幻影島事件

ーー今月のミステリー特集ーー
手記・幻影島(げんえいじま)事件。誰が最後に死亡したのかを当てて下さい。
昭和十九年、徴兵を逃れる為に財閥が我が子達に作った隠れ宿・隠れ島の真相の全てです。

 ーー本文ーー
「ひとまず女を10人、各部屋に一名(ひとり)ずつ、鎖でつなぎ、配置している模様です」

執事の山木(やまき)はそう尾長(おなが)に報告していた。

「性交している背中を、刀でぶった切りか!」

古川財閥の御曹司が父親から授かった売女を自らのスタッフ三人とで独占していた。

一人(ひとり)一名(ひとり)ずつの約束じゃぁねェーのかよ」

尾長達四人はそう叫んで古川達を殺害。女と食糧、更に拳銃までも彼達が奪い取っていた。

*****

食糧庫の屋上から双眼鏡を覗くと、一台のサイド・カー向かって来るのが見えた。

菱山(ひしやま)兄弟だ」

松原(まつばら)はそう発し自身が以前、本土にて柔道で圧倒的な負け方をした過去を思い返している。特に兄の方は無敵で、この隠れ島の王になるに相応(ふさわ)しい趣があった。
ーー兄は重度の結核だ・・尾長は皆に取り込みやすい情報を流した。それでも刀と刀では弟にさえも勝てない印象(イメージ)が頭を占領してゆく。

「食糧を管轄したく、参上した」

弟は建屋の門を押し開け、冷静にそう叫ぶ。ーーと、その間も無く、尾長達、四人は草木の茂みより隠れ出て銃で弟を蜂の巣にした。

「むっ!?」

弟が倒れるや否や、今度はサイド・カーに座る兄も同じ様相の最後に仕留(しと)めてゆく。
ーー勝った・・様ですねーー松原建設・次期社長でもある彼は()()()そう尋ねた。尾長達の決起に対峙した志は呆気無く没してしまう。

*****

「何をするんですか!?」

天田(あまだ)は尾長を引き止めようとした。

「こんな物は、要らん」

島中の神社・仏閣を燃やし始めた。

「これからは俺が神だ。ここは日本であって日本ではない。だから、俺こそが()()なのだ」

古川の先代が前住民より買い取った時より残っていた寺社を全て廃と化した。
天田と山木は尾長物産のブレーンと執事だ。従うより他、無かった。

「撃て」

寝静まる尾長の木造の建屋に火の点いた矢を放った。
しばらくして、目を()ました尾長は窓を開け、攻撃する方向に立ち、こう叫んだ。

「ハハ、これがオマエ達の答えか」

さらしの巻かれた腹部に小刀を当て、一気に自害し、果てていった。
ーーこれで()いのだ・・天田達三人は脱力感と共に火の勢いを見るのが精一杯であった。

*****

「この子に王位を継承したい・・」

そう呟きながら何かの感染症になって息途絶(いきとだ)えかける山本は皆に強く願い出た。近くには売女のクロエが臨月の身で看護をしている。
ーー誰の子か判らんのに・・天田は山木の枕元で、こう胸中、叫んでしまう。
ーー判ったーー松原はそう宣言し、(いず)れ、その子を(あや)める事も決意し偽りの()みを見せた。


ーー筆者・死亡の為、ここで未完ーー


もう、御判りですね。尚、筆者は菱山(ひしやま)(たけし)。昭和三十年に殺害され未解決事件に。更に、(とう)手記は小説か実録かも不明とされています。
せっかく隠れ家として成立したかった島も女や食糧、武器の独占で戦の場になってしまいました。いかに教育や志が正しくあるべきか、問われる作品かもしれません。

あて先
東京都⚪︎×区△□町一丁目一四六番地の一
(株) 元来社 編集部 幻影島事件係まで。

(了)