不思議な夢を見ていた。
(これは夢……?それとも現実?)
小さな自分がいる。そして、両隣には男と女が手をつないで立っていた。
(お父様、お母様……)
「花咲はかわいいなあ。ずっとこのまま小さくいてくれていいのに」
「旦那様、わたくしは大きくなった花咲とお酒なんて飲めたらいいのになんておもっていますわ」
お父様とお母様は楽しそうに笑いあっている。
「ええ~どうしよう、大きくなろうかな、小さいままでいようかな」
そんな二人を見て小さなわたしも笑っている。
(本当にあの日のままでいられたらいいのに)
わたしは、もう戻れない日々を見つめていた。
「花咲、お前のそのあざは花が咲いたみたいでとてもきれいだ。だから、花咲という名前を付けたんだ」
お父様は、自分が世間でなんていわれているかには触れずにほめてくれている。
(そう、だから、忌み子なんて言われてもわたしには関係ない。お父様とお母様が愛してくれたのだもの)
もやがかかったように場面が切り替わった。そこには病床に臥しているお母様がいた。
「お母様、もう遊んだりできないの?」
わたしはお母様の手をとって大粒の涙をこぼしている。お母様は何とか口角をあげて笑顔に見えるようにしていた。そして、息を切れ切れと話した。
「あなたとお酒を飲んだり、あなたの嫁入りを見れないのは切ないわ。けれど、わたしがいなくなっても、あなたが笑ったりしてくれる。なんて素敵なことなのかしら……」
お母様は、よく見なければ分からないくらいの涙を青白い肌にはわせた。また、もやがかかったように場面が切り替わる。
「まあ、なんて醜い」
お父様も亡くなって、連れ子の兄が当主になった後、継母はわたしにそういった。お父様が生きている間は、継母はにこにこしていたが、本性を現したのだ。
「その容姿では、嫁にも出せそうにないわね。家に役立ってもらうには死ぬまで使用人にでもなってもらうしかないわね」
そこからわたしは、令嬢とは言えない生活をおくることになった。つらいことがあれば、いつもお父様とお母様のことを思い出していた。
そしてまたもや場面が切り替わる。長い夢だ。家の外を掃除しているわたしがいる。
「最上級の鬼が山に住んだらしい……!」
「町が壊滅させられてしまったらどうしよう」
「きっと領主さまが何とかしてくださる」
わたしは、領民の話を聞きながら箒をはいている。すると、笛の音が風に乗って聞こえてきた。
「ひい、鬼が笛を吹いている……」
「なんておぞましいんだ」
わたしは、不思議とそう思わなかった。
(忌み嫌われている者同士、ということかしら)
「おい、起きろ」
(いったいどこから聞こえているの?)
どこか実体を伴った声がする。
「おい」
