「か、カットカット!」
青嵐高校の教室に、恋愛リアリティーショーのディレクターの焦った掛け声がかかった。
ぱっと涼星と繋いでいた手が離される。
「困るよ君達~!いくらなんでも初日でカップル成立はマズいって!……何?実はもう付き合ってたとか?」
「……違います」
目を逸らしてぼそりと答えると、ディレクターは頭を掻きながら気まずそうに告げた。
「じゃあ最終日まで待ってくれない?他の子と交流すれば気持ちも変わるかもしれないからさ!」
「変わんないと思うけど」
向かい合う涼星が軽やかに告げる。
日の光に照らされて亜麻色の髪が艶めく。千早を見て嬉しそうに目を細める涼星と目が合うと、千早の鼓動はとくんと小さく高鳴る。
「……分かりました」
ややぶっきらぼうに了承し、ディレクターの指示に応える。
今はそれで良い。自分の使命は、今度こそ皆をドッペルゲンガーの脅威から守る事だ。
メンバーは全員驚いた顔で2人を見ていたが、1番後ろで薄いカーディガンを羽織ったひかるがそっとハンカチを取り出して首元に滴る汗を拭っていた。
(……あ)
それを見た千早は軽く目を見開いた。
『僕のオリジナル、無理して炎天下の中浜辺で立ってから熱中症で死んでもーたし』
境内でひかるのドッペルゲンガーに言われた言葉を思い出す。
そういえばひかるは1人長袖のカーディガンを羽織り続け、校舎に居る時もずっとハンカチで汗を拭っていた。
(軌道修正するなら、ここからだな)
ディレクターが頭をがしがしと掻きながら口を開く。
「……じゃあ、再開するよ。教室で自己紹介のシーンを取るからそこの椅子に――」
「すみません。自己紹介は、図書室でもいいですか?この教室だと暑いと思いますし、この学校は図書室が一番エアコンの利きが良いんです」
「え?あー……。じゃあ、そうするか」
「ありがとうございます」
カメラ係やスタッフ達も暑そうにしているのに気付いたディレクターが了承した。
その言葉を聞いた千早は、全員に目線を送って教室の扉に進んだ。
「行くぞ涼星、皆。校舎の案内もまとめて俺がするから付いて来てくれ」
「おお~、流石地元の人だね」
「涼しい所に行けるなら俺は文句ないぜ!」
侑里と大我が笑顔で付いて来てくれる。
初めて見た時と変わらない笑顔を浮かべてくれる2人に安堵しながら、千早は教室を後にした。
(これで、ひかるの熱中症の発症リスクは下がるはずだ)
「こ、校舎の案内まで言ったっけ……?」
不思議そうなディレクターの言葉にギクリとしたが、千早はそれには聴こえないふりをした。
◇
全員で図書室に着く。
扉を開けると、古書独特の少し酸味のある香りが鼻をくすぐる。
木造の本棚に所狭しと古書が並ぶ図書室。そのカウンターで、千早のクラスメイトの女生徒が返却BOXに本を戻していた。
「あれ?夏目……?」
女生徒は千早達の方を見ると、少し焦った様に肩を跳ねさせた。1周目にはこの女生徒が図書室を出た時に廊下で出会った。
今回は千早達が図書室に来るのが早まったから、まだ室内に居たのだ。
「ああ。終業式以来だな」
「ごめん撮影だった?あたし本返しに来ただけだから、もう帰るよ」
「今はカメラ回ってないから大丈夫だ。気を付けて帰れよ」
「……なんか、明るくなったよねあんた」
「ん?」
「前はほんとに根暗一直線って感じだったのにさ~」
「……いいだろ、別に」
「……うん。まあそっちの方が親しみやすいし。じゃあまた、新学期でね」
「おう」
女生徒がひらひらと手を振って廊下の奥に消えて言った。
涼星が背を屈めて千早の顔を覗き込んでくる。
「ここ、懐かしいね?」
「……涼星」
「覚えてる?ここで俺がお前と初めて会った事」
「あ、いや……ッ!?」
涼星の言葉にザザッと頭の奥から閉じ込めていた記憶の片鱗が蘇る。
――図書室に置かれた木製の机に涼星が突っ伏している。
長いまつ毛に白い頬。記憶の中の千早が涼星に向かって手を伸ばす。
「……う、ぐ……っ」
それ以上思い出そうとすると、頭が"思い出すな"と警鐘を鳴らすような感覚に襲われる。
込み上げる吐き気を歯を食いしばる事で堪えると、隣に居た涼星が腰をかがめて、千早の瞳を覗き込んでくる。
「千早?」
「……悪い。何でもない」
「……そう?」
「涼星、悪い。その時の事は……あまり、覚えていないんだ」
「……ああ、そう。まあしょうがな――」
「だから」
涼星のシャツの袖をグッと掴む。顔を上げて、涼星の瞳をしっかりと見つめる。
「後で教えてくれ。2人っきりになれるように、お前の事誘うから」
「……っ」
涼星が軽く目を見開く。そのままふっと微笑むと、くしゃりと千早の細い髪を撫でながら、耳元で囁いた。
「じゃあ、待ってるよ」
耳にかかる吐息の熱さにピクリと身体が震える。恥ずかしいと思うのに、涼星相手ならそれすらも心地良いと思えてしまう。
「ほら!何ぼーっとしてんの?自己紹介するよ!」
美帆のよく通る声が図書室に響く。千早はハッとして、涼星と共に皆が座る奥の長机まで足早に進んだ。
「もう!有り得ない!涼星くん狙ってたのに!」
「まあまあ、まだ始まったばっかじゃん」
ピンクがかった金髪のサイドテールを振りながら美帆が肩を跳ね上げる。それを隣に座った侑里が宥める。この光景も、1周目に見た光景だ。
千早と涼星が席に着くと、侑里がすっと手を挙げた。
「じゃあアタシから自己紹介するね。アタシ、四之宮 侑里。恋愛リアリティーショーの参加は3回目だよ。高校最後の夏に恋愛しに来ました〜。よろしくね!」
「ウチ、2年の市来 美帆。好みのタイプは背が高くてウチの事守ってくれる王子様みたいな人!……まあ、テキトーによろって事で」
「えっと……京都から来ました。藤村……ひかる、って言います」
「……え!?それだけ!?」
ひかるの控えめな自己紹介に美帆が身を乗り出す。
「あ、はは……。実は、クラスメイトがふざけて応募したのが当たってもーて。気が付いた時にはもうキャンセル不可やったんよ。だから、ぼ……うち、恋愛する気あんま無いんよ」
「ええ!?もったいねーよひかるちゃん!俺、ひかるの見た目めっちゃタイプなんだよ!第一印象だと1番好きだぜ!?」
「あはは、おおきに。……えーっと、君は?」
「あ、わりぃ自己紹介!俺は和久井 大我!高校2年生だぜ!彼女作る気満々で来たから、みんなよろしくな!」
大我は自分の自己紹介を済ませると、隣に座る千早の背を軽くはたこうと手を上げる。千早はその手を避けた。
大我の手がスカッと宙を切ってパイプ椅子の縁に当たった。
「お、お前反射神経良いじゃねーか」
「……まあな」
2回目だからな、という言葉は喉の奥に押し込んだ。
千早は居住まいを正す。正直2周目でも自己紹介の理想形なんて分からないが、ここは自分の意見を言うには絶好の機会だ。
「夏目 千早だ。この青嵐高校の2年。この島は広いし、夜になると道が分からなくなったりするからなるべく1人にならないで欲しい。地元の人間だから、何か困った事があれば俺に聞いてくれ。……皆で良い夏を過ごせれば良いと思ってる。よろしく」
ドッペルゲンガー達に襲われるのは各々が1人になった時だ。こう言っておけば皆少しは気に留めてくれるだろう。
「よろしくね~」
「よろしゅうな、夏目くん」
侑里とひかるが笑顔で千早に応えてくれる。それに胸を撫で下ろした。
千早の逆隣に座っていた涼星が身を乗り出す。
「最後は俺だね。白乃 涼星。高校3年生。この島には前も来た事あったけど、自然豊かで良い所だよね。この3日間で恋人を作れたら良いと思ってるよ。……ね、千早」
機嫌良さそうに千早を見下ろす涼星に、先ほどの気恥ずかしさと気まずさが入り混じって目を逸らす。侑里が空気を変えるようにぱんっと両手を叩いた。
「じゃあ3日間のスケジュール確認しよっか!皆手元にあるよね?」
「ああ」
スクールチェアに置かれていた恋愛リアリティーショーの日程が掲載された紙を手に取る。
1周目と同じ文章を目で追いながら、千早は記憶を辿る。
思い起こすのは、境内でドッペルゲンガー達が言っていた言葉だ。
『僕のオリジナル、無理して炎天下の中浜辺で立ってから熱中症で死んでもーたし』
『アタシも浜辺だよ。小さい時に刺されちゃったからさ、エイだけはダメなんだよね〜』
『ウチはね~、オリジナルが死んじゃったから乗っ取ったの。しょーがないしょーがない!忠告はしたもん』
『俺もさー、人間になってみたかったんだよな!あいつ俺から逃げたし、ちょうどいいっしょ!』
あれが皆の死因と入れ替わった原因だとしたら、入れ替わった場所はおのずと絞れる。
ひかるのドッペルゲンガーはバナナボート。その後の砂浜で侑里。
美帆はおそらく、海の家のバーベキューで1人退席した時だろう。
(大我だけは……分からないが)
ちらりと大我を見る。
ひかるのドッペルゲンガーと一緒になった肝試しのような気もするが、直接的な原因は不明だ。
紙を眺めるひかるに視線を送る。教室ほど汗は掻いていないが、少しだるそうにも見える。
(……まずは、ひかるからだ)
ひかるがドッペルゲンガーと入れ替わった事が全ての始まりだ。ここを食い止めよう。
再び紙に視線を落とした。
丁度、恋愛リアリティーショーのロゴが目に入る。
『3日であなたにガチ恋します!〜自然豊かな青嵐島で真夏の恋をしませんか?〜』
期限は3日だ。無事に3日間過ごせれば、皆はこのドッペルゲンガーのいる島から自然に離れられる。
千早が顔を上げた瞬間、ガタっと音がした。向かい側に座っていた美帆が青ざめた顔で椅子から立ち上がっていた。
やり直しの2周目が、今始まる――。
To Be Continued……
青嵐高校の教室に、恋愛リアリティーショーのディレクターの焦った掛け声がかかった。
ぱっと涼星と繋いでいた手が離される。
「困るよ君達~!いくらなんでも初日でカップル成立はマズいって!……何?実はもう付き合ってたとか?」
「……違います」
目を逸らしてぼそりと答えると、ディレクターは頭を掻きながら気まずそうに告げた。
「じゃあ最終日まで待ってくれない?他の子と交流すれば気持ちも変わるかもしれないからさ!」
「変わんないと思うけど」
向かい合う涼星が軽やかに告げる。
日の光に照らされて亜麻色の髪が艶めく。千早を見て嬉しそうに目を細める涼星と目が合うと、千早の鼓動はとくんと小さく高鳴る。
「……分かりました」
ややぶっきらぼうに了承し、ディレクターの指示に応える。
今はそれで良い。自分の使命は、今度こそ皆をドッペルゲンガーの脅威から守る事だ。
メンバーは全員驚いた顔で2人を見ていたが、1番後ろで薄いカーディガンを羽織ったひかるがそっとハンカチを取り出して首元に滴る汗を拭っていた。
(……あ)
それを見た千早は軽く目を見開いた。
『僕のオリジナル、無理して炎天下の中浜辺で立ってから熱中症で死んでもーたし』
境内でひかるのドッペルゲンガーに言われた言葉を思い出す。
そういえばひかるは1人長袖のカーディガンを羽織り続け、校舎に居る時もずっとハンカチで汗を拭っていた。
(軌道修正するなら、ここからだな)
ディレクターが頭をがしがしと掻きながら口を開く。
「……じゃあ、再開するよ。教室で自己紹介のシーンを取るからそこの椅子に――」
「すみません。自己紹介は、図書室でもいいですか?この教室だと暑いと思いますし、この学校は図書室が一番エアコンの利きが良いんです」
「え?あー……。じゃあ、そうするか」
「ありがとうございます」
カメラ係やスタッフ達も暑そうにしているのに気付いたディレクターが了承した。
その言葉を聞いた千早は、全員に目線を送って教室の扉に進んだ。
「行くぞ涼星、皆。校舎の案内もまとめて俺がするから付いて来てくれ」
「おお~、流石地元の人だね」
「涼しい所に行けるなら俺は文句ないぜ!」
侑里と大我が笑顔で付いて来てくれる。
初めて見た時と変わらない笑顔を浮かべてくれる2人に安堵しながら、千早は教室を後にした。
(これで、ひかるの熱中症の発症リスクは下がるはずだ)
「こ、校舎の案内まで言ったっけ……?」
不思議そうなディレクターの言葉にギクリとしたが、千早はそれには聴こえないふりをした。
◇
全員で図書室に着く。
扉を開けると、古書独特の少し酸味のある香りが鼻をくすぐる。
木造の本棚に所狭しと古書が並ぶ図書室。そのカウンターで、千早のクラスメイトの女生徒が返却BOXに本を戻していた。
「あれ?夏目……?」
女生徒は千早達の方を見ると、少し焦った様に肩を跳ねさせた。1周目にはこの女生徒が図書室を出た時に廊下で出会った。
今回は千早達が図書室に来るのが早まったから、まだ室内に居たのだ。
「ああ。終業式以来だな」
「ごめん撮影だった?あたし本返しに来ただけだから、もう帰るよ」
「今はカメラ回ってないから大丈夫だ。気を付けて帰れよ」
「……なんか、明るくなったよねあんた」
「ん?」
「前はほんとに根暗一直線って感じだったのにさ~」
「……いいだろ、別に」
「……うん。まあそっちの方が親しみやすいし。じゃあまた、新学期でね」
「おう」
女生徒がひらひらと手を振って廊下の奥に消えて言った。
涼星が背を屈めて千早の顔を覗き込んでくる。
「ここ、懐かしいね?」
「……涼星」
「覚えてる?ここで俺がお前と初めて会った事」
「あ、いや……ッ!?」
涼星の言葉にザザッと頭の奥から閉じ込めていた記憶の片鱗が蘇る。
――図書室に置かれた木製の机に涼星が突っ伏している。
長いまつ毛に白い頬。記憶の中の千早が涼星に向かって手を伸ばす。
「……う、ぐ……っ」
それ以上思い出そうとすると、頭が"思い出すな"と警鐘を鳴らすような感覚に襲われる。
込み上げる吐き気を歯を食いしばる事で堪えると、隣に居た涼星が腰をかがめて、千早の瞳を覗き込んでくる。
「千早?」
「……悪い。何でもない」
「……そう?」
「涼星、悪い。その時の事は……あまり、覚えていないんだ」
「……ああ、そう。まあしょうがな――」
「だから」
涼星のシャツの袖をグッと掴む。顔を上げて、涼星の瞳をしっかりと見つめる。
「後で教えてくれ。2人っきりになれるように、お前の事誘うから」
「……っ」
涼星が軽く目を見開く。そのままふっと微笑むと、くしゃりと千早の細い髪を撫でながら、耳元で囁いた。
「じゃあ、待ってるよ」
耳にかかる吐息の熱さにピクリと身体が震える。恥ずかしいと思うのに、涼星相手ならそれすらも心地良いと思えてしまう。
「ほら!何ぼーっとしてんの?自己紹介するよ!」
美帆のよく通る声が図書室に響く。千早はハッとして、涼星と共に皆が座る奥の長机まで足早に進んだ。
「もう!有り得ない!涼星くん狙ってたのに!」
「まあまあ、まだ始まったばっかじゃん」
ピンクがかった金髪のサイドテールを振りながら美帆が肩を跳ね上げる。それを隣に座った侑里が宥める。この光景も、1周目に見た光景だ。
千早と涼星が席に着くと、侑里がすっと手を挙げた。
「じゃあアタシから自己紹介するね。アタシ、四之宮 侑里。恋愛リアリティーショーの参加は3回目だよ。高校最後の夏に恋愛しに来ました〜。よろしくね!」
「ウチ、2年の市来 美帆。好みのタイプは背が高くてウチの事守ってくれる王子様みたいな人!……まあ、テキトーによろって事で」
「えっと……京都から来ました。藤村……ひかる、って言います」
「……え!?それだけ!?」
ひかるの控えめな自己紹介に美帆が身を乗り出す。
「あ、はは……。実は、クラスメイトがふざけて応募したのが当たってもーて。気が付いた時にはもうキャンセル不可やったんよ。だから、ぼ……うち、恋愛する気あんま無いんよ」
「ええ!?もったいねーよひかるちゃん!俺、ひかるの見た目めっちゃタイプなんだよ!第一印象だと1番好きだぜ!?」
「あはは、おおきに。……えーっと、君は?」
「あ、わりぃ自己紹介!俺は和久井 大我!高校2年生だぜ!彼女作る気満々で来たから、みんなよろしくな!」
大我は自分の自己紹介を済ませると、隣に座る千早の背を軽くはたこうと手を上げる。千早はその手を避けた。
大我の手がスカッと宙を切ってパイプ椅子の縁に当たった。
「お、お前反射神経良いじゃねーか」
「……まあな」
2回目だからな、という言葉は喉の奥に押し込んだ。
千早は居住まいを正す。正直2周目でも自己紹介の理想形なんて分からないが、ここは自分の意見を言うには絶好の機会だ。
「夏目 千早だ。この青嵐高校の2年。この島は広いし、夜になると道が分からなくなったりするからなるべく1人にならないで欲しい。地元の人間だから、何か困った事があれば俺に聞いてくれ。……皆で良い夏を過ごせれば良いと思ってる。よろしく」
ドッペルゲンガー達に襲われるのは各々が1人になった時だ。こう言っておけば皆少しは気に留めてくれるだろう。
「よろしくね~」
「よろしゅうな、夏目くん」
侑里とひかるが笑顔で千早に応えてくれる。それに胸を撫で下ろした。
千早の逆隣に座っていた涼星が身を乗り出す。
「最後は俺だね。白乃 涼星。高校3年生。この島には前も来た事あったけど、自然豊かで良い所だよね。この3日間で恋人を作れたら良いと思ってるよ。……ね、千早」
機嫌良さそうに千早を見下ろす涼星に、先ほどの気恥ずかしさと気まずさが入り混じって目を逸らす。侑里が空気を変えるようにぱんっと両手を叩いた。
「じゃあ3日間のスケジュール確認しよっか!皆手元にあるよね?」
「ああ」
スクールチェアに置かれていた恋愛リアリティーショーの日程が掲載された紙を手に取る。
1周目と同じ文章を目で追いながら、千早は記憶を辿る。
思い起こすのは、境内でドッペルゲンガー達が言っていた言葉だ。
『僕のオリジナル、無理して炎天下の中浜辺で立ってから熱中症で死んでもーたし』
『アタシも浜辺だよ。小さい時に刺されちゃったからさ、エイだけはダメなんだよね〜』
『ウチはね~、オリジナルが死んじゃったから乗っ取ったの。しょーがないしょーがない!忠告はしたもん』
『俺もさー、人間になってみたかったんだよな!あいつ俺から逃げたし、ちょうどいいっしょ!』
あれが皆の死因と入れ替わった原因だとしたら、入れ替わった場所はおのずと絞れる。
ひかるのドッペルゲンガーはバナナボート。その後の砂浜で侑里。
美帆はおそらく、海の家のバーベキューで1人退席した時だろう。
(大我だけは……分からないが)
ちらりと大我を見る。
ひかるのドッペルゲンガーと一緒になった肝試しのような気もするが、直接的な原因は不明だ。
紙を眺めるひかるに視線を送る。教室ほど汗は掻いていないが、少しだるそうにも見える。
(……まずは、ひかるからだ)
ひかるがドッペルゲンガーと入れ替わった事が全ての始まりだ。ここを食い止めよう。
再び紙に視線を落とした。
丁度、恋愛リアリティーショーのロゴが目に入る。
『3日であなたにガチ恋します!〜自然豊かな青嵐島で真夏の恋をしませんか?〜』
期限は3日だ。無事に3日間過ごせれば、皆はこのドッペルゲンガーのいる島から自然に離れられる。
千早が顔を上げた瞬間、ガタっと音がした。向かい側に座っていた美帆が青ざめた顔で椅子から立ち上がっていた。
やり直しの2周目が、今始まる――。
To Be Continued……



