その後も今まで通り一緒に大学へ行き、予定がなければ帰ってからライブ映像を一緒に見る。
一週間ほど経っても、吏希は返事の催促をしなかった。多分、僕が言わない限り吏希も言わない。このまま有耶無耶になってしまっても、変わらず接してくれると思う。
でも自分で考えると言ったのだから、答えを出さなければ。
吏希は隣に住んでいて、小さな頃から仲良しの友達。それは今でも変わらない。友達以上の好意を寄せられても、嫌だとは思わなかった。それならば、僕も吏希のことが好きなのだろうか?
最近は一緒にいて胸がドッと鳴って顔が熱くなる。それは好かれていると分かってからだから、僕が吏希を好きだからそんな反応をするってことではないのかもしれない。
深く省みても答えなんて全く出ない。吏希の言う通り、付き合ってみてダメなら友達に戻ろうか。そう考えるのを放棄しかけて頭を振った。きちんと考えてそう思うならいいけど、考えるのをやめて付き合うなんて失礼なことできない。
ふと思い至る。僕は吏希と付き合ったら、キスやそれ以上のことができるのだろうか。……全く想像ができなかった。
大学へ向かいながら吏希と並んで歩く。心を落ち着かせるために何度か深呼吸した。
「あのさ、今日って時間ある?」
「今日は四限までだから、それが終われば暇」
「じゃあ夕飯食べたらお家に行ってもいい? 話がある」
真剣に見つめれば、吏希は小さく頷いた。
「いいよ、待ってる」
夕飯を食べ終わってもすぐには行くことができなかった。心臓は常に早鐘を打つし、緊張で身体が強張る。
吏希から『いつくる? 俺は夕飯食べ終わった』とメッセージが来たことで、意を決して隣を訪ねた。
部屋に上がって向き合って座る。正座をして、自分の足の上に置いた震える拳を眺めた。
「話って何?」
僕が黙っているから、多分吏希は分かっていてきっかけをくれた。優しすぎて胸が痛く締め付けられる。顔を上げて正面から見据えた。
「僕は吏希と付き合えない」
「理由は?」
「え? 理由?」
「ああ。振られるんだから、何がダメなのか理由を知りたい」
理由は恥ずかしくて言いにくい。ジッと見つめられると言うしかないのか、と熱くなる顔を隠すようにまた俯いてしまう。
「えっちなことする想像できなくて。付き合ったらそういうことするんでしょ?」
部屋が静寂に包まれる。吏希は何も言わない。恐る恐る視線を上げると、大きく見開かれた目が僕を凝視していた。
「……断る理由がそれ? 俺のことが嫌だとか、他に好きな人がいるとかじゃなくて?」
「うん、吏希は小さな頃から仲良しだし。好きって言われても嫌とは思わなかった。他に好きな人もいない」
レイズを知ってからは、彼らに夢中で好きな人とか考えもしなかった。
「よかった」
吏希が心底ホッとしたように朗らかに笑う。良かった? 断ったのに?
目を瞬かせていると吏希が目を優しく細めて頷いた。
「軽く考えてって言ったのに、そこまで真剣に考えてくれてさ。一生プラトニックな関係のカップルだって世の中にはいっぱいいるんだし、付き合うってそれだけじゃないじゃん。俺は奏斗と二人で遊びに行くのが『デート』になるだけで嬉しいんだ。だからさ、俺のことが嫌じゃないなら、とりあえず付き合ってよ」
手の甲に吏希の手のひらが重なる。大きくて熱い手。吏希も緊張していたのかな。少し汗ばんでいる。
今まで二人で遊びには何度も行っている。それがデートになるだけで嬉しいと言われ、心の奥が震えた。
「ダメか?」
僕が黙っていると、吏希は首を傾けて眉尻を下げる。
「……ダメじゃない」
「本当に?」
「うん、吏希と付き合ってみる」
表情をパッと嬉しそうに変え、吏希に思いっきり抱きしめられた。
「すげー嬉しい。やっぱり無理だと思ったらすぐに言えよ。奏斗に我慢はされたくない」
「うん、分かった」
どうしたらいいのか分からず、腕の中で体を硬くする。しばらくすると体が離れていき、穏やかな顔をした吏希と見つめ合う。
「よかった。朝の時点で振られるだろうなって思ってて、どうやって言いくるめようかって考えてたから」
「……言いくるめる?」
「言葉は悪いかもしれないけど、絶対に付き合いたかったってこと」
そんなことを心底嬉しそうに言われたら口篭ってしまう。顔に熱が灯るのがわかった。
「俺と付き合っても、好きなこと我慢しなくていいからな。俺は奏斗が楽しそうにしてるのが好きなんだから」
「うん」
「じゃあ今日からよろしく」
「よろしく」
二人して頭を下げて、おかしくて笑い合った。
「じゃあ帰るね」
立ち上がって家を出ると、吏希もついてきた。
「どこかに行くの?」
「いや、送ってく」
「家、隣なのに?」
「付き合ったら甘やかすって言っただろ?」
甘すぎて顔の熱が引かない。
「いや、違うな。俺さ、奏斗と付き合えるって浮かれてるんだよ。俺が少しでも一緒にいたいだけ」
もっと甘すぎて顔から火が出そう。
「じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
手を振るけど、吏希はその場で立ち止まって家の方に行かない。
「どうしたの? 帰らないの?」
「奏斗が家に入ったら帰るよ」
「そうなの? また明日ね」
手を振って家に入ると、玄関で顔を覆ってしゃがみ込んだ。
吏希がすごく甘くてドキドキしっぱなし。吏希と付き合うって本当にできるの? 付き合う前とは別の理由で悩んでしまいそうだ。
一週間ほど経っても、吏希は返事の催促をしなかった。多分、僕が言わない限り吏希も言わない。このまま有耶無耶になってしまっても、変わらず接してくれると思う。
でも自分で考えると言ったのだから、答えを出さなければ。
吏希は隣に住んでいて、小さな頃から仲良しの友達。それは今でも変わらない。友達以上の好意を寄せられても、嫌だとは思わなかった。それならば、僕も吏希のことが好きなのだろうか?
最近は一緒にいて胸がドッと鳴って顔が熱くなる。それは好かれていると分かってからだから、僕が吏希を好きだからそんな反応をするってことではないのかもしれない。
深く省みても答えなんて全く出ない。吏希の言う通り、付き合ってみてダメなら友達に戻ろうか。そう考えるのを放棄しかけて頭を振った。きちんと考えてそう思うならいいけど、考えるのをやめて付き合うなんて失礼なことできない。
ふと思い至る。僕は吏希と付き合ったら、キスやそれ以上のことができるのだろうか。……全く想像ができなかった。
大学へ向かいながら吏希と並んで歩く。心を落ち着かせるために何度か深呼吸した。
「あのさ、今日って時間ある?」
「今日は四限までだから、それが終われば暇」
「じゃあ夕飯食べたらお家に行ってもいい? 話がある」
真剣に見つめれば、吏希は小さく頷いた。
「いいよ、待ってる」
夕飯を食べ終わってもすぐには行くことができなかった。心臓は常に早鐘を打つし、緊張で身体が強張る。
吏希から『いつくる? 俺は夕飯食べ終わった』とメッセージが来たことで、意を決して隣を訪ねた。
部屋に上がって向き合って座る。正座をして、自分の足の上に置いた震える拳を眺めた。
「話って何?」
僕が黙っているから、多分吏希は分かっていてきっかけをくれた。優しすぎて胸が痛く締め付けられる。顔を上げて正面から見据えた。
「僕は吏希と付き合えない」
「理由は?」
「え? 理由?」
「ああ。振られるんだから、何がダメなのか理由を知りたい」
理由は恥ずかしくて言いにくい。ジッと見つめられると言うしかないのか、と熱くなる顔を隠すようにまた俯いてしまう。
「えっちなことする想像できなくて。付き合ったらそういうことするんでしょ?」
部屋が静寂に包まれる。吏希は何も言わない。恐る恐る視線を上げると、大きく見開かれた目が僕を凝視していた。
「……断る理由がそれ? 俺のことが嫌だとか、他に好きな人がいるとかじゃなくて?」
「うん、吏希は小さな頃から仲良しだし。好きって言われても嫌とは思わなかった。他に好きな人もいない」
レイズを知ってからは、彼らに夢中で好きな人とか考えもしなかった。
「よかった」
吏希が心底ホッとしたように朗らかに笑う。良かった? 断ったのに?
目を瞬かせていると吏希が目を優しく細めて頷いた。
「軽く考えてって言ったのに、そこまで真剣に考えてくれてさ。一生プラトニックな関係のカップルだって世の中にはいっぱいいるんだし、付き合うってそれだけじゃないじゃん。俺は奏斗と二人で遊びに行くのが『デート』になるだけで嬉しいんだ。だからさ、俺のことが嫌じゃないなら、とりあえず付き合ってよ」
手の甲に吏希の手のひらが重なる。大きくて熱い手。吏希も緊張していたのかな。少し汗ばんでいる。
今まで二人で遊びには何度も行っている。それがデートになるだけで嬉しいと言われ、心の奥が震えた。
「ダメか?」
僕が黙っていると、吏希は首を傾けて眉尻を下げる。
「……ダメじゃない」
「本当に?」
「うん、吏希と付き合ってみる」
表情をパッと嬉しそうに変え、吏希に思いっきり抱きしめられた。
「すげー嬉しい。やっぱり無理だと思ったらすぐに言えよ。奏斗に我慢はされたくない」
「うん、分かった」
どうしたらいいのか分からず、腕の中で体を硬くする。しばらくすると体が離れていき、穏やかな顔をした吏希と見つめ合う。
「よかった。朝の時点で振られるだろうなって思ってて、どうやって言いくるめようかって考えてたから」
「……言いくるめる?」
「言葉は悪いかもしれないけど、絶対に付き合いたかったってこと」
そんなことを心底嬉しそうに言われたら口篭ってしまう。顔に熱が灯るのがわかった。
「俺と付き合っても、好きなこと我慢しなくていいからな。俺は奏斗が楽しそうにしてるのが好きなんだから」
「うん」
「じゃあ今日からよろしく」
「よろしく」
二人して頭を下げて、おかしくて笑い合った。
「じゃあ帰るね」
立ち上がって家を出ると、吏希もついてきた。
「どこかに行くの?」
「いや、送ってく」
「家、隣なのに?」
「付き合ったら甘やかすって言っただろ?」
甘すぎて顔の熱が引かない。
「いや、違うな。俺さ、奏斗と付き合えるって浮かれてるんだよ。俺が少しでも一緒にいたいだけ」
もっと甘すぎて顔から火が出そう。
「じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
手を振るけど、吏希はその場で立ち止まって家の方に行かない。
「どうしたの? 帰らないの?」
「奏斗が家に入ったら帰るよ」
「そうなの? また明日ね」
手を振って家に入ると、玄関で顔を覆ってしゃがみ込んだ。
吏希がすごく甘くてドキドキしっぱなし。吏希と付き合うって本当にできるの? 付き合う前とは別の理由で悩んでしまいそうだ。



