恋愛リアリティーショーに参加したら男に告白された。


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 ネット限定で配信された青嵐島の恋愛リアリティーショーは、一部の学生たちの間で大きな反響を呼んだ。SNSでは#を付けて素直な反応が続々と投稿されている。

 『え、なんか……ヤバくなかった?今回の恋愛リアリティーショー』
 『同性カップルとかありなんだ!?』
 『ひかるちゃん可愛すぎwww女子のうちより女子力高いんだけどwww』
 『大我、どヤンキーかと思ったら意外に良い奴でウケる』
 『りょうはやは推せる』
 『結局キスしたのしてないのどっちなの~~~~!?』
 『いやー、うちら多様性の時代に生まれて良かったよほんと』

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 そして、まだ暑さは残るが8月も終わりに近づいた休日。
 快晴に恵まれ、青々と伸びる空に柔らかな昼光が射しこむ青嵐島の船着き場。
 千早は白のトップスに藍色の半袖シャツを羽織った私服姿でそこに立っていた。海風が吹き、爽やかな磯の香りが鼻腔をくすぐる。

 顔を上げると一隻のフェリーが船着き場に寄せられ、ゆっくりと静止する所だった。
 ポケットにねじ込んだスマホがバイブレーションを鳴らす。取り出して通話ボタンをタップすると、電話越しでも耳に馴染む明瞭な声が千早の鼓膜を揺らした。

 『着いたよ』
 「ああ、入り口で待ってる」
 『今階段降りてるからもう見えると思うけど。……あ』

 『千早!』

 スマホのスピーカーとリアルの爽やかな声が重なる。
 千早は顔を上げ、片手を上げた。

 「涼星!」

 階段を降りて来た涼星は、白い日の光に照らされて微笑んだ。
 ラフなトップスに黒の引き締まったスラックス姿の涼星が、千早に応えるように片手を振りながら足早に駆けて来た。

 「悪いな。わざわざこっちに来てもらって」
 「あははっ、そんなの当たり前じゃん!俺もこの島好きだし」

 涼星がスマホの電源を落とし、黒くなった画面を柔らかな眼差しで見つめた。
 一度は離れた全員だが、別れる前にグループLIMEを作れたので時折メッセージを送り合っている。

 「落ち着いたらまた全員で集まるだろうからね」
 「そうだな、俺も皆とまた会いたい。……次は俺が行くよ、本島」
 「多分東京で集まるだろうから、その時は案内してあげる」

 2人はどちらからともなく指先を絡ませて手を繋ぐ。
 今日は恋愛リアリティーショーの撮影以来、初めての涼星とのデートだ。
 夏休み中に滑り込みで予定が合った2人は、これから千早のマンションに一泊する事になっている。並んで船着き場を後にして歩いていると、見知った顔が向かい側から歩いて来た。
 恋愛リアリティーショーで図書室で会った女子生徒とその友人。どちらも千早のクラスメイトだ。

 「あ、夏目」
 「ああ、どうも」
 「あ~!ネットとSNS見たよ!噂の彼氏さんだー!」

 クラスメイトが指さしてにやにやと笑みを濃くする。
 にっこりと微笑む涼星の隣で、千早はややジト目になりながらぼそりと呟く。

 「……冷やかしならやめて欲しいんだけど」
 「うそうそ!あたしら応援してるって~!」
 「ありがとう」
 「おおっ、素直じゃん」
 「俺はいつもお礼くらい素直に言うだろ。……じゃあまた、学校で」
 「う、うん……」

 軽く会釈して千早達が通り過ぎる。
 クラスメイト達は振り返って千早達を目で追った。恋愛リアリティーショーの最中に図書室で千早と言葉を交わした女生徒が、戸惑いがちに眉根を寄せて、人差し指の第一関節を口元に押し当てた。

 「……やっぱりさ、雰囲気変わったよね。夏目」
 「あれ、あんたもそう思う?。いやー、恋って人をあんなに変えちゃうんだね~」

 腕を組んでうんうんと頷く女子生徒を横目で見ながら首をかしげる。

 「……いや、恋っていうか。なんか…… ()()()()()()()()()()()()()()()()()。もっと暗かったっていうか。なんかちょっと……別人みたい」

 その言葉に、隣にいた女生徒があっけらかんと笑ってその肩をパシパシと叩いた。

 「なにそれ変なの~!夏目は夏目じゃん!あんたも恋すれば別人になるって~」
 「そ、そうかな~……?」

 女子二人の会話に、千早はそっと表情を消して肩越しに視線を送った。
 青嵐島の恋愛リアリティーショーはSNSでも拡散されて、それなりに話題になった。
 千早達も完成した映像を見させて貰ったが、不思議な事にカメラにはドッペルゲンガー達は一切写っていなかった。
 最初の教室以外、ドッペルゲンガーの存在は触れられていない。
 ドッペルゲンガーの噂に困っていた青嵐島サイドの申し出でカットされたのかもしれない。元々その噂を払拭したくて、協賛に名乗り出たのだから。
 恋愛リアリティーショーで出会った皆のドッペルゲンガーは全て消滅するか、その存在自体が無かったことになった。そう、”千早以外”は。

 「涼星」
 「ん?」

 千早が涼星に向き直り、白い太陽光に照らされて鮮やかな笑みを浮かべた。

 「この島で”俺”を見つけてくれて、ありがとな」
 「ふふっ。どういたしまして……俺の千早」

 涼星がふっと妖艶に微笑んで、繋がれた手に力を込める。

 『俺の代わりに青春を謳歌してくれよ……”千早”』

 頭の奥で”千早”の声がする。その声に応えるように、ふっと顔を伏せて頷いた。
 (ああ。約束するよ千早)

 その顔に、雲の隙間を突いて鋭い太陽光が降り注ぐ。
 長い前髪がその顔に濃く、暗い影を落とす。影の落ちた瞳の隙間から、夏目 千早は甘やかに目を細めた。

 (だって俺はこの島に巣食う怪異(ドッペルゲンガー)で、この世でただ1人の”夏目 千早”だから)

 END