第4話 「見つけた」
○葛葉家・中庭(夜)
3話ラストの続きから。
ガラス戸の向こうにいる上半身裸の律と、彼女の体を見て衝撃を受ける真白。
真白「どういうこと…? その体は…」
律が移動し、その姿が見えなくなる。
真白「っ…!」
真白、律のことを確かめるべく足早に寮へ向かう。
○葛葉家・書生寮・律の部屋の前(夜)
律の部屋の前に立ち、襖を叩く真白。
律「はい」
部屋の中から律の声と足音。
緊張でごくりと喉を鳴らす真白。
真白M(そんなはずない)(きっと見間違いだ)
襖が開き、襦袢姿の律が出てくる。
男らしく凜々しい表情をしている。瞬きをする真白。
律「どうされましたか、旦那様。こんな夜中に」
真白M(…やっぱりいつもの律だ。僕の目、どうかしてたんだな)
真白は緊張を緩め、まんじゅうの箱を開いて差し出す。
真白「鬼堂さんのお土産のおすそわけ。君、おまんじゅうがおいしいって言ってたでしょ?」
律「え…いいんですか?」
律の頬に赤みが差し、柔らかく緩む。
右の横髪を耳にかけながら、まんじゅうの箱をのぞき込む律。
その姿を見て、真白は目を見開く。
真白M(…違う)
律の細い肩、襦袢から覗く僅かに谷間のある胸元に、それぞれフォーカスアップして描写。
真白M(肩はあまりに細い。胸にわずかな谷間が見える)(なにより、男にはない温かな香り)
まんじゅうを手に取り、柔らかな笑顔を見せる律。
律「ありがとうございます、旦那様」
真白M(この子は――女だ)
衝撃のあまり律を凝視することしかできない真白。
○葛葉家・本館・真白の執務室(夜)
執務机につき、真剣な顔で考えている真白。
真白「どうして女が書生に?」「いや、そもそも何故、性別を偽って…」
真白M(ああ、でも…)
真白、手を口に当てて、少し狂気を孕む笑みを浮かべる。
真白M(律はあの子の親族だと思っていたけれど、もしかして…)
扉がノックされ、数十枚の書類を抱えた井伊が入ってくる。
井伊は真白の執務机に近づき、書類を置く。
井伊「金森律の調査結果が出ました」「結論から言うと、彼は『金森律』ではありません」
真白「…へえ、そう」
真白、興味深そうに笑みを深める。
井伊「『金森律』という人間は存在しますが、田舎で農家をしています。受け入れの際に受け取った書類の情報ともほぼ一致する」「恐らく我々の持つ書類は、彼の情報を元に偽装されたものでしょう」
真白「じゃああの『金森律』は誰なの?」
井伊「名前まではまだ。ですが以前、妖怪反対派の空鬨大臣を監視させていた者から、大臣が『金森律』に似た人物と密書のやりとりをしていた報告が上がっています」
井伊、顔を険しくしながら、
井伊「…恐らく彼は、『八咫機関』に所属する諜報員かと」
真白「なるほど。あそこは最近、上が妖怪反対派と仲がいいからね」「妖王最年少の僕から、妖怪の立場を悪化させる情報でも掴もうとしているんだろう」
真白、不敵に微笑む。
真白「面白くなってきたじゃないか」
その後、首をかしげる。
真白「でもどうして男のふりをしているのかな?」
井伊「男装…? 彼が、女だと?」
あり得ないというように、大きく目を見開く井伊。
真白はうっとり狂気を孕んだ笑みを浮かべながら、
真白「そう、あの子は女だよ」「そしてきっと…僕が求めていた最愛だ」
○真白の回想
幼い頃の真白の回想。
険しい顔をした幼い頃の真白に、無数の手が伸びている絵。
真白M(黒王の一族に生まれ、幼い頃から高い妖力を持っていた僕は、常に妖怪反対派の人間たちに狙われていた)
幼い頃の真白が、刺客に狙われたり、誘拐されかけたりするところをダイジェスト的に描く。
真白M(誘拐未遂、暗殺未遂。その他ありとあらゆる犯罪に巻き込まれた)
一人で泣きながら、辛い状況に耐えている真白。
真白M(人間なんて消えてしまえばいい――本気でそう思っていた)(でも…)
○場面転換
鹿鳴館のような洋風の豪華な建物で開催されている会合。
妖怪と人間の政府に連なる者が多く集まっている。
大人たちは高価そうな着物やスーツを着ている。
そんな中、会場の端で一人うずくまっている真白。
真白M(父親に連れてこられた会合で、僕は一人の少女に出会った)
女の子の格好をした幼い律姫(律)が走ってきて、焦った様子で真白の手を引いて立たせる。
幼い律姫「お兄ちゃん。こっち来て」
幼い律姫はなにかを視線で辿るように目を動かす。
(※真白に絡まる縁の糸を見ている)
幼い真白「なんだ、突然触るな!」
幼い律姫「ごめんね。でも急がないと」
幼い真白「おいっ…!」
幼い律姫は真白の手を引き、会場を走る。
真白の父親(40)の元に彼を引き渡す。
真白の父「お嬢さん? 真白を連れてどうしたんだい?」
幼い律姫「あっちの黒い服の人、この子を狙ってた!」
幼い律が黒服の使用人を示す。
使用人「…いいがかりはやめてください、お嬢様。私はそのような…」
幼い律姫「嘘じゃないもん! その人の持ち物、調べてよ」
周りの華族や妖怪たちは困り顔。
だが使用人に対して「見せてもらおうか」と服を探ろうとする。
使用人「チッ…!」
使用人が逃げ、各々が逃げたぞ!と声をあげながら使用人を捕らえに行く。
使用人が捕らえられ、小刀や銃器が服の中から出てくる。
華族たち「本当に刺客が…」「恐ろしい…」
ざわめく周囲にあっけに取られた後、幼い真白は幼い律姫の方を向く。
幼い真白「どうしてわかったんだ?」
幼い律姫「私はね、ちょっとだけ勘がいいんだ」「助けられてよかった」
息を呑む真白。その頬は、わずかに赤くなっている。
真白M(僕の無事を喜んでくれた人間は初めてだった)(でも、その子とはそれきりだった)
○葛葉家・本館・真白の執務室(夜)
井伊の持って来た書類を眺める真白。
真白M(あれからずっと、彼女を探し続けていた。何年も何年も何年も何年も――)
律を探している最中の真白の回想。
自分で書類を調べたり、井伊や部下たちに探してもらったり。
手を尽くして律を探しながら段々成長していく真白の姿をダイジェスト的に描く。
最後はまったく見つからず、頭を抱えて絶望する。
しかしそれでも諦めず、半ば狂気の籠もった目で前を見据える真白。
回想を終え、書類の性別欄に書かれた「男」の文字をフォーカスアップ。
真白M(八咫機関の女は諜報に色を使うという)(違う手段をとる君は、本当に男として生きてきたんだろう)
真白「見つからないのも当然だよ。僕は『女』を探していたんだから」
井伊、疑うような目を書類に向け、
井伊「あの金森律が女…にわかには信じられませんが」
顔をあげて真白を見る。
井伊「けれど、あなたが探していた少女だという保証はないのでは?」
真白「そうかもね」「でも僕を助けた時の仕草が同じだ。あれはおそらく異能。同じ力を持つ証明になる」
真白「それに…なにより僕の直感が、あの子だと言っている」
真白は確信したような強い眼光で井伊を見上げる。
井伊「…あなたのその執着は、時折怖くなりますよ」
呆れてため息をついた後、真剣な表情で真白を見つめる井伊。
井伊「ですが相手は諜報員。放置することはできません。即刻捕らえて尋問を…」
真白「…いや、放置しよう」
井伊「は?」
真白「僕にひとつ、考えがあるんだ」
首をかしげる井伊。
真白は頬杖をつき、不敵に笑う。
真白の回想。
真白の胸を見て照れる律の姿や、髪をとかされて緊張している姿。
2話で桜の着物に手を伸ばしかけ、真白に声をかけられて引っ込めた時の律の姿。
真白M(僕の前であんな顔をしていた君が、今の状況を喜んでいるはずがない)
真白、調査書を手に取り、軽く口付ける。
真白「大丈夫。僕が気付いたからね」
真白M(『律』があの子だという確証はまだない)(それでも、もしあの子なら――今度こそ手に入れて放さない)
狂気を孕んだ笑みを浮かべる真白。
真白「荒療治になるかもしれないけど、絶対に助けてあげるから」
真白M(僕の手で、君の全部を暴いてあげる)
○葛葉家・本館・廊下~玄関ホール
悩ましげな顔をして廊下を歩いて行く律。
律M(――最近、旦那様の様子が変だ)
ここ最近の真白の行動についての回想。
律に着替えを手伝わせるとき、頬に手を添えて微笑む真白。
他の人に肩がぶつかりそうなとき、律の肩を抱いてくる真白。
買い物で真白と律が並んで歩き、その後ろで荷物持ちをしている井伊の様子を、ダイジェスト的に描く。
律M(何かと距離が近いし、買い物の時は荷物持ちをさせられなくなった)
律、廊下から玄関ホールに辿り着く。
律M(それに今日は…)
玄関ホールには、真白と井伊がいる。
真白は律に微笑み、手を差し伸べてくる。
真白「待ってたよ。さあ、行こうか」
律「はい」
差し伸べられた手を取る律。
ドキドキして頬を赤くし、真白から目線をそらしてしまう。
律M(…本当に、変だ)
○洋服店
既製品やオーダーメイドのスーツなどを仕立てる店。
男物のジャケットとシャツ、パンツを試着している律。
洋装でビシッと決めた凜々しく男らしい律の姿に、店員の女性は頬を染めている。
店員「大変お似合いです!」
真白「すごく素敵だ。丈も合っているし、このままもらおうかな」
満足げに微笑む真白。
律は自分の姿を見下ろして戸惑う。
律「あの、やっぱりこんな服いただけません。僕は単なる書生なのに」
真白「駄目だ。言ったでしょ。今度、廉司と二人で妖王の会合に付き添ってもらうって。さすがにちゃんとした格好をしてもらわないと、僕の立場的に困るんだ」
律「ですが、廉司はあなたのお古を着るんでしょう。僕もそれで構いません」
真白「無理だ。君は小柄だから身丈が合わないよ」
律「でも…」
律M(これ、いくらするんだ…?)
着ている服のつくりや肌触りに高級感を覚えて戸惑う律。
そんな律の横で、真白は井伊の方を向く。
真白「井伊、払っておいて」
律「ちょっ…」
真白「君は気にしなくていいの。僕がやりたくてやってるんだから」
焦る律に微笑み、頭をぽんぽんと撫でる真白。
その優しさに頬を染め、俯いてしまう律。
真白は律の様子を見て、笑みを深める。
真白M(やっぱり、見れば見るほど女の子だ)(もっと色んな顔が見たい…)
真白「元の服に着替えておいで。今日はまだ終わらないから」
○帝都・繁華街
デートしている真白と律、それに付きそう井伊をダイジェスト的に描く。
カフェーでバームクーヘンを食べて美味しさで興奮する律、お芝居を見に行って驚く律。
宝石店にて冗談で真白に宝石を買って上げようかと言われて首を激しく横に振る律、など。
○展望塔・展望室(夕)
帝都を一望できる展望塔。浅草十二階のイメージ。
律は沈んでいく夕日と帝都の全景を望みながら、目を輝かせている。
律「綺麗ですね…」
真白は夕日ではなく隣の律を見つめて、
真白「そうだね」
と微笑み、律の頬に指で触れる。
律が振り返り、真白と視線が交わる。
恥ずかしくなった律は、頬を染めて目をそらす。
律「…どうしてこんなに、僕によくしてくださるんですか?」
真白「強いて言うなら、普段頑張ってくれてるご褒美と、会合に付き合ってもらうお礼かな」
真白M(そしてこの先君を傷付けるかもしれない謝罪と、幼い頃から想い続けてきた愛情)
笑みを浮かべて律の頬を愛おしげに撫でる真白。
律の頬がカッと赤くなり、心臓がうるさくなる。
律「え、ええと…もしや旦那様は、僕を少年愛の相手に?」
真白「まさか。僕が好きなのは女性だけだよ」
真白、律の頬に手を滑らせ、顎を持ち上げて自分の方を向かせる。
律M(じゃあ…『男』の僕に対するこれはなんなんだろう…)
戸惑いながらも、真白から目をそらせない律。
○辰巳家・正門前(夜)
前シーンから数日後。荘厳な洋館の門の前。
スーツを着て、髪をビシッとセットした真白と律、廉司が、門の向こうを見つめている。
【5話へ続く】
○葛葉家・中庭(夜)
3話ラストの続きから。
ガラス戸の向こうにいる上半身裸の律と、彼女の体を見て衝撃を受ける真白。
真白「どういうこと…? その体は…」
律が移動し、その姿が見えなくなる。
真白「っ…!」
真白、律のことを確かめるべく足早に寮へ向かう。
○葛葉家・書生寮・律の部屋の前(夜)
律の部屋の前に立ち、襖を叩く真白。
律「はい」
部屋の中から律の声と足音。
緊張でごくりと喉を鳴らす真白。
真白M(そんなはずない)(きっと見間違いだ)
襖が開き、襦袢姿の律が出てくる。
男らしく凜々しい表情をしている。瞬きをする真白。
律「どうされましたか、旦那様。こんな夜中に」
真白M(…やっぱりいつもの律だ。僕の目、どうかしてたんだな)
真白は緊張を緩め、まんじゅうの箱を開いて差し出す。
真白「鬼堂さんのお土産のおすそわけ。君、おまんじゅうがおいしいって言ってたでしょ?」
律「え…いいんですか?」
律の頬に赤みが差し、柔らかく緩む。
右の横髪を耳にかけながら、まんじゅうの箱をのぞき込む律。
その姿を見て、真白は目を見開く。
真白M(…違う)
律の細い肩、襦袢から覗く僅かに谷間のある胸元に、それぞれフォーカスアップして描写。
真白M(肩はあまりに細い。胸にわずかな谷間が見える)(なにより、男にはない温かな香り)
まんじゅうを手に取り、柔らかな笑顔を見せる律。
律「ありがとうございます、旦那様」
真白M(この子は――女だ)
衝撃のあまり律を凝視することしかできない真白。
○葛葉家・本館・真白の執務室(夜)
執務机につき、真剣な顔で考えている真白。
真白「どうして女が書生に?」「いや、そもそも何故、性別を偽って…」
真白M(ああ、でも…)
真白、手を口に当てて、少し狂気を孕む笑みを浮かべる。
真白M(律はあの子の親族だと思っていたけれど、もしかして…)
扉がノックされ、数十枚の書類を抱えた井伊が入ってくる。
井伊は真白の執務机に近づき、書類を置く。
井伊「金森律の調査結果が出ました」「結論から言うと、彼は『金森律』ではありません」
真白「…へえ、そう」
真白、興味深そうに笑みを深める。
井伊「『金森律』という人間は存在しますが、田舎で農家をしています。受け入れの際に受け取った書類の情報ともほぼ一致する」「恐らく我々の持つ書類は、彼の情報を元に偽装されたものでしょう」
真白「じゃああの『金森律』は誰なの?」
井伊「名前まではまだ。ですが以前、妖怪反対派の空鬨大臣を監視させていた者から、大臣が『金森律』に似た人物と密書のやりとりをしていた報告が上がっています」
井伊、顔を険しくしながら、
井伊「…恐らく彼は、『八咫機関』に所属する諜報員かと」
真白「なるほど。あそこは最近、上が妖怪反対派と仲がいいからね」「妖王最年少の僕から、妖怪の立場を悪化させる情報でも掴もうとしているんだろう」
真白、不敵に微笑む。
真白「面白くなってきたじゃないか」
その後、首をかしげる。
真白「でもどうして男のふりをしているのかな?」
井伊「男装…? 彼が、女だと?」
あり得ないというように、大きく目を見開く井伊。
真白はうっとり狂気を孕んだ笑みを浮かべながら、
真白「そう、あの子は女だよ」「そしてきっと…僕が求めていた最愛だ」
○真白の回想
幼い頃の真白の回想。
険しい顔をした幼い頃の真白に、無数の手が伸びている絵。
真白M(黒王の一族に生まれ、幼い頃から高い妖力を持っていた僕は、常に妖怪反対派の人間たちに狙われていた)
幼い頃の真白が、刺客に狙われたり、誘拐されかけたりするところをダイジェスト的に描く。
真白M(誘拐未遂、暗殺未遂。その他ありとあらゆる犯罪に巻き込まれた)
一人で泣きながら、辛い状況に耐えている真白。
真白M(人間なんて消えてしまえばいい――本気でそう思っていた)(でも…)
○場面転換
鹿鳴館のような洋風の豪華な建物で開催されている会合。
妖怪と人間の政府に連なる者が多く集まっている。
大人たちは高価そうな着物やスーツを着ている。
そんな中、会場の端で一人うずくまっている真白。
真白M(父親に連れてこられた会合で、僕は一人の少女に出会った)
女の子の格好をした幼い律姫(律)が走ってきて、焦った様子で真白の手を引いて立たせる。
幼い律姫「お兄ちゃん。こっち来て」
幼い律姫はなにかを視線で辿るように目を動かす。
(※真白に絡まる縁の糸を見ている)
幼い真白「なんだ、突然触るな!」
幼い律姫「ごめんね。でも急がないと」
幼い真白「おいっ…!」
幼い律姫は真白の手を引き、会場を走る。
真白の父親(40)の元に彼を引き渡す。
真白の父「お嬢さん? 真白を連れてどうしたんだい?」
幼い律姫「あっちの黒い服の人、この子を狙ってた!」
幼い律が黒服の使用人を示す。
使用人「…いいがかりはやめてください、お嬢様。私はそのような…」
幼い律姫「嘘じゃないもん! その人の持ち物、調べてよ」
周りの華族や妖怪たちは困り顔。
だが使用人に対して「見せてもらおうか」と服を探ろうとする。
使用人「チッ…!」
使用人が逃げ、各々が逃げたぞ!と声をあげながら使用人を捕らえに行く。
使用人が捕らえられ、小刀や銃器が服の中から出てくる。
華族たち「本当に刺客が…」「恐ろしい…」
ざわめく周囲にあっけに取られた後、幼い真白は幼い律姫の方を向く。
幼い真白「どうしてわかったんだ?」
幼い律姫「私はね、ちょっとだけ勘がいいんだ」「助けられてよかった」
息を呑む真白。その頬は、わずかに赤くなっている。
真白M(僕の無事を喜んでくれた人間は初めてだった)(でも、その子とはそれきりだった)
○葛葉家・本館・真白の執務室(夜)
井伊の持って来た書類を眺める真白。
真白M(あれからずっと、彼女を探し続けていた。何年も何年も何年も何年も――)
律を探している最中の真白の回想。
自分で書類を調べたり、井伊や部下たちに探してもらったり。
手を尽くして律を探しながら段々成長していく真白の姿をダイジェスト的に描く。
最後はまったく見つからず、頭を抱えて絶望する。
しかしそれでも諦めず、半ば狂気の籠もった目で前を見据える真白。
回想を終え、書類の性別欄に書かれた「男」の文字をフォーカスアップ。
真白M(八咫機関の女は諜報に色を使うという)(違う手段をとる君は、本当に男として生きてきたんだろう)
真白「見つからないのも当然だよ。僕は『女』を探していたんだから」
井伊、疑うような目を書類に向け、
井伊「あの金森律が女…にわかには信じられませんが」
顔をあげて真白を見る。
井伊「けれど、あなたが探していた少女だという保証はないのでは?」
真白「そうかもね」「でも僕を助けた時の仕草が同じだ。あれはおそらく異能。同じ力を持つ証明になる」
真白「それに…なにより僕の直感が、あの子だと言っている」
真白は確信したような強い眼光で井伊を見上げる。
井伊「…あなたのその執着は、時折怖くなりますよ」
呆れてため息をついた後、真剣な表情で真白を見つめる井伊。
井伊「ですが相手は諜報員。放置することはできません。即刻捕らえて尋問を…」
真白「…いや、放置しよう」
井伊「は?」
真白「僕にひとつ、考えがあるんだ」
首をかしげる井伊。
真白は頬杖をつき、不敵に笑う。
真白の回想。
真白の胸を見て照れる律の姿や、髪をとかされて緊張している姿。
2話で桜の着物に手を伸ばしかけ、真白に声をかけられて引っ込めた時の律の姿。
真白M(僕の前であんな顔をしていた君が、今の状況を喜んでいるはずがない)
真白、調査書を手に取り、軽く口付ける。
真白「大丈夫。僕が気付いたからね」
真白M(『律』があの子だという確証はまだない)(それでも、もしあの子なら――今度こそ手に入れて放さない)
狂気を孕んだ笑みを浮かべる真白。
真白「荒療治になるかもしれないけど、絶対に助けてあげるから」
真白M(僕の手で、君の全部を暴いてあげる)
○葛葉家・本館・廊下~玄関ホール
悩ましげな顔をして廊下を歩いて行く律。
律M(――最近、旦那様の様子が変だ)
ここ最近の真白の行動についての回想。
律に着替えを手伝わせるとき、頬に手を添えて微笑む真白。
他の人に肩がぶつかりそうなとき、律の肩を抱いてくる真白。
買い物で真白と律が並んで歩き、その後ろで荷物持ちをしている井伊の様子を、ダイジェスト的に描く。
律M(何かと距離が近いし、買い物の時は荷物持ちをさせられなくなった)
律、廊下から玄関ホールに辿り着く。
律M(それに今日は…)
玄関ホールには、真白と井伊がいる。
真白は律に微笑み、手を差し伸べてくる。
真白「待ってたよ。さあ、行こうか」
律「はい」
差し伸べられた手を取る律。
ドキドキして頬を赤くし、真白から目線をそらしてしまう。
律M(…本当に、変だ)
○洋服店
既製品やオーダーメイドのスーツなどを仕立てる店。
男物のジャケットとシャツ、パンツを試着している律。
洋装でビシッと決めた凜々しく男らしい律の姿に、店員の女性は頬を染めている。
店員「大変お似合いです!」
真白「すごく素敵だ。丈も合っているし、このままもらおうかな」
満足げに微笑む真白。
律は自分の姿を見下ろして戸惑う。
律「あの、やっぱりこんな服いただけません。僕は単なる書生なのに」
真白「駄目だ。言ったでしょ。今度、廉司と二人で妖王の会合に付き添ってもらうって。さすがにちゃんとした格好をしてもらわないと、僕の立場的に困るんだ」
律「ですが、廉司はあなたのお古を着るんでしょう。僕もそれで構いません」
真白「無理だ。君は小柄だから身丈が合わないよ」
律「でも…」
律M(これ、いくらするんだ…?)
着ている服のつくりや肌触りに高級感を覚えて戸惑う律。
そんな律の横で、真白は井伊の方を向く。
真白「井伊、払っておいて」
律「ちょっ…」
真白「君は気にしなくていいの。僕がやりたくてやってるんだから」
焦る律に微笑み、頭をぽんぽんと撫でる真白。
その優しさに頬を染め、俯いてしまう律。
真白は律の様子を見て、笑みを深める。
真白M(やっぱり、見れば見るほど女の子だ)(もっと色んな顔が見たい…)
真白「元の服に着替えておいで。今日はまだ終わらないから」
○帝都・繁華街
デートしている真白と律、それに付きそう井伊をダイジェスト的に描く。
カフェーでバームクーヘンを食べて美味しさで興奮する律、お芝居を見に行って驚く律。
宝石店にて冗談で真白に宝石を買って上げようかと言われて首を激しく横に振る律、など。
○展望塔・展望室(夕)
帝都を一望できる展望塔。浅草十二階のイメージ。
律は沈んでいく夕日と帝都の全景を望みながら、目を輝かせている。
律「綺麗ですね…」
真白は夕日ではなく隣の律を見つめて、
真白「そうだね」
と微笑み、律の頬に指で触れる。
律が振り返り、真白と視線が交わる。
恥ずかしくなった律は、頬を染めて目をそらす。
律「…どうしてこんなに、僕によくしてくださるんですか?」
真白「強いて言うなら、普段頑張ってくれてるご褒美と、会合に付き合ってもらうお礼かな」
真白M(そしてこの先君を傷付けるかもしれない謝罪と、幼い頃から想い続けてきた愛情)
笑みを浮かべて律の頬を愛おしげに撫でる真白。
律の頬がカッと赤くなり、心臓がうるさくなる。
律「え、ええと…もしや旦那様は、僕を少年愛の相手に?」
真白「まさか。僕が好きなのは女性だけだよ」
真白、律の頬に手を滑らせ、顎を持ち上げて自分の方を向かせる。
律M(じゃあ…『男』の僕に対するこれはなんなんだろう…)
戸惑いながらも、真白から目をそらせない律。
○辰巳家・正門前(夜)
前シーンから数日後。荘厳な洋館の門の前。
スーツを着て、髪をビシッとセットした真白と律、廉司が、門の向こうを見つめている。
【5話へ続く】



