伏せさせる国宝級のイケメンフェイスに生まれたんだから見惚れるのも無理はないけどな?それに引き換え、さっき廊下ですれ違った奴の顔じゃがいもかよ、もう少し造形に気を使って生きろよな)
フンと鼻で笑いながら誰もいない放課後の渡り廊下を歩く
この完璧な王子様という仮面を維持するのもすべては俺の優越感を満たすため
不細工どもに崇め奉られる優雅な学園生活、これこそが俺にふさわしい
そう満足げに頷き、校舎の角を勢いよく曲がったその時だった
「っとわ!?」
「うおっ!?」
ドサァッ!! と派手な音が廊下に響く
少女漫画のベタな曲がり角の衝突
俺は持ち前の運動神経でなんとか踏みとどまったがぶつかった相手は見事に尻餅をついていた
(…チッ、誰だよ 貴重な俺の制服にシワがついただろ おいおい、前髪長くて顔が全然見えねぇじゃん、陰気臭いモブが俺の視界に入るなよな、まじでキモいわ)
心の中で限界突破の毒を吐き散らかしながらも俺の身体は「王子様」として自動で動く
すっと滑らかな手つきで倒れた男に手を差し伸べた
顔には100点満点の爽やかな聖母のような微笑みを浮かべて
「ごめんね、怪我はなかった? 大丈夫かい?」
我ながら完璧な演技だ
このモブも俺の美貌と優しさに恐縮して顔を真っ赤にしながら謝罪してくるに違いない
そう思っていた
「…あ」
モブ___蓮野碧がおずおずと俺の手を握る
その手のひらは思ったよりも温かくて少しごつごつしていた
ゆっくりと引っ張り上げられるようにして彼が立ち上がる
長い前髪の隙間から彼が俺の顔をまっすぐに見つめてきた
黒ぶち眼鏡の奥にある、少し三白眼気味のだけど驚くほど澄んだ瞳
彼と視線がカチリと交差する
蓮野は俺の手を握ったまま、少し心配そうに眉を下げて低く心地いい声で呟いた
「…大丈夫、ですか、?」
ドキン
心臓が耳元で鳴ったかと思うほど激しく跳ね上がった
(…は?)
蓮野の顔がなぜかスローモーションのように見える
眼鏡の奥の瞳、俺を心配して揺れている
ただそれだけなのに、ただの地味なモブなのに
(……え? なにこれ 待て、何が起きた?)
頭の芯がカッと熱くなる、顔が信じられないくらい熱い
胸の奥を目に見えない強烈な弾丸でブチ抜かれたような、凄まじい衝撃
「……っ!」
「あの、? 顔、すごく赤いけど…本当に大丈夫ですか?」
蓮野がさらに顔を近づけてのぞき込んでくる
その無自覚な距離の近さに俺の心臓は完全にキャパシティをオーバーした
「な、なんでもないっ!!」
俺は蓮野の手を思い切り振り払うと王子様の微笑みもカバンもすべてを放り出して一目散にその場から逃げ出したのだった
◇
「ありえない、ありえないありえないありえない!!」
自室のベッドに飛び込み、枕に顔をうずめて絶叫する
鏡を見ればそこには茹でダコのように真っ赤になった、およそ王子様とは言えない男の顔があった
「あんな…あんな、前髪もっさりのお世辞にもイケメンとは言えない、ただの背景みたいなモブに…!!」
認めない、絶対に認めない
この俺があんな地味系男子に一目惚れしたなんて国家の損失だ
天変地異だ、あいつはただ少女漫画のシチュエーションをバグらせただけの存在だ
「誰が落ちるかよ…! 俺は学園の王子様だぞ!?」
胸に手を当てるとまだあの蓮野の「大丈夫、ですか、?」という声がリフレループしている
思い出すだけでまた心臓がうるさく暴れ出す
「くそっ…! 次に会ったら絶対に俺の魅力であいつの方を狂わせてやる…!!」
これがプライドまみれの王子様が底なしの「モブ沼」へと引きずり込まれていく、長い戦いの始まりだった
蓮野くんの下の名前の読みはあおではなくみどりです!!
はすのみどり です!!
「周先輩、今日もかっこいいです!」
「ありがとう みんなも風邪引かないように気をつけてね」
向けられた黄色い声援に俺__御子柴周は完璧な角度の微笑みを返した
悲鳴を上げて悶絶する女子たちを背に校舎の角を曲がった瞬間、俺の顔から一切の感情が消え失せる
(はぁーまじで疲れる どいつもこいつも俺の顔ばっかり見やがって… まぁ?この全人類をひれ伏せさせる国宝級のイケメンフェイスに生まれたんだから見惚れるのも無理はないけどな?それに引き換え、さっき廊下ですれ違った奴の顔じゃがいもかよ、もう少し造形に気を使って生きろよな)
フンと鼻で笑いながら誰もいない放課後の渡り廊下を歩く
この完璧な王子様という仮面を維持するのもすべては俺の優越感を満たすため
不細工どもに崇め奉られる優雅な学園生活、これこそが俺にふさわしい
そう満足げに頷き、校舎の角を勢いよく曲がったその時だった
「っとわ!?」
「うおっ!?」
ドサァッ!! と派手な音が廊下に響く
少女漫画のベタな曲がり角の衝突
俺は持ち前の運動神経でなんとか踏みとどまったがぶつかった相手は見事に尻餅をついていた
(…チッ、誰だよ 貴重な俺の制服にシワがついただろ おいおい、前髪長くて顔が全然見えねぇじゃん、陰気臭いモブが俺の視界に入るなよな、まじでキモいわ)
心の中で限界突破の毒を吐き散らかしながらも俺の身体は「王子様」として自動で動く
すっと滑らかな手つきで倒れた男に手を差し伸べた
顔には100点満点の爽やかな聖母のような微笑みを浮かべて
「ごめんね、怪我はなかった? 大丈夫かい?」
我ながら完璧な演技だ
このモブも俺の美貌と優しさに恐縮して顔を真っ赤にしながら謝罪してくるに違いない
そう思っていた
「…あ」
モブ___蓮野碧がおずおずと俺の手を握る
その手のひらは思ったよりも温かくて少しごつごつしていた
ゆっくりと引っ張り上げられるようにして彼が立ち上がる
長い前髪の隙間から彼が俺の顔をまっすぐに見つめてきた
黒ぶち眼鏡の奥にある、少し三白眼気味のだけど驚くほど澄んだ瞳
彼と視線がカチリと交差する
蓮野は俺の手を握ったまま、少し心配そうに眉を下げて低く心地いい声で呟いた
「…大丈夫、ですか、?」
ドキン
心臓が耳元で鳴ったかと思うほど激しく跳ね上がった
(…は?)
蓮野の顔がなぜかスローモーションのように見える
眼鏡の奥の瞳、俺を心配して揺れている
ただそれだけなのに、ただの地味なモブなのに
(……え? なにこれ 待て、何が起きた?)
頭の芯がカッと熱くなる、顔が信じられないくらい熱い
胸の奥を目に見えない強烈な弾丸でブチ抜かれたような、凄まじい衝撃
「……っ!」
「あの、? 顔、すごく赤いけど…本当に大丈夫ですか?」
蓮野がさらに顔を近づけてのぞき込んでくる
その無自覚な距離の近さに俺の心臓は完全にキャパシティをオーバーした
「な、なんでもないっ!!」
俺は蓮野の手を思い切り振り払うと王子様の微笑みもカバンもすべてを放り出して一目散にその場から逃げ出したのだった
◇
「ありえない、ありえないありえないありえない!!」
自室のベッドに飛び込み、枕に顔をうずめて絶叫する
鏡を見ればそこには茹でダコのように真っ赤になった、およそ王子様とは言えない男の顔があった
「あんな…あんな、前髪もっさりのお世辞にもイケメンとは言えない、ただの背景みたいなモブに…!!」
認めない、絶対に認めない
この俺があんな地味系男子に一目惚れしたなんて国家の損失だ
天変地異だ、あいつはただ少女漫画のシチュエーションをバグらせただけの存在だ
「誰が落ちるかよ…! 俺は学園の王子様だぞ!?」
胸に手を当てるとまだあの蓮野の「大丈夫、ですか、?」という声がリフレループしている
思い出すだけでまた心臓がうるさく暴れ出す
「くそっ…! 次に会ったら絶対に俺の魅力であいつの方を狂わせてやる…!!」
これがプライドまみれの王子様が底なしの「モブ沼」へと引きずり込まれていく、長い戦いの始まりだった



