「#9」
父…誠太郎の耳にもよからぬ噂は人知れず届く。
「青山…噂話なのだが誠一郎がお気に入りの風俗嬢を目当てに風俗へ通いつめているというのは間違いではないのか…」
超巨大商業施設と超巨大娯楽施設と超高級リゾート施設を併設した来るべきIR新法を見据えた新規事業の視察の帰り道…埼玉県の美女木方面からの高速道路への入口辺りで会長専属の運転手の青山に話しかけた誠太郎…
「左様のようでございます…もともとは誠次様が贔屓にされている店だとか何だとか、その真偽のほどは確かではございませんが…」
「なるほどな…誠次が誠一郎によからぬ遊びを教えたのか…」
誠太郎は合点がいったとばかりに頷く。
「うぬ…なんという皮肉か…つい先日、挙式の日取りも決まったばかりで、あのように恵比寿顔な稲村会長の耳にしれたら大変な騒ぎだな…真面目ゆえに純粋すぎたのだな誠一郎は…それにしても雪乃さんにはなんと詫びれば良いか…」
誠一郎の許嫁の稲村雪乃は巨大商業施設オゾンモールなどを運営している日本の最大の小売業界大手オゾングループの稲村会長の孫娘であった。
茶道と華道に秀でた才能を発揮し、乗馬はオリンピック選手並みの実力、さらには弓道も国体レベルというお嬢様だ。
正に名家の生まれを感じさせる清楚で文武両道な大和撫子といった箱入り娘である。
大学1年生…齢18という若さだった。
「むぅ…オゾングループとの提携事業の話もかなりの進捗率だそうだからな…」
誠太郎は顔をしかめて悩みだす…
「冗談半分でも若気の至りなどと笑い話に出来んものかな…ハハハ…万が一にも破談になどさせるものか…明日にでも誠一郎に詳しい話を聞かねばな…」
それは誠太郎の予想を遥かに超えた事態、もはや日本経済を揺るがす一大事件となり得るのであった。
…………………………………
朝霧の中で夜空が紅く染まり出す頃…
誠一郎と希美は手を繋いで愛し合っていた…
開かれた心の扉の奥底にある輝きを…形を…色を…香りを…奏でる音を…感触を…味わいを…それらひとつひとつを確認するかのように身体を重ね合わせていた。
それは光のように透明で波のように押し寄せる…
「私は…こんなに幸せで良いのだろうか…こんなにも…」
誠一郎は…突然、押さえられない感情がない交ぜとなって…
熱いものは涙となってボロボロと零れ落ちた…
ひたすらに… ひたむきに…
それは希美の双丘をしとどに濡らす…
「どうしたのですか…」
希美は誠一郎を不思議そうに見上げた。
「こわいんだ…こんなに心が満たされて充たされていくのを感じている…」
誠一郎の顔が涙でくしゃくしゃになる。
「愛することが、こんなに辛いだなんて…」
鼻をつたい落ちる涙は溶けた氷柱のように見えた。
「知らなければ幸せだったのかと問われたら違うと答えるだろう…」
穏やかな優しい瞳で彼は見つめていた。
「失いたくはない…もうあなた無しで生きていけない身体になりました…」
繋がれたままの心と身体が脈を打つ。
「永遠に続く愛なんて無いと思っていました…
そんなものはおとぎ話だと高を括って………」
誠一郎は潤んだ瞳で希美を見つめていた。
「今なら信じられますか…」
その言葉と同時に希美はキスをした。
ああ、そうだ、求めていたのだろう…
魂の対となる存在を…
とけていく
ほどけていく
ひとつになる
新しい扉の向こう側に…
まぶしいくらいの幸せがあった。
「愛してます」
希美の吐息が、甘く耳の奥を痺れさせていた。
永遠であって欲しい、ふたりでいこう…
何度も何度でも…
あの楽園を訪れよう。
「愛しているよ」
愛の雷が、ふたりの肉体を揺さぶる。
心が重なっていく、心臓のリズムが新しい音楽を奏でていく。
幸せという光が、影も、また大きくしていくことに気付いてはいなかった。
父…誠太郎の耳にもよからぬ噂は人知れず届く。
「青山…噂話なのだが誠一郎がお気に入りの風俗嬢を目当てに風俗へ通いつめているというのは間違いではないのか…」
超巨大商業施設と超巨大娯楽施設と超高級リゾート施設を併設した来るべきIR新法を見据えた新規事業の視察の帰り道…埼玉県の美女木方面からの高速道路への入口辺りで会長専属の運転手の青山に話しかけた誠太郎…
「左様のようでございます…もともとは誠次様が贔屓にされている店だとか何だとか、その真偽のほどは確かではございませんが…」
「なるほどな…誠次が誠一郎によからぬ遊びを教えたのか…」
誠太郎は合点がいったとばかりに頷く。
「うぬ…なんという皮肉か…つい先日、挙式の日取りも決まったばかりで、あのように恵比寿顔な稲村会長の耳にしれたら大変な騒ぎだな…真面目ゆえに純粋すぎたのだな誠一郎は…それにしても雪乃さんにはなんと詫びれば良いか…」
誠一郎の許嫁の稲村雪乃は巨大商業施設オゾンモールなどを運営している日本の最大の小売業界大手オゾングループの稲村会長の孫娘であった。
茶道と華道に秀でた才能を発揮し、乗馬はオリンピック選手並みの実力、さらには弓道も国体レベルというお嬢様だ。
正に名家の生まれを感じさせる清楚で文武両道な大和撫子といった箱入り娘である。
大学1年生…齢18という若さだった。
「むぅ…オゾングループとの提携事業の話もかなりの進捗率だそうだからな…」
誠太郎は顔をしかめて悩みだす…
「冗談半分でも若気の至りなどと笑い話に出来んものかな…ハハハ…万が一にも破談になどさせるものか…明日にでも誠一郎に詳しい話を聞かねばな…」
それは誠太郎の予想を遥かに超えた事態、もはや日本経済を揺るがす一大事件となり得るのであった。
…………………………………
朝霧の中で夜空が紅く染まり出す頃…
誠一郎と希美は手を繋いで愛し合っていた…
開かれた心の扉の奥底にある輝きを…形を…色を…香りを…奏でる音を…感触を…味わいを…それらひとつひとつを確認するかのように身体を重ね合わせていた。
それは光のように透明で波のように押し寄せる…
「私は…こんなに幸せで良いのだろうか…こんなにも…」
誠一郎は…突然、押さえられない感情がない交ぜとなって…
熱いものは涙となってボロボロと零れ落ちた…
ひたすらに… ひたむきに…
それは希美の双丘をしとどに濡らす…
「どうしたのですか…」
希美は誠一郎を不思議そうに見上げた。
「こわいんだ…こんなに心が満たされて充たされていくのを感じている…」
誠一郎の顔が涙でくしゃくしゃになる。
「愛することが、こんなに辛いだなんて…」
鼻をつたい落ちる涙は溶けた氷柱のように見えた。
「知らなければ幸せだったのかと問われたら違うと答えるだろう…」
穏やかな優しい瞳で彼は見つめていた。
「失いたくはない…もうあなた無しで生きていけない身体になりました…」
繋がれたままの心と身体が脈を打つ。
「永遠に続く愛なんて無いと思っていました…
そんなものはおとぎ話だと高を括って………」
誠一郎は潤んだ瞳で希美を見つめていた。
「今なら信じられますか…」
その言葉と同時に希美はキスをした。
ああ、そうだ、求めていたのだろう…
魂の対となる存在を…
とけていく
ほどけていく
ひとつになる
新しい扉の向こう側に…
まぶしいくらいの幸せがあった。
「愛してます」
希美の吐息が、甘く耳の奥を痺れさせていた。
永遠であって欲しい、ふたりでいこう…
何度も何度でも…
あの楽園を訪れよう。
「愛しているよ」
愛の雷が、ふたりの肉体を揺さぶる。
心が重なっていく、心臓のリズムが新しい音楽を奏でていく。
幸せという光が、影も、また大きくしていくことに気付いてはいなかった。


