「できました、お召し上がりくださいませ」
わたしは配膳が終わると食べるように促した。
「花嫁様を食べるよりも、うまそうだな」
(本気なのかどうなのか分からないけれど半分は本気ね……)
鬼はひょうひょうとしていて冗談なのか分からないことを言う。わたしは、ひやひやしながら、鬼が料理に手を付けるのを見ていた。
「……うまい!」
鬼は、とてもうれしそうな顔をした。
(面と向かっておいしいと言われたのは生まれて初めてかもしれない)
料理を身につける前にお父様とお母様は亡くなってしまったから。
「花嫁様も……」
鬼は一緒に食べることを促そうとする。
「カザキです」
わたしは、自分がにんまりとしていることに気づきながら話した。
「ん?」
鬼は食べる手をとめてわたしの言葉を聞いた。
「わたしは花が咲くと書いてカザキと呼ぶのです。どうぞ、そうお呼びくださいませ、旦那様」
わたしは、にっこりとして答えた。
「そうか、これからは食事の時間が待ち遠しくなりそうだ。花咲」
鬼の笑顔が見えた気がした。
「はいっ」
やはり、笛の音が気味悪くなかったのは勘違いではなかったのだ。
「毒でも入っていたら、俺に毒は効かないから花咲も食おうと思っていたけどな」
鬼はそう言って笑った。
(……気を抜き過ぎてはだめなのかもしれない)
わたしは、鬼を……旦那様をどう思えばいいのか分からなかった。
