その忌み子は最上級の鬼に溺愛される


 日が沈み、夜が来た。わたしの知っている鬼はこれからが活動時間のはずだ。
「花咲、おいで」
 旦那様の笑みはどこか妖艶だった。
(なのに、どうして、旦那様はわたしを(しとね)に誘っているの!?)
「いっ、いえ……そんな、会ったばかりですし」
「夫婦になりたいといったのは花咲だろう」
 旦那様はそういって困った風な顔をしてみせた。
「そ、それは……そうですが……」
 わたしは、言い返す言葉がなく、うつむいた。
「じゃあ、おいで」
 旦那様の笑みは妖艶さを増していく。
「あっ」
 旦那様はわたしの手を引き胸元に抱き寄せ、(ふすま)を掛けた。
(そ、そんな……わたし、これからどうなってしまうの?)
「人間は、小さくあたたかいのだな」
 旦那様の声は穏やかだった。
「恐れ入ります……」
 わたしはなんていえばいいのか分からなかった。わたしはふと思い出した。
(その容姿では、嫁にも出せそうにないわね。家に役立ってもらうには死ぬまで使用人にでもなってもらうしかないわね)
 継母はわたしに確かにそういった。しかし、今のわたしは、使用人でもないし、お嫁になっている。お父様とお母様も喜んでくれているはずだ。
(拒否したら食べられてしまうわ)
 わたしは本能的に察していた。
(これから起こる一切を受け入れよう)
「じゃあ、花咲、おやすみ」
 旦那様の吐息が優しくかかる。
「え?」
 旦那様はそのまま寝息を立てて寝始めた。
(は……)
(恥ずかしい!)
 結局わたしは、旦那様の美しい寝顔を見ながら、寝付けたのは夜が明ける頃だった。